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生活をサポートする 介助犬たち〜ドイツ〜

2021.01.04 15:00

「ドイツニュースダイジェスト」に興味深い内容が掲載されていたので記事の一部を紹介します。

詳細は http://www.newsdigest.de/newsde/features/9033-arbeitshund/


人間と対等な存在

街中や公園はもちろん、電車やバス、デパートやレストランなど、あらゆる場所で犬を見掛けない日はないと言っても過言ではないほどドッグ・フレンドリーな国、ドイツ。犬は人間に癒しを与えてくれるペットではなく、家族や友人といった大切なパートナーとして、私たちと対等な立場にいると考えられている。そのため、飼い主が暮らす市の一員として犬税(Hundesteuer)と呼ばれる税金を納める義務があり、公共交通機関では料金を支払えば乗車することが認められている。このように社会の一員として認識されているので、もちろん周りの目も厳しく、きちんとしたしつけをするためにどの町にもある犬の学校(Hundeschule)に通うのが一般的だ。その結果、公共の場で騒いだり吠えたりする行儀の悪い犬をこの国で見ることはほとんどない。


犬との共存が広く根付く理由は?

マーケティング・リサーチ会社GfKの調査(2016年度)によると、ドイツで犬を飼っている割合は、21%。最も数値が高いアルゼンチンでは66%、英国では27%、日本では17%となっており、ドイツの割合が特に高いわけではないことが分かる。では、なぜここまで犬が人間社会に溶け込んで暮らすスタイルが定着しているのか。そこには2つの理由がある。

まず1つ目は、古くから動物愛護に関する考えが発達していたことだ。法律の観点から見ると、1871年、ドイツ帝国時代には既に動物虐待罪を規定した刑法典が存在していた。民間の動きとしては、ドイツ国内で最も有名な動物愛護施設「ティアハイム・ベルリン」の前身となる施設が1901年から動物シェルターとしての機能を果たしていたという記録が残っている。このように100年以上もの長い歴史を刻むことで、動物と共存するという精神が幅広く根付いているのだろう。

そして2つ目に、ドイツには数多くの優れた国産犬種がいることが挙げられるだろう。警察犬や盲導犬はドイツが発祥と言われており、さまざまなドイツ原産の犬種が人々の暮らしをサポートしている。そのため、ドイツ人にとって犬は切っても切り離せない存在なのだ。

ニーズに合わせて援助する介助犬

警察犬や盲導犬と同様に人々の生活を円滑にするためにサポートしてくれるのがこれから紹介する介助犬だ。今回、話をうかがったruhrpotthunde Hundeschuleの介助犬トレーナー、ビルギット・シュターデさんによると、介助犬とは言葉の通り、サポートを必要とする人を援助する犬のこと。そのため、人を手助けするという点で、盲導犬・聴導犬も介助犬の一種だという。目的が明確な盲導犬や聴導犬に比べ、介助犬は幅広いニーズに合わせて訓練されるのが特徴だ。

介助犬の中で一般的なのが日常生活の手助けをする犬、心の病に苦しむ人に寄り添う犬、糖尿病患者の低血糖による異変を周囲に知らせる糖尿病アラート犬の3種類。それぞれ担う役割が違ってくる。

生活サポート介助犬(LPF-Assistenzhunde)

身体的なハンディキャップを持つ人が実生活に支障をきたさないようサポートする。具体的には、飼い主が落としたものを拾ったり、ドアを開けたり、照明を点灯させるなどの一般的な生活の援助作業。

PTSD介助犬(PTBS-Assistenzhunde)

心的外傷ストレス障害(PTSD)に苦しむ人などの心に寄り添う。具体的には飼い主が夜にうなされている際に慰めたり照明を付ける、危ない状況で安全な場所に移動させ、家まで誘導するなど。

糖尿病アラート犬(Diabetikerwarnhund)

鋭い嗅覚を生かし、糖尿病患者の低血糖や高血圧による容態の急変を家族や周囲に知らせる。子供の患者に対して特に需要が高く、純粋な援助作業に加えて犬が病気の子供のために果たす社会的要素は非常に重要だとされている。


介助犬に適した性格や犬種

介助犬のトレーニング方法には、トレーナーが個々にレッスンをして育てるお任せタイプと、子犬の段階でトレーナーの力を借りて飼い主も一緒になって訓練する参加型タイプの2通りある。基本的なトレーニング内容としては、服従と必要な援助作業が訓練される。

また、人をサポートするという面において大切になってくるのが適正だ。性格の面においては、飼い主に従順であり、おとなしいこと。そして体力があり、他人やほかの動物に対しても高レベルな適合性を持っていることなどが挙げられる。原則としてはどんな犬種も介助犬になるための訓練を受けることは可能だが、大きく安心感のある体格で愛らしい外見のラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーが特に適しているとされている。そのほか、賢い大型のプードルや、クライナー・ミュンスターレンダーなどのドイツの犬種も含まれている。しかしシュターデさんによると、時には介助犬を必要とする人が「一目ぼれ」することもあると言うので、どの犬種が人生のパートナーになるかは、最終的には相性によって決まる。


犬大国、ドイツの今後の課題

実はドイツでは介助犬に関して国で一律の規定が定まっておらず、犬税も自治体によって免除されるケースもある。また、映画館、劇場、病院など通常、犬が中に入ることができない場所でのアクセス権についても法律で決まっていないため、それぞれで対応が違うことが今後の課題でもあると、シュターデさんは語る。

では、もし私たちが街中や駅などで介助犬を見掛けた際にはどのようなサポートができるのだろうか。「介助犬を利用している人の中には、見た目だけではハンディキャップを背負っていると分からない方もいます。もし、街中で介助犬のマークやゼッケンを付けた犬に出会った際には、注意を引いたり、撫でたりするようなことはしないください。また、そのような人を見掛けたら注意を促してください。介助犬たちは飼い主のために重要な仕事をしているのですから」。

人と犬が幸せに暮らせる国だからこそ、今後は福祉の視点からも互いがより快適に共存できることを目指す必要があるのではないだろうか。