これまでと、これから。卒業を前に思うこと。2年生インタビュー#2(大内一生、岡本祐一郎、甲斐巴菜子、森寧々)
皆様、明けましておめでとうございます!
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今回は卒業発表会を間近に控えた研修科2年生(58期)のインタビュー第2弾です。
(前列左から岡本祐一郎、甲斐巴菜子 後列左から森寧々、大内一生)
それではどうぞ!!!
①『萩家の三姉妹』について
ー卒業発表会の稽古最中ですが、作品や自分の役のこと、座組み全体のことなど今感じてることを教えてください。
大内
このインタビュー面白いぞ、今回の作品の主要人物が集まってる!
甲斐
あれやね!えーと、うん!
難しい、でもそれ以上に楽しいです!
(松本)祐子さんから演出していただく中で、「なるほど!」とか「ちょっとここ自分の詰めが甘かったな。」とか色んなことを感じながら自分の無力さを痛感し、そんな自分を自分で励ましながら毎日やっております!(笑)
ーやっぱり楽しいですか?
森
楽しいね。(甲斐に)はなちゃんはどういう所が楽しいですか?
甲斐
私が演じる萩鷹子という役は40歳くらいの役なんです。40歳って年齢的にも精神的にも大人な女性だと思っていたんですけど、演じていると共感できる瞬間が意外とある。これは『萩家の三姉妹』に限らずなんですけど、自分とは違う誰かの人生を生きる事によって新たな“気づき”があるなって。
本当に楽しい経験をさせていただいてます。
森
萩鷹子という人は、凄く素敵な女性だなって思います。生きる!っていうエネルギーが物凄い強い女性なんだな、と。見習いたい。
また、鷹子は他の人と一対一で話すシーンが多くて、その瞬間瞬間に、役を通して同期と、そして1年生と真正面から会話できるっていうことが幸せだ、と感じながらやっています。
それと、私自身も三姉妹の次女なんですね。だから長女と次女の関係とか、長女と三女の関係とかがそれぞれ全然違うっていうのは凄く共感出来ます。台本読んでて、「あ、わかる〜。三姉妹こんなんやわ!」っていうのが多くて、凄く実感が持てるので、今回改めて三姉妹で良かったと思いました。
あと、『るつぼ』のエリザベスとは全然違う役をやれて嬉しいです。
甲斐
怒るってこんなにエネルギーがいる事なんだなって思った!
森
そうよね。私自身、日常で怒る事がほとんどないんだけど。でも、人に怒りとしてエネルギーをぶつけることっていうのは、生きていく上で大切なことなんだなって思った。愛情がある上での怒りとか。
岡本
俺は最初、すげえ日常感あるなって思った。
『るつぼ』とか『かへらじと』に比べたら、今回は舞台が2000年代っていうのもあって、感覚的に自分達と近しい感じがするなって。でも、実際にやってみたり、他の人のを見たりすると、全然日常的じゃないなって。
こんなに普段怒んないし、大声出さないし、人に対して面と向かって物言うことないし、そういうことが出来る戯曲なんだなって思ったかな。表面は日常感あるけど、そんなにセックスについて言うことって普通ないし。特に俺の役はそういうのが多い。
役に対しては、まさか自分がこの役になるとは思わなかったな。予想外でした。自分にはない部分ばっかりだし、やっぱり難しいです。
大内
『萩家の三姉妹』の稽古を見ていて、いかにこれまで58期をちゃんと見てこなかったかを感じた。同期だけど、あまり深く関われてないんだよね。じっくりみんなの演技を見れるのって、もしかしたら今回が初めてなんじゃないかなって思うくらい。
岡本
一生君、『阿Q外傳』出てたもんね。
(2019年度 第二回発表会『阿Q外傳』
撮影:宮川舞子)
大内
出てた。(笑)
っていうのもあるし、58期には現代が設定の戯曲をやって欲しいなってずっと思ってたから、今回『萩家の三姉妹』をやるのがすごく嬉しい!稽古の中で、今まで知らなかったみんながたくさん出てくるし、(松本)祐子さんも凄い引き出してくれるし、こんなにみんな魅力的だったんだなって、今回で凄くよく分かった。こういうセリフを喋るんだ!っていう発見がありますね!
岡本
(笑)
大内
個性の話でいうと、58期も強いんだけど、57期・59期はエネルギッシュ系が多いイメージ。58期には、なんか、違う個性の強さがあるなって思う。今までは、57期と59期に食われて見えることが多いなって思ってたんですけど、今回、この作品を見て、やっぱり一人一人面白いなって思いましたね!
森
大内
飽きない、飽きない。明らかにみんなこの3年間で蓄積してるものはあるだろうし、毎回の稽古で新しいものを絶対に出してくれる。確実にどんどん面白くなっているので、凄い事だなと感じてます。
②演劇との出会い、文学座との出会い
ーありがとうございます。次の質問ですが、文学座附属演劇研究所を受けようと思ったきっかけ、役者・演出家を志したきっかけを教えてください。
大内
この研究所を受ける前まで、演劇系の大学に通っていて、大学4年の時につくってた作品に必死すぎて、11月末くらいまで卒業後のこととか考えられない感じだったんだけど…その作品を終えた時に、初めて本気で演出って仕事を目指してみたいなって覚悟ができて、そこから急いで演劇ができる場所を探したんだよね。
文学座には色んな縁を感じていたのもあったんだけど、入所試験で文学座のアトリエに入った時に、凄くアトリエが素敵に見えて、「ここで演劇をしたいな」と思ったのが一番の理由かもしれない。
(大内一生)
岡本
俺、地元が山口県なんだけど、高校卒業して進路どうするか考えてた時に、その頃ダンスやってたから「じゃあ、ダンスやりに東京行くか!」みたいな。それから1年間ダンスやってたんだけど、ちょっと壁にぶち当たったのよ。「これヤバイな、本当にダンスで食べていけるのかな」って凄く不安になっちゃって。その頃から映画が好きで、映画めっちゃ観てたから、「映画おもろいな、いいな映画」って、「ダンス辞めて、映画の方に行ってみるか!」って。それで、撮るか演るかで悩んだ時に、撮るのは大変だぞって言われたから、ひとまず演技やってみようと思ってネットで調べたら文学座が出てきて、有名な役者さんを輩出してるから信用できるなと思って文学座を受けたかな。
(岡本祐一郎)
森
私は、小学校からミュージカルを習い事でしてたのね。それで、小1で初めて舞台に立った時に、「私は舞台に立ち続ける人になるだろうな」って子供のくせに一丁前に思ったの。で、高校でこの先の進路のことを考えてたとき、私はすぐ東京に行って芝居がしたかった。でも両親は、「大学はちゃんと出ときなさい。」って言ってくれてたのね。今思えば、本当に有難いことだけど。
それで親と沢山話し合って、4年制の大学に行くことに決めた。両親は、「ちゃんとした、お芝居を学べる場所に行けることになったら、そのときは大学を辞めるっていう選択肢を入れても良いんじゃない?」って言ってくれた。それで、大学2年生のときに文学座受けて合格して、大学を辞めて東京に来た。でも2年間だけど大学に行かせてもらってたっていうのは、ほんとに良い経験だったとつくづく感じます。両親に感謝してます。
(森寧々)
甲斐
私は中高一貫の学校に通っていたんですけど、その学校の文化祭でのイベントに“演劇コンクール”っていうのがあったんです。照明も音響も一応全部生徒たちでやるみたいな。自分は6年間、演者として舞台に立たせて貰ってたんですけど、その時に演劇を仕事にしたいなぁってすごく思って。
それで、もっとちゃんと芝居を学びたい!って思って芸術系の大学を受験したんです。
入学してからも、芝居にサークルに充実した学生生活を送ってたんですけど、3年生の冬頃に、ある先生から突然、「文学座を一回受験してみたら?」って言われて。でも正直、「後1年やしなー」って
めちゃくちゃ悩んで。だって2年生やったら、まだ後2年あるからあれだけど、3年生って後1年やん?
大内
凄い当たり前の事言ってなかった?
2年だったら後2年だけど、3年だったら後1年ってどゆこと?
甲斐
いや、だから2年生やったら後2年あるやん?
岡本
もう1回言わんでええねん!
甲斐
(笑)
まあそれは置いといて。
それで周りにも相談した時に、「先生は、今の巴菜子に言ってくれてるんやから、来年とか再来年とかじゃなくて絶対に今受けなあかん。」って友達の一人が言ってくれて。確かにそうかもしれないなと思って受験したんだけど、1次試験の筆記に関してはもう全く分からんかった!(笑)
(甲斐巴菜子)
岡本
分かる!全然分からんかった。
大内
そうなんだ!
甲斐
でもさ、何も書かないよりは書いた方がいいみたいな鉄則あるやん?自分の中でも、せめて1次試験は受かりたいっていう思いがあったから分からなくてもとりあえず何かしら書いた記憶はある。
岡本
俺も1次試験の時、全然分かんなくて、「あ、もうダメだ」って思ったわ。最後、回収する時に他の人の解答がチラッと見えたんやけど、めっちゃ書いててさ。「すげえな、やっぱちゃんと勉強してきてるんやな。」って思ったの覚えてる。
③研究所での3年間
ー次の質問なんですけど、本科と研修科の3年間で一番印象に残ってる事はなんですか?
大内
俺、祐一郎と初めて会った時の事覚えてる!
岡本
いつだよ、それ(笑)
大内
夜間部とは全く関わりなかったんだけど、祐一郎だけは知ってるんだよね。
岡本
怖!!(笑)
大内
『女の一生』の時に、 俺、幕吊ってて、その裏に祐一郎がいて、一緒に幕吊ってたの。めっちゃ声低い人いるって思って「声低いですね!」って言ったもん!
岡本
あーなんか思い出したわ!
大内
なんか祐一郎だけ覚えてて、会う度に「声低いですね!」って言ってて、自分で「俺しつこいな〜」って思ってた!(笑)
岡本
「声低いですね!」って言われて、「ああ、はい、そうですね。」しかないしな(笑)
森
岡本
繋がってないわ!
大内
研修科上がって、「あ、声低い人いる!知ってる!」って思って。
岡本
そこかよ、一番印象残ってることやぞ!
もっと昼間部の卒公とか残っててよ!(笑)
ー祐一郎さんはどうですか?
岡本
俺?バーと上げていっていい?それこそ、一次試験の筆記ダメだったなって思って、その次の実技の前に一人で校舎から出てみたら、声出ししてる人とかいて、「こわ!でもそうか、こういう所か。」って思いながら一人でポカポカしながら実技の紙を顔にのせて昼寝してたら実技の紙無くなってて(笑)
一同
(笑)
岡本
ヤバいと思って、他の人に「コピーさせて下さい」って頼んで、コピーしに行ったのよ。それでコピーした後に、お礼にコーンスープ添えてその人に返したら、「やっぱり、紙無くして何も言わずにいるのまずいと思うんで言います!返してもらってもいいですか?」って言われて。「えーマジ!?コーンスープまで渡したのに!」って思ってたら、その間にその人が試験監督の人に言ってて、「それは駄目だよ。」って結局注意されて(笑)「俺、もう終わったわ。無理や、次どうしようかな。」って考えてたら、一次試験合格!みたいな。二次試験は二次試験で、楽譜用意するの忘れて、アカペラで歌った思い出がある(笑)そして、一番面白かった舞台は『わが町』やったかな。自分にとっての初舞台だったし、戯曲も凄く好きだった。何より、坂口(芳貞)さんが好きだったから一生忘れないと思う。
森
本科のときに、松本祐子さんの授業で『かもめ』やって、演技をするってことが凄い楽しくて、人のを見るのも面白かってんな。でも、本科って人数多いから、1回の授業で1人1回くらいしか出来なくて。1回1回全力で家で考えてきて、稽古場でやって、祐子さんが色々言ってくださる、みたいな感じで。ある日家でめちゃくちゃ考えて来て、稽古場でやったら、祐子さんに「全然変わってないし、棒読みだし、何がしたいかわからない。」って言われて。その次の授業が移動してアクションやったんやけど、悔しくて1人で泣きながら歩いて。その日を一番覚えてます。
もう一つ、自分の殻を破れた時があって、『秋の対話』の老婆役のとき。今までの私は、何か1枚殻被ってたけど、「ここで殻被ってる方が恥ずかしいわ!」って思って、さらけ出せて。あの時から何か一つ変われた気がします。
(2020年度 第一回発表会『秋の対話』
撮影:椋尾詩)
甲斐
印象的な出来事は色々あったけど、私は『阿Q外傳』かもしれない。
岡本
間違いないわ。
甲斐
実際に茴香豆(ういきょうまめ)作ったしな!
岡本
中国の伝統料理なのよ。
甲斐
誰の茴香豆が一番美味しいか対決したのも覚えてるなぁ(笑)
私は、阿媽媽っていう、茶店の女主人の役だったんですけど、実際にお茶を淹れて出すシーンや、“茶”って書かれた旗を出したり、しまったりするシーンがあったんです。それで、演出の鵜澤(秀行)さんに、「なんでそんな持ち方になるんだよ!」って怒られた記憶がある(笑)
あとは、初日に緊張し過ぎて手が震えちゃって、お茶台の上にお湯をこぼしたのを焦って手で拭いたりとか(笑)そういうことの方がよく覚えてるかな。
岡本
分かる。俺も『阿Q外傳』あるわ。場数が多かったから、その分場面転換も大変で、転換稽古だけで2時間近くやってたし。AチームとBチームで、自分が出す小道具が変わったりしたからみんなパニクってた(笑)
(2019年度 第二回発表会『阿Q外傳』
撮影:宮川舞子)
④58期の"これから"
ーこれから先の人生で「こういう役者になりたい」「こんな作品を作りたい」という目標はありますか?
森
松尾スズキさんの『キレイ』という作品があって、それの『ケガレ』という役が凄い好きで。その役をやるっていう目標があります。その役をやるまでは、役者はやめれないって。
何を演じても「わ!同じ人と思わなかった!」って思ってもらえる、何にでもなれる役者になりたい。それに加えて、「こういう役なら森寧々しかいないね」って思ってもらえるような、一番のハマり役を見つけるというが今後の目標です。
甲斐
テレビに映画に舞台に、幅広く活躍出来る俳優になりたいっていう思いはやっぱりあります。朝の連続テレビ小説と大河ドラマはずっと夢だなぁ。
特に、朝ドラ!朝ドラって15分の間に様々な出来事が起こるし、ストーリーがあるじゃないですか。いつか、絶対に出演したいなって思ってます(笑)
とにかく、これからも色々なことがあると思うけど、初心を忘れず、めげずにやっていきたい!それでいつか、「この人の演技には嘘がないから信じられる」って思って貰えるような役者になれたら幸せです。役の人生をしっかり生きられる役者になれるよう、頑張ります!(笑)
(2020年度 第一回発表会『かへらじと 日本移動演劇連盟のために』
撮影:椋尾詩)
岡本
役者としては無いかな。
やっぱり映画を作りたいし、ゆくゆくは監督をやりたい!文学座に来て、人を見るのってこんなに面白いことだったんだなって思った!単純に、自分が作ったものとか撮ったものを見て、結局は自分が一番感動したいんだと思う。
大内
10年後、20年後とかにみんなが出演している作品を演出したいなって思う!
甲斐
夢がひろがるね。
大内
なんか卒業式みたいだね!
岡本
卒業です!!!(笑)
大内
実は文学座に入ってから考え方が少し変わって、“たくさんの人に受け入れられる作品をつくりたい”って思うようになった。演劇をもっと色んな人に観てもらえるような、面白いねって思ってもらえるようなコンテンツをつくりたいです。
⑤58期から59期へ
ーありがとうございます。最後の質問です。59期生に対して思う事を教えて下さい。
森
今年はこういう世の中になっちゃったってことで、残念ながら一緒に舞台に立てたのが少なくて。稽古後に飲みに行くのも出来なくて。今回の『萩家の三姉妹』は58期の卒公だけど、1年生2人(山田奈津子(59期)片平友里絵(59期))の先生役として、一緒に芝居出来るから、それは凄く嬉しい。59期と、1人でも多く絡みたかったから。
でも今年度一緒に出来なかったからこそ、59期の子とは今後、外の現場で是非会いたい。一緒に作品を創りたい。全員、本当に素敵な役者さんだと思います。私もずっと頑張るから、59期生も、どうぞ頑張って欲しいです。
岡本
一緒に飲みにも行けなかったし、接することがあまりなかったから、正直、皆が何を考えているのかは分からなかったかな。
森
ね。好きな物とか、もっと聞きたかったし、そういう話すれば良かったなって。
岡本
もちろん、なんとなくは分かるよ!(インタビュアーに)賢伸とか特に分かるけどな、お前目立つし。真面目な人が多いイメージ、エネルギッシュなのが伝わってくる。でも、もっと肩の力を抜いてもいいと思う瞬間はあったかな。
大内
本当に絡みが無いから本当に知らない、はい
甲斐
じゃあメッセージ!
大内
本当無いな、ごめん!(笑)
以上です。どうぞ。(笑)
甲斐
コロナの影響で、研修科1年目が思い描いてたような1年ではなかったかもしれないけど、演劇への熱い思いをなくさずに私達と向き合ってくれてありがとうとまずは言いたい!歓迎会とかも出来なくて、確かに例年より関わりは少なかったけど、決して0ではなかったし、同じ作品を創る“仲間”として1年間みんなと関われて楽しかった。