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World of Word

ベーシスト・ウィズ・ビターショコラ

2021.01.06 16:13

「ベーシスト・ウィズ・ビターショコラ」

レザック×エイシ


原作:VORED/ヒサヒト from. DIRTY LOBER様




まだ寒さが続くこの頃。

世間は今、バレンタインで賑わっている。とある大学でも、例外ではなかった。


「おっはよー」

「おはよーすユキヒ氏ー」

「……うっす」

「「えっ」」

明るく挨拶を交わすユキヒ、フロイの二人。だが、レザックは疲れた様子で小さく声を出すぐらいだった。

いくらクールとはいえ、さすがにここまでテンションが低い事はない。

「ちょ、リザどうした?何か今日テンション低くね?」

「ははぁーん?さてはリザパイセン、オールナイトして寝不足ですかぁ?」

「オールナイトって?」

「そりゃあリザと言えば楽器いじりでしょ。それかジャミロクワイ」

「あ~、なるほど」

「………はぁ」


二人は心配したり茶化したりしてレザックを元気づけようとするが、レザック本人はそんな二人の言葉が聞こえなかったのか低いテンションは変わらず。

おまけに長い沈黙の後にため息がこぼれた。


「…あ、あんなリザ見たことねぇ…」

「右に同じく」

「だよな…。先生何か知ってる?」

「えー僕が知るわけないでしょー?昨日だって特に変わった様子なかったし」

「でも絶対おかしいって。じゃなきゃこんな…」

「なぁ」

「「はいぃ!!?」」


ようやく口を開いたレザックに二人は仰天した。ここ最近悩んでいた事なのか、レザックは多少言いづらそうにしながらもゆっくり話し始める。

普段ストイックでクールなその顔が、少し赤くなっているように見えた。


「…今度さ、バレンタインじゃん?だから、あいつに何かあげよっかなーって考えてんだけど」

「お、おう…。てか、あいつって誰?」

「…んんと、悪い。ちょっと言えない」

「え、言えないってどゆこと…」

「ユキヒ氏ちょっとカモン!」

「うおっ!?」

突然フロイに腕を掴まれ、廊下に連れて行かれるユキヒ。レザックはきょとんとしながら目で追う他なかったのだった。

「…な、何だ?」


「ちょ、いきなり何すんだよフロイ!」

「ちょっとぉ!分かんないのユキは!?リザのあの表情を見てさ!!」

「ひ、表情って言われても…。てかそれがどうしたんだよ」

「このおたんこなァァァすッッ!!」

「ぐほぁ!!」


▼フロイがユキヒにアッパーをくらわせた。

というのはさておき、文字通り殴られたユキは倒れ込む。そして見上げた。

何故だか燃えている猛禽類を。

「本当に分からないのか!!今、時期はバレンタイン!そして一見そんなイベントに一ッッッ切興味を持たなそうなあのリザが…!頬を赤らめながら「あいつに何あげようか」なんて言ってるんだぞ!!答えは一つしかないだろォ!!!」

「お、…おう……」

瞳に炎を灯しながら熱くなるフロイに圧倒された。

だがユキは全然理解出来てないようで、見かねたフロイの表情が黒くなる。

ゴゴゴゴ…と背後で大気を震わすようなオーラをユキは感じた。

「え、ちょ…せ、先生…?」

「忘れたとは言わせないぞユキヒ氏…。わしとリザがあの時、どれだけユキヒ氏に気を遣ったか…!」

「………あ゛」

思い出したのか、ユキは顔を顰めた。

それもそのはず、以前ユキには彼女が居た事がある。だがどうにも上手くいかず、その間はしばらくレザックやフロイとぎくしゃくしてしまっていた時期があった。後々仲直りをしたが、今回の一件で再び掘り返されたようである。


「い、いや…あの時はホントにごめんって…」

「ホントかー?」

「ホントだって!」

「ならいいけどー。ってかさ!!」

「今度は何!?」

「…リザがバレンタインにあげたい相手って誰?」

「今それ聞くのかよ!!ていうか結局フロイは何が言いたかったわけ!?」

「やっだもうまだ分かんないのアンタぁ!?リザが誰かにラァヴしてるって話に決まって…」

「なぁー、練習いつ始めるんだよー」

「「あ」」




そして数日後、バレンタイン当日。

普段とは違い、ほんのり甘いチョコレートの香りが校内を包んでいた。

それと同時に、カップル達の雰囲気もチョコのように甘くなる。

一方、ベースを背負いながら部室に向かうレザックの姿があった。その手には、シックなデザインの包装紙に包まれた箱がある。そう、バレンタインチョコレートだ。


「結局、無難なヤツしか選べなかったなー…。気に入ってくれると良いけど」


わずかな期待を膨らませながら、レザックは歩を進めた。

その途中、同じサークルの後輩であるエイシと立ち会った。


「おっす。エイシ」

「あ、リザ先輩。おつかれさまで…——」

「はい、これ」

「……………………。…え」


レザックが手渡した物に、エイシは目を丸くした。それは、先ほどレザックが持っていたバレンタインチョコレート。

エイシの反応に動揺するが、レザックは少し恥ずかしげに説明した。

「ええと…いつも、俺を慕ってくれてるっつーか…。熱心に話聞いてくれるし、だからそのー…何だ。そのお礼って言ったらアレだけど…、俺からエイシに、バレンタイン…です」

「…………」


エイシは茫然としたまま動かない。

文字通り、固まっている。

さすがに困らせてしまっただろうかと、レザックの表情が曇った。


「………あ、その…やっぱり要らねぇよな。男からもらうチョコなんて…——」

「す…、すっっげぇ嬉しいっす!!!」

「へ?」


いつもより興奮気味で、エイシはそう言った。

いきなりチョコなんて手渡されて困惑しただろうと思いきや、予想外の返事が返ってきてレザックは目が点になる。

「あっ、いや…その…、まさかリザ先輩からバレンタインもらえるとか思わなくて、びっくりしちゃって…。でも俺、すげぇ嬉しいっす!!ありがとうございます!」

「お、そ、そうか…。喜んでもらえたなら良かった」

「俺、ホワイトデーに何か返しますね」

「おう、楽しみにしてるな」

「はい。あ、先輩この後空いてますか」

「うん、大丈夫。今日はどうする?」

「ちょっと、簡単にセッションしたいっす」

「お、良いねぇ。んじゃ部室行くか」

「うっす!」


今日は、特別な日。

愛する人に、家族に、友達に。

そして、尊敬する誰かに感謝の気持ちを贈る日。

とある大学の部室から、ベースの低い音色が楽しげに響いていた。それは、ビターチョコレートのようにほろ苦くも、ほのかに甘く、とろけるように。



—END—















お・ま・け


ユキ:「……はぁ~、まさかチョコを渡す相手がエイシだったとは…」

フロイ:「ノンケなのはちろっと聞いたことあったけどー、マジだったわねぇこれ…」

ユキ:「薄い本出来るんじゃね?レザエイで」

フロイ:「いやーそこはエイレザでしょ」

ユキ:「んーエイレザかぁ。想像出来ないな」

フロイ:「エイシがリザにxxxしてー、xxxxxされちゃう的なー」

ユキ:「え、やば…」

ロップ:「あー!!先輩たちがえっちな話しtもがふご」

オグリ:「だめだよロップ…!声が大きい!」

ロップ:「んんー!んむんんむむーー!!(ちょっとオグリー!今いいとこなのにー!)」


レザック:「…あいつら、何の話してんだ?」

エイシ:「さ、さぁ…。」