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八代健志監督 舞台挨拶のご報告

2021.01.07 04:58

12月21日月曜日に『GON- THE LITTLE FOX』の上映が行われました。上映会では、実際にごん、兵十、加助さんのお人形たちが上田映劇に登場!どうやって人形が動くの?どんな素材でできているの?どんな表情をしているの?というところを、間近に観ていただきながら、そして触れていただきながら、人形の美しさとストップモーションの映像の世界と、そしてそれを支えるテクニカルな部分の創造性に触れる機会となりました。当日は、人形制作から美術、脚本までトータルでこなす八代監督にもご登壇いただき、たっぷりお話を伺うことができました。

こどもの頃に原作である新美南吉の「ごんぎつね」を読んだ時には、あまりピンと来なかったと語る八代監督。そこから年月がたち、大人になってくると、自分なりに「ごんぎつね」を捉えることができるようになり、新たに解釈を加えた形で映画にしていかれたそうです。「ごんと兵十の心の中にあるやさしさとすれ違いを人形のストップモーションで描く」と、言葉で書くと簡単ですが、原作の「ごんぎつね」で綴られた物語から、この『GON-THE LITTLE FOX』という作品になっていく過程ははるかに想像を超えていました。

お人形はすべて八代監督によって彫られています。まず「顔」から決めていくそうですが、それは映画の作品で「俳優」のみなさんを決めるキャスティングの行為そのものだなあと感じました。実際に動くのは眼球と口もとと眉毛の3箇所だけ。わずかな動きの変化で表情がひとつひとつ作られていき、それがつながって動きが生まれる。「人形が感情を持っているようですね」とお伝えしたところ、「それは人形たちの動きを受け取ったみなさんの側に”感情”というものが生まれるものかもしれませんね」と話されていました。


ちょっとツンとした表情のごん。人間にお母さんを殺されてしまい、基本的に世の中に対して拗ねている。そして、ラストで思わぬ形でごんとの別れを迎えてしまうのは、迷いの中にいる兵十。本当の気持ちの奥にあるところと、周りからのプレッシャーの中で、自分はどうしたら良いんだろう?と揺れている。その表情や感情が、お人形から感じるから不思議です。

一方、監督が一番共感するというのが、原作の中でも映画の中でもあまり登場しない、加助さんです。監督曰く「彼に”世の中”とか”世間一般の声”みたいなものを代弁させた」そうですが、加助さんの中にあるのはやさしさなのです。たまにちょっとおせっかいが過ぎる時があるかもしれないけれど、親を亡くした兵十にとっては、親代わりみたいな存在です。誰も相手を傷つけようなんて思っていなくて、みんなの心の中にあるのは”やさしさ”そのもの。いつも誰かを思っていて、でも、本当の気持ちに沿って動けなくて素直になれなくて、すれ違いとして表れてしまう。


世界はそんなものだらけなのかもしれないなあと改めて思いました。


ご登壇いただきました八代監督、そしてご来場いただきましたみなさま

貴重な機会をありがとうございました!



(トーク終了後、上田城を訪れた「ごん」の様子を監督が送ってくれました^^)