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スーフィー

2021.01.10 06:34

Facebook・草場一壽 (Kazuhisa Kusaba OFFICIAL) さん投稿記事 砂の話

 美しいお話を一遍。

はるかかなたの山々に源を発し、さまざまな土地を流れてきた小川が、ついに砂漠と出会った。小川は、これまで克服してきた様々な障害物と同様に通り抜けようとしたが、砂の中に流れ込むと吸い込まれてしまい、進むことができなかった。

 小川はもうこれ以上先には進めないのだと諦めかけたとき、砂の中から囁き声がした。

 「風は砂漠をわたってゆける」。

小川は反論した。「風がわたっていけるのは空を飛べるからです。私は飛べない・・このまま吸い込まれるだけ。それが運命なのです」

 「このままでは砂漠を通りぬけることはできない。いずれ消滅するか沼地になるだけだろう。目的地までたどりつきたいなら、風に運んでもらうことだ」

 「いったいどうやって、そんなことができるというのです?」

 「風に溶け込むのだ」と砂が言った。

 小川には受け入れがたい提案だった。これまで一度もなにかに溶け込んだことはなかったし、「自分」を失いたくなかった。そんなこと、無理だ・・・。

 「風には水を持ち上げて砂漠の上を運び、地上に降らす能力がある。水は雨となって落ち、再び川となるのだ」。

 「でもそれが本当かどうか・・・確かめようがないじゃないですか」

 「これは真実であり、信じないなら沼以上のものにはなれないだろう。いや、沼になるにも何年もかかる。それに、沼は小川とは違うのだ」

 「いまのままでいつづけることはできないのですか?」

 「いずれにせよ、お前はいまのままであり続けることはできない・・・」

 そのとき小川の心の中にぼんやりとした記憶がよみがえった。小川は自分が風の両腕に抱きかかえられえていたときのことを思い出したのだ。ああ、自分は何度も何度も、風に運ばれたのだ・・・。

 小川は蒸発して上空で両手を広げて待っていた風の中に溶け込んだ。風は優しく、小川を運んで遠くはなれた山々の頂上に達すると、そこで穏やかに雨を降らせた。

●「スーフィーの物語」を短くアレンジしたものです。スーフィーの修行場では、弟子は物語によって教えを引き継いでいきます。弟子の理解が一定の段階に達したと判断されると、導師はその物語に秘められているさらに深遠な意味の次元(解釈)へと弟子を導き、教義を伝承していくそうです。本質というものを考えさせてくれるこのお話には、ほかにどんな深い解釈がなされるのでしょうね。みなさまはいかがですか?

https://ameblo.jp/minamiyoko3734/entry-12454954181.html 【スーフィー;イスラム神秘主義】

https://ameblo.jp/minamiyoko3734/entry-12454952843.html 【「イスラーム神秘主義(スーフィズム)の思想と実践」】

https://ameblo.jp/minamiyoko3734/entry-12453354819.html 【スーフィー】

https://ameblo.jp/minamiyoko3734/entry-12453351375.html 【ルーミー】

https://ameblo.jp/minamiyoko3734/entry-12452629079.html 【ルーミー詩撰】

http://wabisabiland.cocolog-nifty.com/wabisabiland/2006/12/post_00ce.html 【イドリース・シャーの『スーフィーの物語 ダルヴィーシュの伝承』】 より

 ラマダンの夜関係の取材の続きでイドリース・シャーの『スーフィーの物語 ダルヴィーシュの伝承』(美沢真之助訳、平河出版社)を読む。寓話を並べた本なので、この種の入門書としては、『イスラム神秘主義』(平凡社)よりさらに読みやすい。

 「群盲象をなでる」のもとになった話、シェイクスピアの『リヤ王』のもとになった話をはじめ、えーっ、これもスーフィーの作・伝承だったのかという話が次々に。表紙の写真がネットのどこかにないかと探していたら、この本の訳者が隅田川乱一という名前でも仕事をしていたこと、ガンで他界されていたことを知った。

 ついでにカイロのスーフィーの旋回舞踊の写真のスライド・ショーが見られるブログも見つけた。

 http://tabinomoto.jugem.jp/?search=%3Cimg

トルコのメルレヴィの求心的な舞踊とちがって、極彩色で、なんだかジャグラーぽい感じ。