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#088.鼻から息が漏れる(鼻抜け)

2021.01.25 21:43

前回に引き続き先日1月9日に開催致しました「トランペット何でも相談室・オンライン」という企画でお答えしきれなかったご質問の回答をこちらでさせていただきます。

今回の質問はこちら。


質問========================

先生はzoom講習会で「鼻から息はもれない」と仰っていましたが、もれてしまいます。

(原文から一部抜粋、修正させていただきました)

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こちらは前回と同じ方からの質問です。

なのでもし前回の記事をご覧になっていない方は関連性が高いため、ぜひそちらから読んでいただけると今回のお話が、より腑に落ちると思います。

鼻から息が漏れる(鼻抜け)

楽器の演奏中に一時的に鼻から息が漏れるようになる方は稀ですがいらっしゃいます。その原因の大枠として、やはり前回の質問と同じで体のことを考えすぎることであらゆる部分が関連性なくバラバラに働いてしまうのが原因かもしれません。特に鼻抜けは「力を使ってはならない」という根拠なき呪縛がそれを引き起こすことが多いです。


ではまず口の中の空気の流れについて確認してみましょう。



軟口蓋

少々くすぐったいかもしれませんが、舌先で上顎を触ってみてください。

前歯に近いほうの上顎は硬いですね。その部分は硬口蓋(こうこうがい)と呼ばれる部分です。舌先を奥へと這わせていくと、途中から柔らかくなるのがわかると思います。その部分から奥が「軟口蓋(なんこうがい)」と呼ばれる部分です。

出典:http://kodajibi.com/page_nodonoshikumi.html



では今度は鏡で口の中を覗いてみましょう。

上顎の奥を覗き込みながら、あくびをするか、あくびのマネをしてみてください(無理なら口で深呼吸をしてみましょう)。すると、いわゆる「のどちんこ」と呼ばれる部分(口蓋垂(こうがいすい))とその周辺が上の奥の方へヒュっと動くのが見えたと思います。その動いたのが軟口蓋です。軟口蓋はこのように動くことができるのです。


ではこの軟口蓋、動くことでどのような役割を担っているのでしょうか。



軟口蓋の働き

軟口蓋は口と鼻の奥(鼻腔)を遮るシャッターの存在です。

私たちは「鼻呼吸」をします。その際、鼻から口の奥を経由して空気の流れが生まれていますが、軟口蓋が開いているからできているのです。

そこでもうひとつ実験です。ツバを飲み込んでみましょう。ゴクっとした際、軟口蓋に力がかかって動いているのを感じられるでしょうか。これはツバ(水分)や食べ物を飲み込む際、鼻の中に逆流するのを防ぐために、この時軟口蓋が働いてフタをしているのです。

出典:https://ameblo.jp/easy-way-to-live/entry-12382443352.html




他にも様々な場面で軟口蓋は働いています。次にほっぺたを膨らませてみましょう。できればパンパンに膨らませてください。頬がふくらむためには口の中に空気が溜まって空気圧が高まっている必要があります。言い換えればこの状態は「空気の抜け道がない状態」です。ということは頬が膨らんでいる時、軟口蓋が働いて鼻に抜けないようになっているわけですね。


トランペットを演奏する際も「体内の空気圧」をコントロールすることで演奏が可能になっているわけですから、鼻から空気が抜けてしまえば音を出すことは不可能ではありませんが大変困難です(中〜高音域は高圧にする必要があるため、鼻抜けしていると出せません)。


演奏時、通常は無意識に軟口蓋が働くのですが、例えば「力を使ってはいけない」とか、根拠なく脱力脱力と意識していると、体のあらゆる部分が動くことを禁止しようとして、本来無意識に働いていた必要な部分、ここでは軟口蓋までもが使われなくなることがあります。


やはりこれも「フィジカル100%」の意識で演奏していることが最も多きな原因と言えます(前回記事参照)。



軟口蓋を意識する

鼻抜けが起きてしまった場合は一度「軟口蓋が働いている」実感を手に入れることがまず必要なので、一時的にこのような練習をしてみましょう。


いつも通りトランペットを構えて音を出す準備を完了させてください。

音の出だしはタンギングをしているはずなので、その音を出す直前、舌で空気の流れを遮断している状態のまま(舌をその場所に固定したまま)お腹に力を入れてください。すると体内(肺から口の中まで)の空気圧が高まって、先ほどの頬を膨らます状態になるか、それに近い状態になると思います。苦しさを覚えるかたもいらっしゃるかと思います。これらの状態は、空気が体外へ流れ出られないために起きたものですから、当然軟口蓋も働いていることになります。鼻抜けは起きていません。


この状態を確認したら、空気の流れを遮断していた舌を開放してください。音は出ても出なくても今は構いません。舌以外の部分はそのまま変化をさせない(緊張状態をキープする)ように心がけてください。


これはあくまでも軟口蓋の働きを楽器演奏時に確認するためのものであり、楽器の上達に必要な練習方法ではありません。むしろこの状態で楽器を演奏するのは空気圧が高すぎて良くありませんから、軟口蓋のことを理解できたらもう行う必要はありません。緊張状態の感覚も引きずらないよう割り切ってください。


最初にも言いましたが、鼻抜けの原因の多くは「トランペットを吹くときに力を使ってはならない〜」という意識の呪縛によるものなので、今回解説した様々な方法による軟口蓋の存在と働きの理解、働きの体験によって解決しますが、もしもそれでも鼻から空気が抜けてしまう場合は体の不具合を疑う必要があるかもしれません。極めて稀ではありますが実際に管楽器を演奏する時だけそのような症状が出る病気が存在するので、口腔外科などで診察してもらうことをお勧めします。



ということで、今回は演奏時に鼻から空気が漏れる「鼻抜け」について解説しました。

それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

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