ZIPANG TOKIO 2020「まさに桃源郷! 下呂温泉の山むこうに日本で最も美しい村があります~貴方もきっと武陵の漁夫の気持ちに~」
日本のほぼ中央、南飛騨の山間、南北28km(七里)に10の集落がつらなり、 馬瀬川が貫いて流れる森と清流の里。 「馬瀬七里十里五十淵」という不思議な言葉を口にすると、岩と淵瀬がつくる 変化に富んだ水辺の風景と、自然と調和した暮らしが浮かんできます。
歴史環境
馬瀬川の源流にある竜馬峰(高山市)は、天駆ける竜馬が眠ると伝えられ、「飛騨」の語源となったとも言われています。 馬瀬地域の南端にあたる西村地区は、下呂温泉の幸田地区と郡上を結ぶ街道が通り、古くから人の往来がありました。平安時代末期には、源義平(悪源太・源頼朝、義経らの長兄)が平治の乱に敗れて馬瀬の地に落ち延び、再起を期して兵を募集したと古い社の縁起に伝わります。江戸時代は、集落に口留番所が置かれて、飛騨と美濃を行き来する人や物資に税を掛けました。大屋根の益田づくり民家や繭蔵など、養蚕で栄えた名残が残り、山村ながらどこか余裕が感じられます。
生物多様性
馬瀬川には天然あまごやイワナをはじめ、最近では少なくなったゴトチ(ヨシノボリ)、カジカなどの魚類が見られます。動物は、野生のサル、シカ、イノシシによる獣害に悩まされており、環境の変化によって増えすぎた野生動物個体数の調整や、人間との共生が模索されています。植物は、渓流魚付保全林に固有の植物があり、非常に貴重です。夏には集落の外れから西村ダムにかけてホタルが乱舞します。
日本で最も美しい村
全国の釣りファンが憧れる馬瀬川と、緑あふれる水源の山々は自然環境、歴史文化が優れた地域として、「日本で最も美しい村」連合に加盟しています。
「全国水の里百選」や「水源の森百選」、「平成の名水百選」などにも選ばれ、2003年には、世界中から美しい街づくりに取り組んでいる都市や農村を選ぶ「ネイション・イン・ブルーム2003」で銀賞を受賞しました。
自然との共生「馬瀬地方自然公園」「馬瀬里山ミュージアム」
馬瀬の人々の暮らし全体を「馬瀬地方自然公園」と呼んでいます。 フランスの地方自然公園制度の精神を取り入れ、自然と共生しながら、農村の持続可能な発展をめざす、住民と行政が協働した新しい自治の取り組みです。外の価値観で測るのではない「幸せのモノサシ」がここにはあります。
平成26年には、美しい村のモデル集落である西村地区を、集落まるごと「馬瀬里山ミュージアム」に指定しました。 里山ミュージアムでは、集落や川で、さまざまな体験観光プログラムが開かれ、 グリーン・ツーリズムの舞台として、地域活性化を図っています。
日本一おいしい鮎は、日本で最も美しい村生まれ!
馬瀬川の鮎は、味、香り、形がよいことで有名です。平成19年に「全国利き鮎会 in TOKYO」でグランドチャンピオンに輝きました。これは、高知県で行われる全国利き鮎会が10周年を迎えたことを記念して、同大会の暦年チャンピオン・サブチャンピオン17河川から全国一を決めた大会です。 上質なコケを食べて育った鮎は「香魚」とも称され、スイカに似た甘い香りをほのかに放ちます。そのハラワタは微かな苦みを伴った甘さです。
馬瀬がめざす「味の景勝地」
日本の農山漁村は、自然生態系のみならず、里地と都市と両方の生活基盤を守る重要な役割を担っています。伝統文化や景観の形成はその表われと言えます。 効率一辺倒の大量生産品に押されるだけの日本の農畜産業ではありません。良品に関心を示し、購入というかたちで支持してくださる方々が日本に、世界にいらっしゃいます。「味の景勝地」が中山間地域で営まれる農畜産業や沿岸部でなされる漁業の価値を高めます。上流域での健全な農地の営みが豊かな海と海岸の風景を保持する自然界の循環もそうした価値を裏付けます。魅力的な「食」と、それを生み出す傑出した「風景」とが一体を成し、生活者、旅行客に信頼と安らぎを提供します。
馬瀬の美しい農村風景と、人々の営みが生み出す卓越した味は切り離すことができません。 フランスには、魅力的な食と風土景観を合わせて保護し、地域活性化に取り組む「味の景勝地(SRG)」制度があります。馬瀬は、熊本県阿蘇地域、新潟県佐渡島などと協働で、日本版「味の景勝地」をつくるために、味と地域のブランド化について研究と実践を行っています。
源流の村
馬瀬川は東海三県の水瓶です。馬瀬川の下流には、東海三県約1,100万人に生活用水や農業、工業用水を供給する「東海の水瓶」岩屋ダムがあります。馬瀬地域には、名古屋市を中心とした多くの人々に生命の水を届ける源流の村として、水源を守る矜持があります。
渓流釣りの名人が「魚は森を見てとれ」と言うとおり、馬瀬川の鮎と美しい村には深い関係があります。 森は湧水を生み、魚の棲み場や餌となる昆虫を生み、水と土は川に流れてプランクトンやコケを育てます。馬瀬は森林面積が95%を占める山村ですが、実にその1/4以上を魚を育てる「渓流魚付き保全林(けいりゅううおつきほぜんりん)」に指定して、守る取り組みを行っています。
農村生態系「エコバリーシステム」の村づくり
平成のはじめ頃、旧馬瀬村が進めた観光開発により、釣り客が年間4万人程度だった馬瀬に30万人もの観光客が押し寄せました。その一方で、環境の悪化を懸念した人々により、馬瀬川の生態系を軸にした地域づくりが始まりました。
水源の森は豊かな水を生み出します。 山水は丹精込めた棚田を潤し、人々は山里の恵みを朴葉に包みます。
里をめぐる水は、馬瀬川に流れて豊かなコケを育て、渓流魚のふるさとになります。 森・農地・川・人が共生する農村生態系「馬瀬川エコリバーシステム」が、おいしい鮎と美しい風景を育てます。
美しいい水を守るために
鮎の良さは水の良さ。いいコケをたっぷり食べた鮎はスイカの匂いがします。水を守るために、間伐を進めて健康な山をつくる取り組み、丹精込めた農業の取り組みと共に、釣り客にも、マナーを守って自然と共生する魚釣りを楽しんでもらいたい。馬瀬川周辺に公衆トイレを整備し、指定場所以外でのキャンプ、バーベキューは禁止するなど、人にも魚にも気持ちよい川づくりに取り組んでいます。
美しい農村景観を守るために
馬瀬に誇りを持って住み続けたくなる村づくりは、美しい景観をつくっていくことです。道路を覆って日が差さないヒノキ林を間伐して、森に隙間をつくってやることで、冬には雪解けも早くなり、樹間から馬瀬川の風景が眺められるようになっています。荒れた農村風景にしないため「草刈コンテスト」を行って、美しい集落を維持しています。こうした取り組みが、「日本で最も美しい村」として認められました。
ホテルが取り組む地産地消
美輝の里では、丹精込めて棚田で栽培された「まぜひかり」を食事で提供しています。また売店でも販売していおり、馬瀬のお米はとても美味しいと評判が高く、お土産として買い求められています。食事やお土産だけでなく、春の田植え体験、秋の稲刈り体験を行っており、馬瀬の暮らしに触れることができます。また温泉を湧かすのには、ペレットボイラーを使い、下呂市内から出た木くずを市内のペレット工場で、固形燃料にし、燃料の地産地消によって、年間約400トンのCO2削減に貢献しています。
人々の暮らし
川漁師・鮎取り隊 女性農業グループ Iターン移住者
馬瀬川の子どもたちは、川漁師に憧れ、馬瀬川で遊んで育ちます。 鮎漁を嬉しそうに語る笑顔は、幸せそのもの。
ここには、馬瀬川を通して大人になる、素直でポジティブなエネルギーがあります。
初秋の馬瀬川で、落ち鮎をかがり火と松明で網に追い込む馬瀬川火ぶり漁(写真左上)では、夕闇の川に潜り、
鮎を追う勇壮な姿を見ることができます。
自称「日本一小さな道の駅」道の駅馬瀬美輝の里の直売所を運営するのは、女性グループ「さんまぜ工房」の皆さん。 馬瀬の味を伝えるため、商品開発に取り組んで生まれた郷土の味覚、朴葉すしやねずしの販売は、予約がすぐ埋まる人気商品。定番のお土産も手作り商品が並んでいます。
馬瀬の自然と人の素晴らしさが忘れられず、岐阜市からⅠターンで移住しました。
古民家を手入れして、馬瀬ライフを楽しんでいます。火ぶり隊の川漁師仲間にも入れてもらいましたが、さすが、子どもの頃から馬瀬川で遊んだ地元っ子にはかないません。でも、火ぶり漁の鮎講座や紙芝居で、都会から来た人たちに、馬瀬鮎と自然を守る人々の思いを伝えていきたいと頑張っています。
外国人に日本の田舎を見てもらいたくて
鮎釣り客で賑わった馬瀬には、山村ながら開放的な雰囲気があります。外国人バックパッカーが村を歩き、沢のぼりや森林冒険プログラム「森のニンジャ」を楽しんでいます。大人も外国人も童心に返ります。
南飛騨馬瀬川温泉「美輝の里」
つるつる美肌のアルカリ性単純温泉を15種類のお風呂で楽しめる温泉施設「南飛騨馬瀬川温泉美輝の里・ホテル美輝」。高台に位置する露天風呂は、夜には満天の星空が広がります。早朝の露天風呂は、馬瀬川から立ち上る川霧が山あいの集落を包んでいく様子が見えて幻想的です。
つるつる美肌のアルカリ性単純温泉を15種類のお風呂で楽しめる日帰り温泉施設「南飛騨馬瀬川温泉美輝の里・スパー美輝」は飛騨最大級のお風呂が自慢です。
以前、馬瀬を訪ねた折に聞いたのですが、昔から飛騨では「小坂おんなに馬瀬おとこ」と言う言葉があるそうです。
是非、温かい馬瀬の人々と触れ合い自然の空気に癒されてみて下さい。
協力(敬称略)
南飛騨馬瀬川観光協会 岐阜県下呂市馬瀬西村1508-1TEL 0576-47-2841/FAX 0576-47-2333
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使