卵巣予備能を参考に治療工夫…その①
とくおかレディースクリニック院長 徳岡晋先生のお話
『i-wish ママになりたい 40歳からの不妊治療』より
40歳からの不妊治療といっても、一概に年齢では測れないし、個人差のある卵巣予備能。 AMH値で得た卵巣予備能を参考に、それ ぞれの治療を、スピードアップして 診療していくのがポイント。
とくおかレディースクリニック院長
徳岡晋先生
卵の変化を食い止める特効薬はない
<女性の年齢が上がるにつれて妊娠率が下がってくるのはなぜでしょう?>
その原因は、単刀直入に言ってしまえば卵巣に蓄えられている原始卵胞の減少によるものです。また、残されている卵にも質の低下が起きてくるからです。では、どうして質が低下するのか?ということになりますが、その理由の1つとして、卵子の減数分裂がうまくいかず染色体異常を起こすことが考えられています。卵子が染色体異常を持っていれば、受精しない、受精しても分割しない、分割しても着床しないことにつながります。
そのようなことから、高年齢あるいは加齢とともに妊娠率は減ってきます。
また、着床して妊娠まで進んでも、流産することも増え、流産率が上がってきます。
このような原始卵胞の減少と卵子の質の低下が現れてくるのが、35歳ころからです。
<卵胞数、卵子の質的な低下に対処する方法はあるのでしょうか? >
加齢、高年齢に伴う卵の変化を食い止める特効薬はありません。 最近では、多くのクリニックでもいろいろ考えて少しでも質のよい卵子を得るために漢方を用いたり、卵巣の血流を増やすための温熱療法などを取り入れたりすることもあります。当院でも卵巣の機能が落ちている方、卵子が採れにくい方には漢方を処方することはよくありますし、リフレクソロジーや骨盤エクササイズを取り入れてもいます。ただ、こうした補助的なことで、40歳以上の方でも卵子がたくさん採れるようになるとか、妊娠率が著しく上がるということは、まずありません。
原始卵胞の数を増やしたり、卵子の質の低下を防ぐことは不可能なのです。
時間との勝負 まず受精卵を確保
<では、治療の鍵を握るのは何でしょう?>
年齢が高くなってから治療を始める場合は、診療のスピードをあげることが大切です。35歳以下で治療を始めた方と同じようにタイミングからスタートしてステップアップをするという方法はお勧めできません。
ご自身の状態や治療方法をご理解いただけるなら、なるべく早めに体外受精に進んで、まず受精卵を確保することが重要になってきます。
仮にピックアップ障害があった場合、体外受精以外で受精することはありません。それを知らずに何周期もタイミングや人工授精を行なっていたら、それだけ妊娠のチャンスを逃すことになります。時間が経てば経つほど、卵子の数は少なくなり、質は悪くなってきますから、早めに体外受精をすることが望ましいわけです。
<体外受精の必要性については、どのように伝えていますか?>
勉強会で説明をしたり、体外受精コーディネーターから話をし、早めに治療を進める必要性をご理解いただけるようにしています。
診療中に医師と話す時間は限られますから、もう少し話が聞きたいという場合には、コーディネーターやカウンセラーから説明をします。そして「どうして、この治療が必要なのか」ということを、しっかり伝えていきます。治療の必要性を理解しないままでは、なかなか先に進むことはできませんからね。
どんな治療を望んでいるか… 大事な夫婦の意思
<説明を聞いた後、体外受精に進まれる方は多いのでしょうか?>
そうですね。ただ、治療については患者さん自身の意思がとても大切です。採卵をして凍結をして、体外受精をするとなると、料金の負担は大きくなってきます。通院の回数も増えてきます。それでも積極的に治療をしたいのか、そこまではしなくていいと考えるのか。治療に対する考え方はご夫婦ごとに違います。ここを捉え違えてしまうと、治療でのスムーズさを欠き、診療が進まなくなってしまうこともありますから、患者さんの考えをしっかり理解するよう注意しています。
ただ、年齢が高くなると、どうしても結果は出にくくなります。なかには体外受精をすれば妊娠できると思っている方がいますが、そうではありません。年齢を重ねれば重ねるほど体外受精の妊娠率は低くなります。若い方と同じ確率ではありません。さらに流産率は高くなります。妊娠、出産をするのは難しいことだと、治療の最初の段階で知っていただくことも必要だと思います。