卵巣予備能を参考に治療工夫…その②
とくおかレディースクリニック院長 徳岡晋先生のお話
『i-wish ママになりたい 40歳からの不妊治療』より
40歳からの不妊治療といっても、一概に年齢では測れないし、個人差のある卵巣予備能。 AMH値で得た卵巣予備能を参考に、それぞれの治療を、スピードアップして診療していくのがポイント。
実年齢よりも 卵巣年齢が重要
<厳しい側面も理解した上で治療にのぞむということですね>
はい、ただ年齢は高くても卵巣年齢は比較的若い方がいます。逆に30代でも卵巣年齢を知る目安になるAMHの値が低い方もいます。
ですから、年齢で区切るのではなく卵巣年齢を知ることが大切と言えます。卵巣年齢によって治療の方法、スピードが決まると言えるでしょう。そのため当院では最初にAMHの値を測定します。自費検査になるので強制はしませんが、「不妊治療に臨むためには大変重要な検査です」とお勧めしています。
このように実年齢だけでは判断できませんが、年齢とともに妊娠が難しくなるのは事実です。卵子の数や質だけでなく、子宮筋腫などの疾患も増えますし、妊娠中の高血圧あるいは早産といった、さまざまなリスクが増えてきますからね。
周期によって異なる卵胞の成長…良い周期にかける
<年齢ゆえの治療ポイントはありますか?>
卵胞は毎周期同じように育ってくることはなく、いい周期も良くない周期もあります。その良くない周期のときに深追いをしない。それよりも何周期かに1回、良い周期が来ることがあるので、そのときに採卵する。このほうが結果に結びつきやすいです。
年齢が高くなってくると、卵巣刺激の注射をしても、なかなか成熟卵の数は増えません。ですから刺激をよりマイルドにして、採卵の回数を増やして、ここから受精卵を得て凍結しておけば、場合によっては2個までですが、複数個移植で妊娠を目指すことができますからね。
FSHの値が示す 周期の良し悪し
<周期の良し悪しを判断する基準はなんでしょう?>
胞状卵胞の数とFSHの値で判断します。まず月経周期の1~3日目くらいに卵胞が見えるかどうかをエコーで確認し、FSHの値を測定します。ある程度の年齢になるとAMHは低いままなので、毎周期測っても、あまり意味はありません。変化するのはFSHの値で、高い場合は待っていてもあまり良い卵は育たないことが多くあります。刺激をしても採卵できるのは1~3個、採卵できたとしても分割して受精までたどり着ける卵は1個もないときもあります。
ですからFSH値が高い場合は深追いせずに次に備えたほうがいいと思います。何周期かに1回めぐってくる良い周期に採卵をして凍結しておくのです。