製造工程FMEA(P-FMEA)
1.工程FMEAの目的
工程FMEAは、製造工程における工程設計の指示した内容が守られない行為や物理的現象(故障モード)が、製造工程、および、市場でどんな影響を及ぼすのか?を評価します。
つまり工程の設計(QC工程図)の 信頼性が十分かどうかを評価する手法です。ここでいう、QC工程図には各工程における機械や人、作業手順など、良品の作り込み手順、方法が規定されているものを指します。単なる品質特性の確認・検査など結果に対する判定方法を指示したものはQC工程図とは言いません。
工程の信頼性とは工程指示(QC工程図による作り込み手順)が守られること、つまり工程を、インプット⇒作り込みの処理⇒アウトプットの流れが正常なこと、流れを阻害する要素を取り除くこと、また阻害されることを防止するための予防処置(ポカヨケなど)が十分講じられていることを指します。
信頼性が十分かどうかの評価は、工程の故障モードについて
影響度(S)・・・製品・工程・顧客にどのような影響を与えるか?
発生度(O)・・・故障モードの起こりにくい対策が講じられているか?
検知度(D)・・・工程設計期間中、および工程で生産中に検知可能かどうか?
について、現行の工程の対策(予防処置)が実施されていることを前提とした上でその対策が十分かどうかを評価します。
2.工程FMEAの実施手順
以下に工程FMEAの実施フローを示します。
このフローは、従来からの工程設計フローに、FMEAを組み込んだ場合の手順を示しています。
具体設計プロセスにおいては、新規・アレンジ設計部分に対して、起こしてはならない故障・事故の対策を行います。
過去ノウハウ集・・・過去事例対策(故障モード抽出表参照)
ヒューマンエラー予防策・・・作業分析、ポカヨケ
リスクアセスメント・・・予想される故障、事故の評価実施
FTA・・・故障、事故の要因の洗い出し
本質対策・・・構造設計へのフィードバック
セルフFMEAプロセスでは、変更点・新規点に着目し、想定外の故障抽出と対策を行います。
故障モードの抽出・・・故障モード一覧表、故障モード抽出表作成
対策方法の検討・・・論理的裏付け、実験により妥当性確認
セルフFMEA・・・結果を基に評価シート作成(FMEAレビューのインプット資料として使用)
FMEAレビューメンバーの選定・・・技術、営業、工場、保守部門など
レビュー実施・・・信頼性、安全性設計の妥当性確認、
抜け漏れ等発見された場合は、設計へフィードバックを行い、レビューシート作成し、企業として
量産化可否判断を行う
製造工程FMEAにおける、故障モードは以下の考え方を適用します。
工程設計のアウトプットはQC工程図で規定された管理すべき5Mの要素を表しています。工程FMEAにおける故障モードとは、工程設計による5Mの規定に違反することを指します。
3.評価法の種類
FMEAの評価方法は、一般的にはリスク優先指数(RPN)が広く採用採用されています。
危険優先度指数(RPN)による相対評価法
「影響度(S)」という指標は故障モード発生した場合の被害の大きさです。 例えば、影響が全くない場合は1、人命に影響がある場合は10とします。「頻度(O)」は故障モードの起こりやすさで、これは過去の事例から類推 します。事実上起こりえない場合1、故障モードが発生することが常態に なっている場合を10とします。「検知度(D)」は、設計FMEAの場合は設計期間中に故障モードを発見できるかどうかという指標である。例えば、あるボルトの締め忘れという故障モードを考えた場合各種の工程でこのボルトを確認することになっておらず、さらに 試験中に折れても全く分からないという場合、検出可能性は全くないことに なります。(10点)。
危険優先指数(RPN)とは、上記のS,O,Dの3つの指標の評価点を全て掛け 合わせたものです。10段階で評価すれば、1000点が最高点となり、1点が 最低点です。全ての故障モードに対して対策をすることができれば理想的ではあるが、点数に応じてランク付けし、高いものから対策を打つと言うのが相対評価法の考え方です。
対策可能性判断による簡易評価法
当研究所が推奨する簡易評価法では、対策が十分かどうかが合否の基礎となります。対策の手段があるかどうか?を基準にします。 簡易評価法では、相対評価法ではなく絶対評価法を用い、リスクを定量化することでA,B,Cランクに分類します。
Aランク 信頼性・安全性は不十分でリコールの対象、開発中であれば市場に出すことはできない Bランク 条件付きで許容されるリスクレベル 、例えば、「危険」など注意表示を行った製品
Cランク 無条件で許容される軽微なリスクレベル
ランク分けの詳細は別途解説書で詳しく説明します。
問題の本質は、工程設計、信頼性設計が事前に十分に行われているかどうかです。事前に工程設計が十分に行われているなら、FMEAによる評価は確認レベルで済み、それほど時間を費やす必要はないのです。