REPAIR FILE #1
普段しているリペアの一部のご紹介です。
今回は掲載許可をいただけましたので、写真も撮らせていただき、簡単にご説明させていただきたいと思います。今回はピックアップを除く、電装系の総交換です。私のもっとも好きな内容です。
交換前、コントロールノブを取った状態です。ジャズベースはこの金属プレート部分に電装系パーツが収まっているのでもっとも作業が手軽です。全面ピックガードではなく、デザインのアクセントにもなっているこのプレート、まさに機能美、だと思います。
交換前の中身はこんな感じです。プレート左上、ポットの中間あたりになんだか平仮名の「く」みたいな黒いヘタウマ風な文字が見えますが、写真のバグではなく、本当に書かれています。なにかのメッセージでしょうか。こっちが裏だ、的なメモのような気もします。メモと思われるものが油性マジック、ダイナミックです。U.S.A.は配線処理もダイナミックです。
このダイナミックさに関して、日本製と海外製の超えることのできない出音の違い、という長年の思いがあるのですが、そこに触れると長くなりますのでまたの機会に記事にしたいと思います。
プレートからポット、ジャックを外した状態です。よりダイナミックになりました。
写真下、キャビティ内にバーコードとなんらかの数字の配列が記載されているシールが貼ってあり、プライバシー保護のため番号が見えないように黒く画像処理しました。黒い長方形ふたつは私の処理です。
新しいパーツをプレートにつけます。ポットは CTS 製、ジャックは switchcraft 製です。
ポットのカーブはボリュームが B、トーンは A にしています。
ボリュームとなるポットはプレートにつける前に下処理をしています。つるっとした裏面、丸々した方を下に見て左側の足を曲げてポットの背中につけています。隙間なくつくように曲げる作業はなかなか楽しいもので、ラジオペンチの精度がよければよいほどやりやすい作業です。今気づきましたが、肝心の説明箇所が完全に見えない方から撮ってしまっています、あぁー。
この後、この部分をはんだしますが、このポットの足の処理をしないとボリュームがゼロになりません。
switchcraft のモノジャックは通常の #11 ではなく品番に "C" のつく #C11、MIL.spec です。端子も簡単に曲げることができない強靭さを持つジャックです。値段は #11の 3倍ですが、耐久性はもちろん、金属の質量の影響か、音質面にもいい効果があると思っておりますので私はコレをおすすめさせていただいております。
完成です、途中経過なし (笑)
今回は配線材に USA Cloth Wire / White & Black を、コンデンサーは Sprague Orange Drop 0.047uf 400V を使用しています。ハンダは Kester #44です。定番ですがノイズ対策配線も追加しています。これもまた見えない角度...。おぉぉ。
内部パーツの総交換はやはり楽しいです。頻繁にやるものでもないと思いますが、弦が錆びたり、フレットがくすんだりと湿度や汗の影響は普段見えない部分でも長年の蓄積で金属パーツ全般、キャビティ内部にも及びます。エレクトリックの楽器はこのポットやジャックを通って最終的に出力されます。その出口のパーツ類が湿度の影響でくもっていたりすると当然ながら出音に良い影響はありません。枯れ、とは別の影響だと思っています。
長期間放置してしまった楽器、久々に出したら全盛期の音と印象が違うなー、なんか寝ぼけてんなーと感じた場合や中古でお買い上げの楽器などに、比較的わかりやすい範囲で出音が変わるリペアなので、昔からおすすめさせていただいております。基本的にパーツが揃えば即日納品が可能なリペアです。出音にお困りの方、興味をひかれた方はどうぞお気軽にお問い合わせください。
目安になるかわかりませんが、自分の手持ちで製造から 17年のギターがあります。
私は 17年間で 3回、この内部パーツ総交換をしています。音が生き返る、というか良い意味でクリアーになるので、頻繁ではありませんが気になってきたら交換するようにしています。ピックアップ交換よりもリーズナブルです。経験上、常時弾いて頻繁な通電があれば問題ないのですが、長年放置してしまった後、電装だけの影響ではない場合もありますが、明らかに寝ぼけた音になってしまうと思います。
注意点があります。
基本、電装系のパーツ総交換は CTS ポット、switchcraft ジャック、インチ規格のパーツを使用しております。そのため、現在インチ規格でないものはコントロールのノブ類が合わず別途、インチ規格のノブが必要になります。
テレキャスターやジャズベースの金属プレート穴、ストラトキャスターなどのピックガード穴、レスポールなどのボディのポットの穴もインチ規格でないものは穴の径を少し広げる加工が必要な場合があります。
最後までおつきあいありがとうございました。
油断していました。前回のブログ時で 4ヶ月たっておりました。
みなさま、本当にいつもありがとうございます。