不思議の国のアリス
今年は不思議の国のアリス出版150年ということで、数々のイベントが催され、関連商品も出ているようですね。mark by mark jacobsコレクションが出るようですし、先日ロンドンに行った折にはテートモダンのミュージアムショップにヴィヴィアンウエストウッド装幀による不思議の国のアリスも販売されておりました。
当店でもアリス本は幾つもあるので紹介させてください。
まずはじめにご紹介したいのは日本で満を持して今年発売となった高山宏訳、佐々木マキ絵の不思議の国アリスです。
「stand」にも以前感想を書いたのですが、読んでみるとこのお話が、ひとりの少女にせがまれて語られた、ただそれだけの幸福な物語なのだと素直に感じることができてとても良かったです。
今までのアリスはどうしてもアリスが各分野に与えた多大な影響に目配せして訳されている感触があった気がしていたので(特にシュルレアリスム周辺への)その点ではこの物語の純粋さに心を打たれました。
何より佐々木マキさんの描くアリスの可愛らしいこと!挿絵の人物を好きになれたら、それだけでもう特別な本になりますよね。
次はトーベ・ヤンソン絵 村山由佳訳の不思議の国のアリスです。
「今まで世に出たどの挿絵と比べても、ヤンソン版アリスのそれは、群を抜いて寂しげで昏い。ひとり地下の国を旅するアリスの、魂の風景そのものに思えるそれらの絵は、見る者の胸にまるで美しい悪夢のような深い印象を残す」
と村山さんがあとがきで書かれているように、幽玄な雰囲気のヤンソンの挿絵ですね。
村山さんの訳は口語体二人称を軸とした語りかけの文体で、お話を「聞いている」意識を強く持たせてくれます。
そしてまどみちおさん、司修さんによる「ふしぎの国のアリス」
まどみちおさんが低学年用に優しく書き改めたもので、内容がややコンパクトになり、わかりやすくなっているのが特徴でしょうか。
司修さんは作品ごとに全く違った技法をいつもされますが、この絵本では滲みを利用した夢幻的で、雰囲気のある絵になっていますね。
まどみちおさんの、文頭に置かれた「よむまえに」を少し引用します。 「‥‥宇宙と同じくらいに広くて、珍しい不思議なことが渦巻いている世界がもう一つあるのを知っていますか。それは人間の心です。その人間の心が作るお話です。試しにイギリスのキャロルおじさんが作ったこのお話を読んでみてください。一口飲むとするするするっと背が伸びていくジュース。反対に一口囓るとずむずむずむっと背が縮み出すキャンディー。とにかくもうびっくりすることばかりですよ」
お次はヘレン・オクセンバリーによるアリスです。
赤ちゃん絵本などでも有名なヘレン・オクセンバリー。
アリスがノースリーブを着ていて暗い雰囲気が無く、楽しそうにしているのが、他のアリスとは違いますね。
ヘレン・オクセンバリーはジョン・バーニンガムの奥様でもあります。ここまで著名な絵本作家の夫妻というのもすごいですよね。バーニンガムはアリス描いていないですよね。バーニンガムが描いたらなんだかとぼけた感じのアリスになりそうで面白そうですけれど。
最後はこちら「ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND A CLASSIC ILLUSTRATED EDITION」です。
その名の通りに、アーサー・ラッカム、ジョン・テニエルを始めとして、29人(+unknown illustratorsとして数点)もの画家(20世紀前半の画家たちです)のアリスの挿絵が物語とともに掲載されております。
この本からお気に入りのアリスの挿絵を見つけてみても良さそうですね。
まだ読んだことのない方は是非この機会に、読んだことのある方も、再読してみては如何でしょうか?