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プラセボ効果

2021.01.19 14:45

子どもの頃の私は乗りものに弱くて、バスや車でちょいちょい酔って具合が悪くなっていました。

小学校のバス旅行などは、楽しみでもあり、酔わないか不安もあり。

当時は値段の張った酔い止めの薬を飲ませてもらって、出かけたりしていました。

あるとき母が、同級生のお母さんから、

「高い酔い止めの薬じゃなくていいのよ。胃薬飲ませとけば。プラセボ効果ってあるでしょう?」

と聴いてきたらしいのです。

プラセボ(プラシーボ)効果とは、薬効成分が入っていないプラセボ=偽薬でも、薬だと思い込んで飲むと実際に効いてしまう人がいるというものです。

その割合は3人に1人程度、実験によってはもっと高い比率で出ることもあります。


母は元々子ども騙し的なことを言うのが嫌いな人ですし、嘘をつくのも忍びなかったのでしょう。

その経緯を小学生の私にちゃんと説明した上で、

「でもね、これは理に適っているのよ。消化が悪くてムカムカすると、車に酔いやすい。胃薬でお腹がスッキリしとけば、車に酔わないからね。」

と、愛あるまじないを私にかけたのです。

お陰で私は、胃薬を飲めば車に酔わない子になりました。

たぶん市販の胃薬なら、酔い止め1カプセル分で1瓶買えるくらいだったでしょう。


脳科学者 中野信子さんの本に、こんな話がありました。

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精神科医のリー・パークとリノ・コヴィが行った実験では、医師が「これはただの砂糖の錠剤なんだけど、あなたのような症状の人に1回1錠、1日3回飲んでもらうと、1週間ほどで症状が改善されることが多いです」などといってプラセボ薬を与えると、種明かしをしたあとにもかかわらず、やはり同様の比率(3割程度)で「薬効」が表れるという結果も明らかになっています。

患者側も、その薬がただの砂糖であると知っているのに、効果が出る。これは、医師が患者に与える「希望の言葉」が想像以上に大きい影響を持っている、ということの証左でもあります。

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有効な成分が入っているかいないかより、脳の働きと自然治癒力が勝ってしまう場合があるということですね。

治療に不安や不信感を抱いたままでは薬もよく効かないでしょう。

何の作用もないはずのプラセボで、副作用が出てしまう人もいます。

患者さんと治療家、治ろうとする人と見守る人の想いが揃うことの大切さを感じます。

ケアをしていると、「治ろう」「これで元気になるんだ」という気持ちで受けておられる方は、変化がとても早いです。


治療は根拠を持って、愛あるおまじないをかけながら…。

患者の立場とすれば、名医や薬の助けを貰いながら、不具合を治していくのはあくまで自分自身だということを忘れずにいたいですね。