フィリピン地方都市郊外の住宅事情
フィリピンは貧富の格差が大きい国です。
マニラやセブ市など大都市圏には立派なビルが林立し、一見の豊かさを誇っています。
私が頻繁に訪問するネグロス島のデュマゲテ市は小さな地方都市ですが、街中は高層ビルこそないものの、しっかりした作りのコンクリート製ビルが並んでいます。
しかし、市内から10km以上離れると、いかにも貧しそうな家々が並んでいます。農業と漁業だけで生活している人達が住んでいる家だと想像します。これらの貧相な家並みの所々に、周辺の風景に溶け込まないと思われるような立派なコンクリート製の家もあります。地元の人に聞くと、「あそこは子供さんが海外に出稼ぎに行き、成功して帰ってきた家だ」とのことです。
この郊外エリアの海岸沿いには観光客向けのリゾートホテルが点在していますが、その周辺にはいかにも貧しそうな家屋が並んでいます。これらの家の多くはバンブーハウスと呼ばれる竹製の家です。
私の関与する英語学校でも、「学校で働く地方出身のスタッフ用に敷地の中にバンブーハウスを建ててほしい」という要望がありました。業者に頼めば10万円程度で4~5人が共同生活できる10畳程度の家ができる、とのことでした。一時は真剣に検討しましたが、結局学校施設の空いている部屋の一部をスタッフの寮にしようといることで、この計画は実現しませんでした。
ある時、私が郊外のリゾートホテルに滞在している時、近くで地引網漁がおこなわれました。小さな数隻の漁船が網をめぐらし、海岸から網を引く準備をしていました。すると近所のバンブーハウスの住民と思われる人たち数十人が現れ、網を引き始めました。
珍しい光景なので眺めていると、結局ドラム缶半分程度の小魚が水揚げされていました。魚は網を引いた住民を含む全ての参加者がレジ袋に適量を入れて持って帰り、漁は終了しました。
この一連の地引網漁の間、主催者と思われる人は確認できず、また参加者間でお金のやり取りをする様子もありませんでした。
たぶんこの漁は地域住民の助け合いのための活動で、このようにして住民同士が協力して日々の暮らしを助け合っているのだと想像しました。