私が参加したのは,広瀬先生の黒人霊歌3曲とバーバーショップ2曲の方。学生自体も黒人霊歌は歌ったことがあったが,「奴隷労働に苦しむ黒人たちがキリスト教に救いを求めて,自分たちのリズムで作った歌」という程度の認識だった。合唱の調査を進める中で北村崇朗先生の「ニグロ・カピリチュアル」を読み,いかに浅はかな理解に甘んじていたかを知り,深く反省した。特に「Were You There?」はロジェ・ワーグナーのLPの第1曲で耳にも親しかったのだけど,無知のせいでなんの共感も持たずにせずに歌ったことを心底恥じた。こんなに胸揺すぶられる曲だとは,当時は思いもせず,ちょっと音程の難しいところを正しく歌うことにのみ注力していた。
今回,広瀬先生の選ばれた曲に「Were You There?」があり,しかも編曲も同じBurleighのものであり,贖罪の意味もこめて参加することにした。なお,浅井先生は多田武彦から5曲選ばれた。
さて,黒人霊歌のあと2曲「Soon Ah Will Be Done」「Ride The Chariot」も歌ったことがあり,譜面を眺めると歌う分にはなんとかなりそうだった(音感と発声技術はほとんどゼロベースだが,足を引っ張ることはなさそう)。しかし,バーバーショップの2曲「No More Sorrow」「When I Lift Up My Head」は大変だった。バーバーショップは歌ったことがなく,リズムと和声感がつかめない。個人参加なので合わせることもできず,MuseScoreで楽譜を入力しMIDI音源を作って何とか音をとった。あとはYoutubeに幾つか演奏があるので,それを聴きながら歌った。
広瀬先生の指導はさすがで,まず指揮が分かりやすい。何を意図されているかはっきりしている。指示も的確て,音楽の形を作りまずいところを修正していかれる。説明の中で「Were You There?」は黒人霊歌の名曲中の名曲,と言われ,また「Soon Ah Will Be Done」の遅いバージョンにも言及されたのさすがである(当たり前か)。バーバーショップの練習は,各パートの通常のTTBBパートとの違いを説明され,「ベースの声帯の方がファルセットに向いているので,チャレンジしたら」とも言われたが,とても無理。。また,ベースの位置が客席からもて右端ではなく,通常のバリトンの位置にあるので,なにか落ち着かない。。練習は大ホールで行ったのだけど,みなさん楽楽とうたいこなされているのにまたまたビックリ。関学グリーの現役100名とコール・セコインデなど先生の指導を受けている合唱団が多かったので,慣れておられるのだろうけど,こういう方々に引っ張られてとことこついて歌った。途中,シューティング・スタイルというらしいのだけど,パート毎ではなくカルテットをばらばらと全体に配置する歌い方にもチャレンジ。これも面白そうだけど,こちらの能力では所属しているカルテットではなく全体を聴きながら歌うのが精一杯。結局,シューティング・スタイルでは歌わないことになって一安心。
練習後,浅井先生の組と聞き合わせ(交換会)。こちらは450人いるので,さすがにハモらすのは無理で,演奏としては厳しいところ。広瀬先生の組がどうだったのかは,自分たちでは分からないけれど,個人的には楽しく歌えた。「Were You There?」も深い思いで歌うことができた。
本番も,同様に楽しめたのだけど,「時間が余っている」ということで司会者からアンコールを所望され,結局,「When I Lift Up My Head」をシューティング・スタイルで歌うことになった。こちらは必死だったけど,客席では違いがあっただろうか??