岩波文庫の「どちりな きりしたん」によれば,この本は1600年に長崎で刊行され,キリシタンの教義の意味。信徒になるための必読書で当時最も広く読まれた。歌詞の日本語部分には明らかにこの本以外から取られた字句が散見され,まさに当時のキリシタンが理解していた教義として構成されているようだ。一方,歌詞にはラテン語やギリシヤ語の部分があり(Tantum ergoやKyrie eleisonなど),日本語歌詞と対比される。恐らく,宣教師たちの持つ「キリスト教」と,日本人キリシタンが受け止めていた,本来のキリスト教とは微妙に異なる「キリシタンの教え」とが,共鳴したり不協和したりする様を表現したかったのではないか。終曲がAve verum corpus (幸いなるかな,誠の御体)と,イエスの受難を歌うのも象徴的で,キリシタンたちの運命をイエスに重ねているのだろう。