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The Closet of my Life  離婚は「失敗」じゃない。

2021.02.14 10:30

          ☆







私の心のクローゼットにしまっていたような、小さなお話。



今回は、子供の頃の思い出と、離婚について私が思うことの2つのお話。







第4話  きれいなお金





確か私が小学5年生くらいの頃、私の祖母(母方の)が、ママが銀座で働いていることを知った。



きっかけは確か、祖母がママの家を訪れたときに、ソファーの隙間だかに、



ホステス姿のママの写真が挟まっていて、それを祖母が見つけたのだ。



それまでママは、銀座で働いていることを祖母には秘密にしていた。



それは銀座での仕事に後ろめたさを感じていたという理由ではなく、



昔気質な祖母には、水商売は絶対に賛同されないというのを、薄々確信していたのだと思う。





ママの確信通り、その写真が見つかったあと、二人はものすごい口論に発展した。



その口論の流れで最終的に祖母は、「そんな汚いお金を稼いで!!」というようなことを言っていた。



祖母は昔の田舎の人なので、水商売に理解がなかったのは、まだ分かるのだけれど、



「汚いお金」というのは、ものすごい言葉の威力があったのを、子供ながらに覚えている。





どちらも納得しないまま口論は終わり、翌朝私が誰よりも早く起きると、



テーブルの上に、ママから祖母に宛てた封筒が置かれていた。



その封筒にはママの字で「きれいなお金」と書かれていた。



中を覗くとそれは、昨日の口論の続きを促すような、



恨みがましい手紙などではなく、祖母へ宛てたお金だった。



これは、ママが毎月祖母に渡している仕送りで、ママは祖母がいらないと言っても、



いつも「いいから」とぶっきらぼうに言って、会うたびに必ずお金を渡していた。



そして、この日もママは忘れずに、いつもときっかり同じ金額を祖母に渡したのだった。







器の小さい私が、自分のしている仕事に対して「汚い」などと言われたら、



仕送りはもちろん打ち切るし、一生分の文章力とエネルギーを使って、



どれだけ相手が間違っているかということを、何枚にもわたって手紙に書き綴ると思うのだけれど、



ママはそんなことをせずに、ただお金の入った封筒に、「きれいなお金」とだけ書いて祖母に宛てていた。



多分その「きれいなお金」という6文字が、ママの唯一の主張であり、同時に反抗であったのではないかと思う。





その後もママは、仕送りを送ることを辞めなかった。



けれどそれは、意地などからではなく、愛からであったと思う。



いろいろあった二人だし、理解し合えなかったことも多かったけれど、



なんだかんだ言って、ママは祖母のことを愛していたから。







そして、今思い返しても、ママのお金はとても「きれいなお金」だったと思う。











第5話  離婚は「失敗」じゃない。





世間では、離婚をするとバツイチとか言われるし、



いまだに離婚に対してネガティブなイメージを持っている人が多いように感じる。



けれど私は、離婚というのは、普通に前向きな選択だと思っている。





というのも私は、10歳の頃に両親が離婚していて、



その後、二人の人生がどう展開していったのかをこの目で見ているからだ。



二人とも離婚してからの方が人生が好転していたし、



とくにママに関しては、高校デビューならぬ、離婚デビューというくらい、



離婚後の方が、ずっとママらしい人生を歩んでいたので、



離婚って全然悪いことじゃないんだな、と思った。



というかむしろ、自分の人生を歩むために、離婚が必要なこともあるんだな、と思った。







多分きっと、結婚というのは、旅のようなものなのだろう。



旅をしていると、道中で出会った人と意気投合して、二人旅になることがある。



二人でいろんな景色を見たり、食事を共にしたり、



笑ったり、喧嘩したり、二人にしかできない経験をする。



そしてお互い、目的地が変わったり、単に別れるタイミングが来たら、



「楽しかったよ、ありがとう。またどこかで会おうね」と言って別れる。



結婚というのは、それと同じようなものなのではないかと思う。







二人旅が解消したからと言って、それは「失敗」じゃない。







むしろいっときでも、二人でしかできない経験ができたのなら、



それはとても素晴らしいことだと思う。







これからもし、私が結婚して、また離婚するようなことがあったのなら、



最期に相手にこう言いたいと思う。











「楽しかったよ、ありがとう。また会おうね」