ジャスティン・ビーバー来日公演に見る、ロックTシャツ考現学
2016年の夏、絶対に見逃してはいけないライヴは何だったのか? 大絶賛だったレディオヘッド? アンダーワールド? ベック? いや、何を差し置いてもまず観ておくべきはジャスティン・ビーバーだった。
(Photo: Yoshika Horita)
ジャスティンなんて、ただのお騒がせアイドルじゃないの?と思っている人もいるに違いない。だが実際のところ、巨大なポップ産業の最先端を走る彼のライヴからは、「今」を象徴する様々なことが見えてくる。つまり、2016年に何が起こっているかを知りたければ、カニエ・ウェストやビヨンセの来日がまだまだ実現しそうもない日本では、ジャスティンのライヴは絶好の機会だったということ。
もちろん8月13日、14日に幕張メッセで開催された2日間の来日公演は即日ソールドアウト。そのプレミア・ライヴの初日を目撃した〈サイン・マガジン〉のクリエイティヴ・ディレクターの田中宗一郎が、同サイト編集長の小林祥晴を相手に、対談形式でその凄さを語り下ろす。
小林「しかし、たくさん買い込みましたね、ジャスティン・ビーバーのTシャツ」
田中「そりゃ買うよー」
小林「ライヴ当日だけで何万円も使ったそうじゃないですか」
田中「そりゃ使うよー。ホントなら、ライヴ前に原宿の〈モンキー・タイム〉と〈GR8〉でやってたポップアップ・ショップに寄って、後10万くらい使いたかった」
小林「それなりに自制が働いたわけですか」
田中「いや、みんな朝から整理券もらうのに並んでてさ。のこのこ昼過ぎに行ったら、『整理券がない人は16時からしか入店出来ません』って言われたから、諦めた」
小林「なるほど。ライヴのチケット買えなかった人たちがポップアップ・ショップに押し寄せて、マーチャンを買い占めたと」
田中「違うよ。俺、あの炎天下の中、一時間以上並んで、会場の物販買ったじゃん」
小林「物販買う人たちの長蛇の列の写真、わざわざtwitterに上げてましたよね」
田中「したら、周りの子たち、ポップアップ・ショップで買ったマーチャンもうしっかり着込んでたり、パンパンになったポップアップ・ショップの袋を持って並んでるんだよ」
小林「そうか、それぞれ売ってるものが違ったんでしたっけ」
田中「大して違わないんだけどさ」
小林「にしても、わざわざ両方並ぶ根性はすごいなー」
田中「今、ヒップホップとか、ポップ・アーティストのマーチャン競争ってすごいでしょ。音源自体が売れないから」
小林「カニエ・ウェストを筆頭に、チャンス・ザ・ラッパー、ウィークエンド、グッチ・メインとかもガンガンやってるし。まあ、必然と言えば、必然ですよね」
田中「勿論、そこに対するネガティヴな見方っていうのもあるにはあるじゃん。ファーザー・ジョン・ミスティがカニエのマーチャンのパロディを作ったりとか。見た、あれ?」
小林「見ました。でも、デザインも隙がありまくりだし、あのやり方じゃ、むしろ彼の方がかっこ悪く映るっていう」
田中「なんだかんだ言って、カニエのマーチャンも欲しかった。でも、全世界21都市でポップアップ・ショップやったんだけど、日本はナシっていう」
小林「ジャスティン・ビーバーがわざわざ、『日本でもポップアップ・ショップやればいいのに』ってカニエに引用ツイートしてましたよね」
田中「とにかく最新ツアーのTシャツを着こんでる連中ばっかでさ。良くも悪くも、2016年的な光景だと思ったな」
小林「人のこと言えないじゃないですか」
田中「でも、残酷なのがさ、たまに前回のビリーヴ・ツアーのTシャツをわざわざ引っ張り出して着てる人とかもいるわけ。でも、もはやその子たちがすっごいダサく映るっていう」
小林「まあ、それって、自分の思い入れとか、思い出に会いに来てるっていう表明でもありますからね。フェスに去年とか一昨年のフェスTシャツ着てくるのと同じで」
田中「でも、ポップっていうのは、今を生きる、表層を楽しむっていうことだからさ。それに、ジャスティンのビリーヴ・ツアーのTシャツ着てる連中は、首にタオルをかけてたりとか、もう明らかに別のトライブなんですよ。旧態然としたアイドル・ファンっていうか」
小林「ファンのことを云々すると、また叩かれますよ」
田中「いやいや、ポップ・カルチャーっていうのは、エルヴィスやモッズの時代から、ファンダムのことを指すわけだからさ。でも、最新作の『パーパス』をリリースしてから、明らかにファン層が変わったっていう感じがしたな。そこは間違いない」
小林「実際、『パーパス』でティーン・アイドルから完全に脱皮して、アーティストとしての立ち位置を確立しましたからね。アルバムから先行リリースされて、キャリア初の英米1位を獲得した“What Do You Mean?”を初めて聴いた時は驚いたし」
Justin Bieber / What Do You Mean?
田中「いや、もうホント最高ですよ。トレンドがEDMからディープ・ハウスに移行したのをきっちり取り入れて、時計の音をサンプルしたスカスカのビートに乗せて、曲の半分近くがブレイク。つまんないJ-ROCKとか時代遅れのEDMとは真逆の、空間を生かしたプロダクション」
小林「日本でも誰かやればいいのに」
田中「で、とにかくあの美メロじゃん」
小林「しかも、あの『What do you mean?』っていうリフレインとか、ある意味、大発明みたいなもんですよね」
田中「今のポップとか、ヒップホップって、タイトルとリフレインがとにかくしっかりとコピー・ライティングされてるじゃん」
小林「英語がネイティヴじゃなくても、何を歌ってるのか、一発でわかるんですよね」
田中「そうそう。例えば、『What do you mean?』っていうラインだけで、歌のナレーターと、その受け手である恋人との関係性とか、ストーリーがもう一発で伝わっちゃうわけでしょ?」
小林「あ、これはリレーションシップの破綻とか、揺らぎについての曲なんだな、ってわかりますよね」
田中「で、ジャスティン・ビーバーのヴォーカリストとしての表現力がずば抜けてるわけじゃん」
小林「あの抑えたトーンがむしろエモーショナルに響くんですよね」
田中「あれ、カラオケで歌うと、ホント難しくてさ」
小林「歌うんだ?(笑)」
田中「日本人だと、叫んだり、歌い上げてばっかでしょ。表現の幅が狭すぎる。ホントとにかく理想的なポップ・ソングだと思うな。とにかく洗練されてる」
小林「まあ、ジャスティン本人は相変わらずお騒がせですけど」
田中「今回の来日前後もSNSで活躍しまくってたしね」
小林「揚げ句の果ては、アカウント削除しちゃいましたもんね。ライオネル・リッチーの娘で、ガールフレンドのソフィア・リッチーと一緒に来日してて、その写真をインスタに上げまくったもんだから、ヘイト・メンションがガンガン来ちゃって」
田中「おまけに、元ガールフレンドのセレーナ・ゴメスが『もしヘイトが手に負えないなら、ガールフレンドの写真の投稿をやめればいいでしょ(笑)』ってコメント欄に書いて、さらに火に油を注いだ挙句、スナップチャットで謝罪したっていう」
小林「で、病気が理由で歌手休業宣言をしたら、いや、実はあの一連の事件が理由なんじゃないか?って邪推されるっていう。他人事だから、やれやれって感じですけど、まあ、現代的な逸話ではありますよね」
田中「映画『ゴーストバスターズ』の主演女優レスリー・ジョーンズの件とかもそうだし、日本でのゲス極の件とかもそうだけど、トロール軍団のヘイト・メンション縦断爆撃ってホント地獄だよね」
小林「正義感に駆られたSNSポリスのサーチ&デストロイ地獄」
田中「レディオヘッドの“カーマ・ポリス”ねたと、ストゥージズねたを併せましたね」
小林「でも、あんな風にポップ・スターやセレブが常にゴシップ・ネタを供給し続けてくれるからこそ、海外では勿論のこと、ここ日本でもメガ・ポップスターにバズが集まるっていう効果もあるから、痛し痒しですけど」
田中「日本のセレブ・ゴシップ系サイトとかも、ジャスティンやテイラー・スウィフトがいるだけで、死ぬほど稼げるよね」
小林「〈SILLY〉もそういうのやればいいのに」
田中「てか、ライヴの話しなくていいの?」
小林「いや、むしろ、ライヴの内容よりも、その手の話の方が面白いし、だからこそ盛り上がった、っていうことじゃなく?」
田中「いやいや、ライヴ最高だったよ!」
小林「じゃあ、一曲目からガチ上がりですか?」
田中「いや、ところがさ、物販でTシャツ買ってたら、開演に間に合わなくてさ」
小林「そんな人、いるんですね」
田中「そんな連中だらけだよ! 会場に入ろうと並んでたら、音が鳴り出して、入場口周辺、大パニックですよ」
小林「柵を乗り越えたりとか?」
田中「いや、まさにそう。久しぶりに死の危険を味わった」
小林「でも、ちゃんとライヴは観れたんですか?」
田中「観れた、観れた。でもさ、今回のツアーって、ステージと花道の周りがVIP席になってたじゃん? あの辺りはステージに近いから、ステージ・セットも見えるし、ジャスティンやダンサー、メンバーの姿を拝める。でも会場がメッセだから、後ろの席だと、特にちっちゃな女の子とか、中学生とか小学生とかまったく見えないわけ。なもんで、アリーナの客全員が折り畳み式椅子の上に乗って、半数くらいがスマートフォン掲げてるっていう」
小林「すごい光景ですね」
田中「定期的に係員がまわってきて、『椅子から降りないと、公演中止になります』って言うんだけど、少し経つと、また全員が椅子の上に登るっていう」
小林「それだけでも観たかったなー」
田中「でも最高だったよ。あんなすさまじい黄色い声に囲まれてライヴ観たの久しぶりだし。周りの女の子たちがずっと『ヤバい! ヤバい!』って言ってるの、ほんとヤバかった」
小林「てか、ライヴの話してくださいよ」
田中「あれ? あの話はしたっけ? ジャスティン・ビーバーとお揃いのスタイリングにしたくて、〈モンキー・タイム〉のロング・タンクトップを買ったって話?」
小林「知りませんよ」
田中「あの話はしたっけ? ジャスティンが参加したジャックUのTシャツ着てたの、会場の中で俺だけだったって話?」
小林「わざわざ海外通販で買ったんでしたっけ?」
田中「この日のために買った」
小林「アホですな」
田中「で、もう二曲目とかにジャックUの“Where Are Ü Now”やって、まずそこが最初のピークだったんだけど」
Skrillex and Diplo / Where Are Ü Now with Justin Bieber
小林「まあ、盛り上がりますよね」
田中「でもさ、俺たちの場合、ディプロにしろ、DJスネイクにしろ、スクリレックスにしろ、そういう旬のプロデューサーが完全にアイドル扱いされてたジャスティン・ビーバーのプロップスを上げつつ、自分たちも結果的にフックアップされるようなクロスオーヴァー現象がエキサイティングだと思ってるわけじゃん」
小林「でも、その感じっていうのは、そんなにマジョリティでもないんだろうなっていう?」
田中「わざわざジャックUのTシャツでちょっと外しを狙っていくっていう俺のアイデア自体が古いんだろうな」
小林「そんなところで自己批判しなくても(笑)。でも、弾き語りコーナーで、メジャー・レイザーの“Cold Water”やったんじゃなかったんでしたっけ? ジャスティンの来日公演のタイミングって、まさに“Cold Water”が最高位の全米2位になってたタイミングですよね?」
Major Lazer / Cold Water feat. Justin Bieber & MØ
田中「そうそう、“Cold Water”と新作からの“Love Yourself”を二曲連続で歌ったんだけど、やっぱ“Love Yourself”の方が盛り上がった感あったかも」
Justin Bieber / Love Yourself' (Jingle Bell Ball 2015)
小林「じゃあ、わりと客層的には、今のセレブリティ・ポップに夢中の女の子たちって感じですか?」
田中「いや、LDH系の男の子たちもたくさんいたし、いかにも北関東から気合い入れて、やって来ました風の、明らかにスタイリングのバランスとか間違ってる男子高校生とかも来てたから、かなりいろんなトライブがいたと思うよ」
小林「〈IN ROCK〉系のアラフォーのお姉さま方は?」
田中「それは勿論たくさんいらっしゃってた。だいたい前回のツアーのTシャツ着てらっしゃってたけど」
小林「こだわりますね、そこ」
田中「でも、邦楽ロック系フェスとかよりも、はるかに居場所がある感じしたな」
小林「まあ、ジャスティン・ビーバー風の全身白のスタイリングできめた、50歳過ぎの髭面のおっさんが〈ROCK IN JAPAN〉にいたらヤバいですよね」
田中「この日のためにスニーカーもスキニー・ボトムも白で新調したからね」
小林「やっぱりジャスティンも、そんな恰好でステージに登場したんですか?」
田中「初っ端はメタリカのTシャツ着てた」
小林「ロックTシャツですか」
田中「さすがジャスティン、きちんと基本を押さえてるなって感じ」
小林「また旬な話題ですからね。この前も、〈ファインボーイズ〉かなんかの特集で、『音楽を知らなくたって着ていいじゃん、ロックT』ってのがあって、ネット上では『ふざけんな、知らなくていいわけないだろ!』って感じのバズが起こったところだし」
田中「でもさ、あれもどっちの立場もどーでもよくない?」
小林「まあ、でも、自分が何を着てるのかわかってないっていうのは、どうなの? とは思いますけどね」
田中「政治的な問題としてはね。でもさ、そもそもロックTシャツとか着たりする? バンドTシャツも着ないでしょ?」
小林「死んでも着ませんね。かっこ悪いから。ジャスティンがメタリカのTシャツを着るからこそ、ハマるんであって。でも、タナソーさんも着ないじゃないですか」
田中「だって、俺がレディオヘッドのTシャツとか着てたら、ヤバくない?」
小林「引きますね。だからこそ、ジャスティン・ビーバーのTシャツ着てるんだろうなって。そこはわかります」
田中「あ、でも、唯一俺が着るロックTシャツあるよ。スパイナル・タップのTシャツ」
小林「スパイナル・タップって、84年に公開されたカルト映画に出てくる架空のヘヴィメタル・バンドでしたっけ? 確かロック・バンドにまつわる、ありとあらゆるステレオタイプを徹底的に茶化したコメディ映画?」
田中「そうそう。アメリカでブレイクして以降のレディオヘッドとかも、そのおかげで馬鹿馬鹿しい状況に追い込まれたりすると、必ず『まるでスパイナル・タップだな!』って言ってたっていう」
小林「まあ、ロック好きを公言するなら、絶対に観ていかないといけない映画のひとつですよね」
This Is Spinal Tap Trailer
田中「俺が持ってるのは、映画から25年経って、英国の〈ウェンブリー・アリーナ〉で再結成コンサートをやった時に会場で売ってたTシャツなんだけど」
小林「ああ、聴いたことあります。その年の〈グラストンベリー〉にも出演して、元パルプのジャーヴィス・コッカーも飛び入りしたとか」
田中「要するに、スパイナル・タップっていうのは、ロックに対する内側からの批評なんですよ。そこにジャーヴィス・コッカーが飛び入りしたっていうのは、すごく腑に落ちる」
小林「ブリットポップ最大の功績と言えば、ジャーヴィス・コッカーという英国最大の知性を世の中に知らしめたことですからね」
田中「で、話を戻すと、要するに、もはやバンドTシャツを着るというのは、作家に対するロイヤリティの表明ではないわけ」
小林「なるほど。要は、カジュアルな批評だ、と」
田中「これは俺の持論なんだけど、ロックTシャツの着こなしを最初に再定義したのは、ベックだと思うんだよね」
小林「その話、よくしますよね」
田中「デビュー時代の、まだ誰もその素性がわかってなくて、ただの危ない子供かもしれないって思われてた時代のベックのアーティスト写真、覚えてる?」
小林「93年とかでしたっけ? もう20年以上前だ」
田中「そこで彼が着てたのが、ジャーニーの83年のアルバム『フロンティアーズ』のTシャツと、ディオのTシャツ」
Journey / Separate Ways (Worlds Apart)
小林「ディオって、70年代後半に元ディープ・パープルのリッチー・ブラックモアがやってたレインボウのヴォーカリストだった人のやってたバンド?」
田中「そうそう、ロニー・ジェームズ・ディオのバンド」
小林「故人に鞭打つことになっちゃいますけど、有史以来、最高にダサいバンドの筆頭格じゃないですか」
Dio / Holy Diver
田中「当時のジャーニーもそうじゃん。ポップな産業ヘア・メタルっていう。超ダサい」
小林「でも、日本のメジャー・レーベルが海外アーティストを売るために必死になってブッキングする朝の番組のテーマ・ソングがジャーニーですからね。海外アーティストもびっくりですよね?」
Journey / Any Way You Want It
田中「自分の番組にレディー・ガガがやってきた時の黒柳徹子の驚きどころの話じゃないよね」
Lady Gaga on 徹子の部屋
小林「きっとテイラー・スウィフトもレディー・ガガもびっくりですよね、『何故、ジャーニー?』って」
田中「でも、むしろ『日本人は批評性高いな。さすが元祖ポストモダン国家だな』くらい思ってたりするんじゃないの?」
小林「ない、ない」
田中「でも、93年のベックはその2バンドのTシャツをわざわざ着てたんだよね。10年前のヴィンテージものを漁ってきて。『うわ、これはかっちょいい!』と思って」
小林「まあ、批評性ありますよね。確かに」
田中「そういう態度って、今だと相対主義的すぎるとか言われかねないなんだけど、でも、やっぱ今の時代にロックTシャツを着るっていうのは、何かしらのカジュアルな批評性がないと、目も当たられないと思うんですよ」
小林「まあ、UNIQLOで1000円でお釣りがくる値段で、ロックTシャツが売ってる時代ですからね」
田中「と思うと、自分が好きなバンドのTシャツをUNIQLOで買って着たりするのも、どうなの? とか思っちゃうんだよね」
小林「また面倒臭い話になっちゃった」
田中「勿論、ファーザー・ジョン・ミスティみたいに『カニエ・ウェストやジャスティン・ビーバーのマーチャンを手に入れるために群がるのもどうなの?』っていう意見もあるとは思うけど、少なくともそこには現行のアーティストに対する経済的な還元があるし、まったく意味のない今という表層に夢中になるっていうポップにとっては何よりも大切な態度があるし、何よりもデザイン・コンシャスじゃんか」
小林「リアーナとか、ジャスティンのマーチャンって、〈ヴェトモン〉へのオマージュだったりしますしね」
Vetements Fall Winter 2016/2017 Full Fashion Show
小林「あ、そうだ。確かUNIQLOのロックTシャツを着る/着ないで、エレキングの野田努さんと大喧嘩したんでしたっけ?」
田中「あれを発端に、もう2年近く絶交してます」
小林「どーでもいい話は置いといきましょう」
田中「あ、でも、当時のベックの話で、いい話があってさ。俺が『あなたがジャーニーやディオのTシャツを着てたせいもあって、渋谷の古着屋ではヴィンテージのTシャツにとんでもないプレミアがついてるんですよ』って話をインタヴューでしたら、軽く狼狽しちゃってさ」
小林「昔から、アーティストを困らせるようなことばっかしてますよね」
田中「その直後にMTV JAPANのインタヴューを受けた時に、『最後に視聴者にメッセージを』って言われて、『プレミアのついた古着は買うな!』ってベックが言ったっていう」
小林「あの、すいません、話としては面白いんだけど、これ、ジャスティン・ビーバーのライヴについての記事じゃなかったでしたっけ?」
田中「話がこのくらい脱線してしまうくらい、今のジャスティン・ビーバーを取り巻く状況は、いろんな文化的参照点があって、素晴らしいって話ですよ」
小林「得意の屁理屈はわかりましたから、音楽の話をしましょうよ。もう前半終わっちゃいますから」