スリランカ難民のチャーター機送還について記者会見を実施しました。
『裁判を受ける権利を奪う重大な権利侵害』
今回のチャーター機による強制送還を受けて、支援者で記者会見を行いました。
このような強制送還は、本人の意思に反しての強制送還自体の人権をめぐる問題もありますが、とりわけて集団的に強制送還するチャーター機送還は、より多くの深刻な問題を引き起こしています。
特に、昨年、今年と、繰り返されたスリランカ難民送還は、難民申請者の「裁判を受ける権利を奪う」という重大な権利侵害をはらんでいます。
通常、難民申請を行い、不認定となった場合に、そのことに対する異議申し立てを行いますが、これが却下された場合でも、以後6カ月間は、それを取り消すための裁判を起こすことができます。
しかし、今回のケースでは、異議申し立て却下を告げた直後に、チャーター機による強制送還が行われているものと考えられます。
2015年11月16日の日弁連への人権救済申立は、 ①裁判を受ける権利の侵害、②家族分離、③ノン・ルフルマン原則違反、④送還の態様の問題を訴えています。
また、本年8月2日の名古屋地裁への国賠訴訟では、裁判を受ける権利の侵害を訴えており、今も争いが続いています。
チャーター機送還、とりわけて難民の強制送還については、弁護士会など各界からの批判もあり、さらに人権救済申立、国賠訴訟で争われている渦中での、2回目のスリランカ難民は、極めて重大な問題です。
スリランカの国内情勢は全く楽観視できない
加えて、今回強制送還が行われたスリランカの国内情勢は、決して安全とは言えません。現大統領も今年に入ってから、2度暗殺計画が浮上するなど緊迫した状態です。
政治活動を行ったことによる弾圧も起こっており、銃が多く出回っていることから、争いに巻き込まれれば、命を落とす危険はまったくないとは言い切れない状況です。
そのような情勢下にあって、自らの身の危険を感じ、日本に難民として庇護を求めてきた人たちを、何の基準をもって難民ではないと決めつけ、強制送還を行っているのでしょうか。これは、とても難民条約批准国といえる行為ではありません。
長年、日本社会に定着した外国人も送還
今回の送還で、最も長く日本に滞在した方は、27年9ヶ月でした。
その他にも、10年近く、あるいはそれ以上の滞在期間の方がほとんどでした。
実に人生の半分以上を、ここ日本で暮らし、労働をし、日本社会を根底から支えてきました。刑事犯罪も犯していません。日本に家族がいる人もいます。
それでも在留資格獲得がかなわず、長く不安定な状態にありながらも、あきらめず懸命に生きてきたのです。
個々の正しい現状を見ずに、単にオーバーステイだから切り捨てるのは、人道的な面からも大きな問題だと思います。