【読書、数珠つなぎ】(仕事場D・A・N通信vol.17)
毎週、土曜日、朝日新聞の書評欄を見る。先ず、知っている本があるかどうかをザッと。基本的に新しい本が多いから、掲載の本を既に読んでいたりすると嬉しい。ここで取上げられるものを、先んじて書店でチョイスしている自分が良い感じなのだ。
著者も知らないし、読みたいと思わないジャンルの本もたくさんある。そんな時は今回の書評者陣は誰かなと署名欄を見て終わる。「おや、横尾忠則氏がピックアップした本なのか…」と思ったときは、戻ってその記事を読む。他にも、いとうせいこう氏、武田砂鉄氏、高野秀行氏等の名を見ると再見する。
「岡村昭彦の言葉と写真」戸田昌子 監修 赤々舎 刊。これは書評の横の囲みで取上げられていた本だった。懐かしい写真家の名だ。2,750円は高い本だなと思ったがAmazonで注文した。
読み始めてしばらくして、その記述の密度に最近の本の薄味なことを思い知らされた。そして読み終える頃には、今、この本を出す赤々舎ってどんな出版社だ? と思った。検索してみると、ひとりの女性編集者がやっている京都の出版社らしい。そして思い当たることがあった。
週に三度以上覗く書店が、仕事場の道すがらにある。毎日棚が変わるわけではないから、部分的に何かが替っていると直ぐに気付く。そこで以前、表紙が何度か目についたが、何の本なのか分からないので手に取らなかったのを思い出した。「あれか!」と思った。その本が時間を経て、郵便受けに届いた。
ならば直ぐ読めばいいのだが、パラパラと見てなんだか気が向かず、積ん読本になっている。その一方で、ネットの古書店で岡村昭彦全集(1-6巻)をあちこち探して手に入れた。こちらは目についた記事をピックアップして読んでいる。
本なんて全く読まない人間だった思春期、青年期を経て、二五歳から五十年近く読みふけって今に至る。読書しなかった頃の自分など、もう語らなくてもいいと思うのだが、そうはならないのが不思議だ。