平成28年9月 月例インターネット句会 Vol.55結果発表
木暮陶句郎 選
◎特選 6句
さらさらと砂の落ちゆく蝉の穴(稲葉 京閑)
竜胆の宿に干されし旅鞄(鈴木由里子)
初恋の人を上座に良夜かな(鈴木由里子)
麗人の午前十時のラ・フランス(はたのとしはる)
寝静まる月の港の常夜灯(星野 裕子)
幾千の糸に彩らるる雨月(杉山 加織)
長き夜の芯に触れゆく星の声(杉山 加織)
〇入選 24句
秋日さす榛名湖はほぼハート型(中野 千秋)
ふるさとの丹波は遠し鰯雲(はたのとしはる)
待宵や一つ手前で降りませう(星野 裕子)
この蔵の冷酒生酒利かむかな(稲葉 京閑)
迫り来る二百十日の重き雲(峯岸 俊江)
友を待つ白秋の風透き通る(水上 一葉)
没落の旧家お茶の実まだ爆ぜず(稲葉 京閑)
霧の海父母の山河をすつぽりと(はたのとしはる)
こほろぎが会ひに来ている湯殿かな(岩佐 晴子)
夏の果て三日続けて朝カレー(安部じゅん)
蟷螂や高みからもの言ふ男(岩佐 晴子)
卓上の古き指輪や秋の風(峯岸 俊江)
忽然と朱を立ち上ぐる曼珠沙華(清水 檀)
血の通ふ言葉やはらぐ曼珠沙華(堤 かがり)
野分晴美男虚子像拝見す(阿部ひで希)
追ひかけてその果てまでも鰯雲(清水 檀)
人生の余白広がり花芒(岩佐 晴子)
秋風や妻の肩抱く手のこぶし(峯岸 俊江)
月明の川に地球の息吹見ゆ(阿部ひで希)
秋日和空より蒼き山上湖(星野 裕子)
小さき風いつも放さぬ萩の花(星野 裕子)
長き夜の夢の継ぎ目を探しけり(星野 裕子)
鬼灯や含む口許拗ねてをり(久保田晋一)
涎掛け丁寧に縫い地蔵盆(岩佐 晴子)
互選
8票
子規虚子を熱く語りて月の客(木暮陶句郎)
4票
長き夜の夢の継ぎ目を探しけり(星野 裕子)
3票
小さき風いつも放さぬ萩の花(星野 裕子)
むらさきもうすべにも揺れ秋の園(清水 檀)
麗人の午前十時のラ・フランス(はたのとしはる)
人生の余白広がり花芒(岩佐 晴子)
よき雲を浮かべて秋の水となる(中野 千秋)
梨食みてざらりと甘き甲斐の味(堤 かがり)
風の盆夢の中にも風の路地(木暮陶句郎)
2票
寝静まる月の港の常夜灯(星野 裕子)
蜻蛉や好きでめがねは掛けぬもの(安部じゅん)
秋風やおひとりさまの喫茶店(鈴木由里子)
どれもみな雄かと思ふいぼむしり(岩佐 晴子)
たとふれば松虫草のやうなひと(峯岸 俊江)
長き夜の芯に触れゆく星の声(杉山 加織)
1票
さらさらと砂の落ちゆく蝉の穴(稲葉 京閑)
湖畔馬車とてとて霧が霽れてゆく(稲葉 京閑)
待宵や一つ手前で降りませう(星野 裕子)
風琴の音色染み入る秋チャペル(清水 檀)
追ひかけてその果てまでも鰯雲(清水 檀)
秋日差みな背伸びして影となり(清水 檀)
蜻蛉釣りしつぽ切れぬか蒼い空(安部じゅん)
鹿鳴いて耳の欠けたる磨崖仏(久保田晋一)
杜の径通せんぼして乱れ萩(はたのとしはる)
ふるさとの丹波は遠し鰯雲(はたのとしはる)
水々し豊水といふ今朝の梨(はたのとしはる)
蟷螂や高みからもの言ふ男(岩佐 晴子)
こほろぎが会ひに来ている湯殿かな(岩佐 晴子)
卓上の古き指輪や秋の風(峯岸 俊江)
秋風や妻の肩抱く手のこぶし(峯岸 俊江)
名月を宿して雲のさなぎかな(中野 千秋)
曼珠沙華もつとカを抜きなさい(中野 千秋)
店先でまず手に取るは秋刀魚かな(水上 一葉)
山深く湯けむり立ちて葛の花(堤 かがり)
そばかすの増えてしまつてちちろ虫(堤 かがり)
血の通ふ言葉やはらぐ曼珠沙華(堤 かがり)
枝豆を剥いてやるよと言つてみる(杉山 加織)
別れ蚊の足跡仄と赤らめり(杉山 加織)
後悔に彩あるならばこぼれ萩(木暮陶句郎)
ちちろ虫こころの底に飼ひ慣らす(木暮陶句郎)