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白昼の市街戦/暴力への回答(1958)ANSWER TO VIOLENCE

2021.01.31 07:21

〈プレスより〉

スタッフ

監督……イエズイ・パッセンドルフェル

脚本……イェズイ・ステファン・スタウイニュスキー

撮影……イエズイ・リップマン

音楽……アダム・ワラツイニュスキー

録音……レシェック・ウロシカ

編集……チェスラウ・ラニシェウスキー

キャスト

マルタ…………ボジェナ・クロウスカ

クリシア………グラジーナ・スタニシェウスカ

ザワーダ………ズビグニエウ・ツインクテイス

コロス…………アンドルゼイ・コステンコ

マリイ…………ロマン・クロソウスキー

マレック………タデウシュ・ロムニッキー

チャルニイ……アンドルゼイ・マイ

ヤーツエック…スタニスラウ・ミクルスキー

カイチック……イエルズイ・ナスイエロウスキー

ポーランド国立映画イリュージョンプロ製作

八巻 上映時間・一時間二十五分


解説

 「地下水道」、「灰とダイヤモンド」など、鮮烈なポーリッシュ・リアリズムの旗の下に、目覚ましい躍進を続けるポーランド国立映画が、野心満々、そのレジスタンス精神を再び世に間うのがこの映画である。

 一九四四年、ナチ占領下にあるワルシャワを舞台に、残忍きわまる独軍の弾圧に対して、敢然と立ち上り、殺りくの抵抗戦線に命を賭して活躍するポーランドの青年達の純粋な行動を克明に描いた作品である。

 ドイツ軍司令官暗殺を目的とした彼等の綿密に計画された行動は見事に成功する。だがその為には幾つもの若い生命を代償にするものだった。そして生き残った彼等は次の計画遂行に移っていくのだ。明日の命の知れぬ不安な政治体制に慄く混乱の時代に生き抜く青年達の苦悩と使命を、痛烈に画面に叩きつけている。

 監督イェズイ・パッセンドルフェルは、「船長マルテンスの宝」に次いでこれが二本目の作品で、全くの新人であるが、多彩な演出技法を駆使して、強烈な迫真力を盛えい上げている。脚本を担当する「地下水道」のイエズイ・ステファン・スタウィニュスキーを始め、スタッフは総て若手揃い。

 出演者はアソドルゼイ・ワイダ監督の”Lotna”に主演する新星ボジェナ・クロウスカを中心に、中のグラジーナ・スタニシェウスカ、ズビグニエウ・ツインクティス、アンドルゼイ・コステンコが主演。「影」のロマン・クロソウスキー、「地下水道」のスタニスラウ・ミクルスキー等の若手スターが共演し、見事なアンサンブルを生み出している。(一九五八年度作品)


物語

 数百米も続く赤煉瓦塀の内側から銃声が聞えてくる。非合法組織加盟と、不法武器所持の理由で、今日もゲシュタポに依って同胞が銃殺されてゆく。独軍司令部を前にした塀のとぎれた所に死刑される者の名前が告示されている。その前にチャルニーとマルタが立っている。彼等は司令官が外出する時間を今日も調べに来たのだ。九時十五分!やっぱり間違いなく同じ時刻だ。ニ人はその足でアジトに向った。

 アジトには仲間が集っている。ヂャルニーを中心とした学生達は占領ドイツ軍に対する地下抵抗組織だ。

 一九四四年、ワルシャワは、ナチ占領下にある恐怖時代が四年間も続いている。彼らが目指す目的は占領軍司令官の暗殺である。

 そのために、先ず、独軍から自動車を奪うことだった。どうしても三台は必要だ。先ず、最初の獲得には成功した。独兵が運転する自動車の走ってくる前に、ザワーダが 手荷物を落す。停止した車に、両側に隠れた仲間の二人が乗りこむ。ニ回目は失敗したが、とにかく、必要な三台を獲得した。

 アジトに集る彼らは白墨で書いた地図の上にチュスの駒を動かして作戦を練る。だが学生である彼等はその間に試験勉強をしければならない。独軍を故国ポーランドから追放する事は重要なことだ。然し、戦いが終った時には彼等は一般社会人として生きてゆかなければならないことを知っている。

 マルタは彼らのあこがれの的だ。彼女の 勇敢さには、青年達も尊敬の念を抱かずにはいられない。ヤーツエックと共に、手榴弾をスーツケースに入れて運ぶマルタは、道で独兵パトロールにぶつかった。独兵は当然、スーツケースの中味を尋問した。ヤーツエックは恐怖に慄いている。中身を間われたマルタは「自動小銃よ」と答え、驚く兵隊に続けて「砲弾よ」と浴せた。あっけにとられた独兵達は、彼女の冗談に笑って、調べることなく立ち去った。

 愈々明日は司令官の暗殺を決行するのだ。その日ザワーダは、クリシアと結婚を約した。ヤーツエックはマルタに愛の詩を捧げた。だがマルタの心はチャルニーにひかれていた。戦争は惨酷なものだ。彼等の孤独な心を慰さめるもの、それは愛情なのだ。

 明けて午前九時。司令部の前に立ったクリシア。時間は刻々と迫る。彼女の手があがる。それを合図に、ザワーダの乗った車が走る。門の中から司令官の車がでてくる。二台の車は衝突した。司令官めがけて、機関銃の滅多射ちだ。銃声に驚いた独兵は建物の窓から応戦した。

 目的を達した彼等はニ台の車に分乗し逃走した。しかし、殆んどのものは傷つ きチャルニーもヤーツエックも死んだ。生き残った仲間は、はかなく散った同志の屍を後に、次の行動に移っていくのだった。 

映画タイムス社・シナリオ文庫62『暴力への回答』