主鏡側面のサイン
2021.01.31 09:31
15cm反射望遠鏡の主鏡セルの調整を行なっていた際、主鏡(直径155mm、厚さ23mm、重量980g、ガラス素材SAINT-GOBAN:サンゴバン)の側面に文字らしきものが彫られているのに気付きました。
よく見ると、「44 F=1.44」とあります。鏡面の裏面に彫られていたのと同じ、中村要氏の筆跡です。44はNo.44の鏡面を指します。新たな宝物を見付けたようで、ますますこの鏡面が愛おしくなりました。
SAINT-GOBAN社(仏)は、1665年創業の現役の老舗企業です。王立鏡面ガラス製作所が起源です。1859年にフーコーが研磨した80cm反射鏡素材、1876年にコンモンがカルバーに製作依頼した46cm反射鏡素材、ウィルソン山天文台のリッチーが製作した91cm、152cm、254cm反射鏡素材等は、いずれもSAINT-GOBAN社が製造しました。
私の手元にある薄黄色の15cmのガラス素材は、時代と共に歩んできた重みを、手にずっしりと感じさせます。
(参考文献)
吉田正太郎,望遠鏡発達史(下),誠文堂新光社,1994