覚えるべきインコタームズとは
前回はインコタームズについて大枠を説明した。
しかし、11種類の条件を覚える必要はないのである。
現実的に必要な次の4種類の貿易条件を費用負担(価格条件)の側面に絞って説明しよう。
①エ場渡し価格(Ex WORKS価格、EXW価格)
海外のメーカーの工場であなたが商品を引き取る場合の価格条件である。
あなたが指定した国際貨物運送業者が工場に引き取りに行き、引き取った段階でリスクと費用はあなた持ちになる。
例えば、指定の国際貨物運送業者が、船上等で事故を起こしてあなたの商品に損害が出た場合は、この条件だとあなたの損失となる。ただし、3000円~の保険で全てのリスクを回避できるのでそれほど心配する必要はない。
この工場渡し価格は、ヨーロッパとの取引で提示されることが多い条件である。
②本船渡し価格(FOB価格)
①の工場渡し価格に、メーカーが工場から輸出港(空港)まで運ぶ運賃・通関・船積み費用を含んだ価格条件である。リスクと費用の分岐点は、船積み時点になる。
例えば、船積み後、不幸にもその船が沈んだとしたら、それはあなたのリスクになる。
もちろん、これは安価(3000円~)な海上保険で対応できる。
アジアとの取引で多い条件である。
船に積むまでは輸出業者がリスクと費用を負担。
それ以降のリスク・運賃・保険料は、輸入業者(あなた)が負担。
FOBはFree on Board の略語。
契約で指定された港で買主の手配した本船(実務的には売主に依頼する場合も多い)に、輸入業者が商品を積み込んで引き渡す条件のこと。
日本でもCFR(C&F)やCIFと並んで好まれている条件
③運賃込み価格 (CFR価格)
②の本船渡し価格(FOB価格)に、現地港(空港)からあなたの指定する港(空港)までの運賃を加えた価格である。C&Fとも言う。ただし、FOBと同じく、船積みした時点で商品のリスクはあなたが負うことになる。
日本では、CFRは輸入の時によく利用される。これはFOBと同じく、万が一の時交渉のしやすい日本の保険会社に保険を頼みたいと思っている人が多いからである。
輸入業者のリスク負担はFOBと同じ。
ただし運賃は輸出業者の費用。
保険料は輸入業者(あなた)の負担となる。
日本ではCFRは輸入の時によく利用される。
日本の保険会社に保険を頼みたいと思っている人が多いということである。
④運賃・保険料込み価格(CIF価格)
③の運賃込み価格(CFR価格) に、海上保険 (航空保険)の保険料を加えた価格である。リスクと保険料、運賃以外の細かな費用の分岐点は、①~③同様、船積み時点になる。
米国との取引で比較的多い条件である。
日本では、輸出の際に使われることが多い。
お勧めは、②のFOBか、③のCFR。
CIFは、個人的には、あまり推奨しない。
海外の保険会社と交渉するのは、やっかいな作業になるからだ。
そういった観点から見ると、CIFを提示された場合は、こう言おう。
「日本の保険に入りたいからFOBでお願いします」
とこちらの条件をメーカーに提示すればいいだけのこと。
メーカー側にとっては、どちらでもあまり問題にすることはないのだから……。
貿易条件なんてやっぱり難しそうだ、と思ったそこのあなた。大丈夫。
輸送や通関などは全てプロに一任できるのが、今の輸入ビジネスの世界なのだから。
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