No.1002 阿蘇 赤谷 ダイレクト尾根
【日時】2021.01.31(日) 日帰り
【メンバー】 KH.IK.SK
【データ】晴れ・-2℃・0m/s
行動時間06:45 距離6.3km 上り813m下り813m カロリー1745kcal
【ルート詳細】
今年3度目。
1回目はソール破損で差三段滝下で撤退
2回目はジンクスデイで三段滝まで
冷え込んだので阿蘇に行ってみるが氷はほぼ無し。F4もカラカラでA0でやっと登れた。ダイレクト尾根は雪がなくサクッと終わってしまった。
赤谷は温暖化や熊本地震と度重なる大雨など複合的な要因で侵食のスピードがあがっています。
僕が阿蘇を訪れるようになってもう40年がたちます。
1980年代~2000年代までは何度か大雨による土石流などで、関門下部までは変化することはありましたが、関門上部はさほど気になる変化はありませんでした。
2010年以降、侵食や風化で滝の岩面も削られ凹凸も少なくなり概ね難しくなっております。1980~2010年代までの変化がここ10年で一気に起こった感じです。
いつの頃からかF1~F4という表記がされるようになっていて、僕も世情にあわせて使っていましたがあまり好きではありません。滝の大きさや傾斜の具合で人によって非常に解りづらいからです。
今回からは敢えて昔からの表現で行います。
赤谷は赤ガレ谷との出合いからはじまります。ここにあるのが「出合いの滝」12mです。いわゆるF1です。ここは下部にはだいたい氷がつきます。上部まで氷がびっしり付くことも稀にありましたが珍しいことです。下部の氷が貧弱でしたら上流の滝の氷は期待できません。「出合いの滝」は傾斜が緩く凹凸も多いので氷が無くても問題ありません。
F2~F3は正直僕にはどれがどれかわかりません? 昔は「出合いの滝」の直ぐ上に顕著な滝が有りましたが埋まってしまって解りづらいです。3~6mの小滝が2~3本ありますが、氷も付くことも多いし簡単です。大きな岩を乗っ越しながらしばらく進むと「チョックストーン滝」15mがあります。ここは昔、滝ではありませんでした。今はCS7mに氷がつき直下まで続きます。左手に1ヶ所リンクカム紫をセットしました。CS下に立てる小テラスがあり一息つけます。ここから左にCSを巻くように岩を登ります。氷は付きません。凹凸が少しありますので難しくはありませんが、落ちると10mは落ちますのでダメージは大きく緊張します。アンカーは取れないので気をつけましょう。脱け口には胸ほどの岩が2~3個チョックしてますが簡単に脱けれます。
「CSの滝」を越えてゴーロを20m進むと「のっペリした滝」15mが待ってます。(ここが一般にはF4と呼ばれているようですが定かではありません)ここが赤谷の核心です。これを越えれずに帰るパーティが多くあります。氷があれば何のことはないのですが、近年風化浸食が激しく氷が付きにくくなりさらに凹凸のほとんどなくなってしまいました。年を追うごとに難しくなっています。
氷がない時はクライミングシューズで登れそうな気もしますが、実際はそうではありません。この時期の赤谷の岩は氷化と融解を繰り返し表面がざらついて、砂を撒いた状態になっているのでフリクションがほとんど効きません。したがってやはりクランポンで登るのが正解です。小豆粒くらいの凹凸が所々ついていますので、そこにアックスの刃の先端やクランポンの前爪をひっかけ登ります。上部で落ちたらほぼ確実に足首が壊れてしまうと思います。
幸運にも僕はまだ落ちたことはありませんが、ここで怪我をした人の話はよく聞きます。度胸試しの登攀ですね。でもこんなことやってても何の得もありませんので、毎年必要最小限のボルトを埋め込んでいます。ただ、岩質自体がもろいので、あまり効いてはいません。墜落時の衝撃で抜ける可能性が高いので、前進用と考えた方がいいと思います。阿蘇の谷に来られる方なら、そのリスクは十分承知でしょうし、残置物は信用してはならないのが鉄則ですので、残置物の過信のせいで事故を起こしたとしても自己責任です。この辺が理解できない方はそもそもこんなルートに来る資格はありません。
ルートでの人工物設置の賛否は意見が分かれるところですので、目障りな方は抜いてもらってもかまわないです。非難されたり文句を言われる方はいないでしょう。もともと翌年まで残ること自体が少ないので簡単に抜けると思います。
「のっぺりした滝」を越えたパーティだけが赤谷の醍醐味とダイレクト尾根をたどり高岳に到達した達成感を得ることができます。滝を越えゴーロを進むと、しばらくして「三段滝」です。ここにはいわゆる「エイリアン氷」が付きます。
赤谷やダイレクト尾根にはわかりやすい名前表記が多いです。もともとこれらの名前はPMTの現役プロガイドのT氏がつけられました。阿蘇北面に多くのルートを開拓され、度胸と技術を兼ね備えた方です。僕がPMT会員時代のころ、僕の師匠でありまた冬山のパートナーでもありました。T氏は機知に富んだ方で他にも「しんちゃん岩」「腰かけ岩」などの名前を付けられました。
さて、「三段滝」の「エイリアン氷」を越えて10mほど進むと右手に見えるのがカンスノツルの側壁です。末端下にコルがありますので、ここからエスケープも可能です。ただし相当なやぶ漕ぎ覚悟がいります。関門下で一般ルートと合流します。正面上部に10~20mの壁があります。「赤谷奥壁」です。ここにも数本のルートがありますが、5級をこえる難易度です。左手を見上げると「境界尾根」が見えます。ダイレクト尾根にはこの「境界尾根」を横断していきます。「三段滝」から30分ほどです。
境界尾根に上がり込むと正面に「鷲ヶ峰」がそびえたちます。足元は「赤ガレ谷」です。「鷲ヶ峰」と「赤ガレ谷」の間に見える一番奥のスカイラインが「ダイレクト尾根」末端です。小岩頭が数個見えます。「ダイレクト尾根」までは小さなガレ沢と小尾根を数本横ぎりますが、藪の枝打ちを毎年していますので、その跡をたどれば「ダイレクト尾根」末端に到着します。「ダイレクト尾根」の少し手前で見上げると「しんちゃん岩」が見えるのですが、昔はモアイ像が尾根上部を見上げている格好でした。今は首が折れてしまいライオンが口を開けて尾根を見上げています。これからは「獅子岩」とでも呼びましょう。慎ちゃん今までありがとう!
「ダイレクト尾根」取り付きはいろんな方法があります。①手前のルンゼから登る方法、これも2本ほどルートがあります。②「獅子岩」基部上部に上がり込み「ダイレクト尾根」に乗り込む方法。③「獅子岩」基部下部を回り込んで(つまり「ダイレクト尾根」もいったん越えて)ブッシュ伝いに反対側から上がり込む方法。③が一番安全です。切り分けもありますので、トレースに乗ると誘導してくれます。
①~③どの方法でも最終的には「ダイレクト尾根」の「チムニー」ルートにぶつかります。ダイレクト尾根ルートは、昔はこれ一拓でしたが、今は殆どのパーティが右手に8mほど回り込んで尾根に上がり「エスカルゴルンゼ」ルート上部の草付きルンゼに到達します。ルンゼに入る前に尾根のブッシュでアンカーを取りロープを流します。あとはこのルンゼを右にカーブしながら40m上がり込むと、右手にブッシュ帯となりますのでここでピッチを切ります。支点はありません。
「チムニー」は正面に2本のチムニー(左が小チムニー、右が大チムニー)が見えます。今回はこのルートで行きます。出だしは右手に青い残地スリングが見えます。もう8年も前に残置したものです。ここにはボルトを埋め込んでいますので、ここにセルフを取りロープを流します。左の小チムニーを5~6メートル上がり込むと、1mの幅で右の大チムニーの間の泥壁があります。小チムニー右岸の壁から左岸の壁に九重方面を見ながら目いっぱい足をのばし飛び移ります。超スリリングです。落ちれば10mです。足を延ばして泥壁にアックスを打ち込み重心を壁に移します。これでムーブは終わりです。後は大チムニーの泥壁にアックスを叩き込みながら5mほど上がると尾根に出て下に「エスカルゴルンゼ」があります。残地支点はありません。支点設置した方は回収してください。
後はブッシュの中をダイレクト尾根が続きますので、突き当りの「腰かけ岩」の壁を上がり込みさらに50m進み、1.5m(今回は1mになってた)の段差をこえると高岳の一般登山道に合流します。
時間は仙酔峡からソロやペアではで4~5時間、4人のへたくそパーティになるとヘッデンが必要になります。