編み物は糸が曲がっている。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、編み物は糸を曲げて輪っかを潜り合せてつなげていくことで布状態になっていく。これは、横編も経編も丸編も、全部だ。一方で織物は糸を直線で織り合わせて製布していく。この二つの違いがもたらす効果は相当大きい。
織物は、経糸と緯糸のどちらか、または両方にストレッチ性がある糸を入れないと、ほとんど伸縮性はない。(糸の膨らみや織りの加減で生まれる伸縮性は除く)
糸自体、繊維自体に伸度と言って、伸び縮みする性質があるものはあるが、その繊維、または糸の性質以上に伸び縮みする余白を、織りの場合はあまり持っていない。
しかし編み地は、糸を曲線にしてつないでいくので、そもそも余力しかない。だから、編み物は織物製品に比べて着心地が軽い(突っ張り感がない)というのが、過去のカットソー生地のストロングポイントだった。最近の布帛はストレッチ性が高いものも多いので、もはやストロングポイントとも言えなくなってはいるが、それでも編みで表現される伸び代は、布帛に比べて大きいと言える。
この伸び縮みの性質を利用して靴下などはサイズに余白があるし、レディース向けブランドなんかのニットやカットソーアイテムは1サイズ展開なんてことも珍しくない。
伸び縮みするというよりは、伸びやすいと考えた方が、この編み物たちと付き合っていく上では良いかもしれない。
伸びやすいとは、伸びるという利点と、伸びてしまう(ダレてしまう)という難点も含んでいる。
伸びっぱなしにならない工夫はいくらでもあるが、それを狙いすぎると表現したい服の感じから遠のいてしまうことだってある。特に繊細な雰囲気を出したい場合、この伸びっぱなしにならない工夫をしてしまうと、生地が割とごっつめになるので、なかなか両立しない。
なんでこんな記事を書こうかと思ったかというと、最近は朝早く起きて会社にいき、夜は早く寝るという生活をしている中で、洗濯物と向かい合うことが増えたからだ。
ある日奥様が、セーターを布目に対して横に干しているのを見て、( それはアカン、服が横に伸びてまう)と心の中の繊維ポリスが目覚め、あとでそっと干し方を変えたのだ。きっとそのままにしておいたら奥様は、着丈が縮んで身幅が伸びたセーターに対して「これあんまよくなかった〜」なんておっしゃったのだろう。そのくらい、一般の方々は編み物がどういう性質かなんてことを考えて生きているわけではないから、仕方ないのだけど、そんな取り扱いの問題でクレームされてもお店の人やアパレルメーカーの人も困っちゃうよなって思ったよってなんの話かわからなくなったので今日はこの辺で。