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• タイトル: 古い医術について―他8篇 (1963年) (岩波文庫) de ヒポクラテス
• ISBN:
• ファイル名: 古い医術について-他8篇-1963年-岩波文庫.pdf
• 発売日: 1963/7/16
• ページ数: 211ページ ページ
• 出版社: ヒポクラテス

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ヒポクラテス（B.C.460-）については64篇の写本が纏められており、大槻真一郎監訳による全集も出ている。本書はそのうち「空気、水、場所について」「神聖病について」「古い医術について」「技術について」「人間の自然性について」「流行病１」「流行病３」「医師の心得」「誓い」の９篇からなる縮約版と考えればよかろう。ヒポクラテスの家系は小アジア西のコス島の医術の家系であり、ヒポクラテスの名も祖父、本人、孫と一代おきに伝承されたことは全集の解説に書いてある。彼に依れば疾病の原因は（今風に言うと）環境と主体との関係にあることになり、そこで空気、水、場所と身体との関係が重視された（神聖病の方は現在の癲癇のことと思われる）。当時、医術は病の哲学的理論を好む風潮であったようで、こうした「理説」に対して、臨床における観察と食餌療法を中心とした治療を進めていたのがヒポクラテスらの「古い医術」派であったようだ。その臨床の様子は「流行病」に残されており、ある流行病が３年前からどのような気候や気象との関係で生じていたのかを診断書とともに記録しているが、実にケースの半数があっけなく死んでおり、「医術とはおよそ病人から病患を除去し、病患からその苦痛を減じることである。そして病患に征服されてしまった人に治療を施すことは、医術のおよばぬところと知って、これを企てることを断ることである」という言葉の意味は、この時代の文脈で理解される。「医師の心得」は臨床に携わる者が一度は眼を通しておいて良いことが書いてあり、「誓い」はこの一派に入る際の宣誓文。およそ医学、や臨床に携わる者が一度は参照するのがヒポクラテスであるが、「誓い」などは宗教や哲学に携わる者が一度は良かろう。また「流行病」などは当時の民族誌、「心得」は調査倫理としても読める。こうしてヒポクラテスは、人文、社会、自然のあらゆる学問の参照点となろう。