マーラー交響曲第10番
最近、多忙の嵐で心身共に疲れ切っている状況なのですが。。。そんな時にふと聴いた、聴いてしまったipodに入っていたこの一曲。今回はこのマーラーの交響曲第10番をご紹介します。
マーラーは以前にご紹介した第9番の後にこの曲を書き出したものの、一応なりにも完成したのは第1楽章だけで、残念ながら他界。元々の構想は全5楽章の大曲ですが、後世の優秀な作曲家・学者達の手により残された断片を手がかりに補筆され、今ではそれらしい全曲版として様々な版で演奏されるようになりました。また実際、クック版の最終第5楽章の美しさも素晴らしいのですが、今回はマーラー自身の手になる第1楽章のみを採り上げます。
元々私自身のこの曲の印象は、最後に救いのある第9番より更に暗く悲しく、どこまでも救いがないまま、ただただ悲しみに耐える曲、でした。
実際、冷たい弦の響きの全く何も寄せつけないないようなメロディで始まり、その後、低弦で受け、少し動きもつけて、暖かさを与えてくれるのかと思っても、絶対に幸せな人が書いたものではない、落ち着きのない不安定な響き、展開。。。まともな精神状態の人が書いたものだとはとても思えない。
何故、こんな状態の自分がこの曲を選んで、聴いてしまったのか、後悔したぐらいで。苦笑
しかし、聴き進めていく内にその不安定な響きを少しずつ少しずつ癒そうとしているマーラーの意志が感じられ、そんなことを思ったのは初めてだったので意外な感じを持ったところで、やってきてしまう突然の絶叫、そして、不協和音。
第10番で一番有名な部分と言っていいのでしょうが、今回は何故そこで?と思わずにいられなかった。頑張って立て直そうとしてたのに、徐々にではあっても、改善してたのに。。。
それにしても、いつ聴いてもこの心が引き裂かれるような響きには慣れません。
マーラー自身がこのA音に込めた意味を除いたとしても、心からの悲しみの叫びを音楽にするとこんな響きになるのでしょうか。
そして、その叫びが痛ければ痛い程、次に訪れる優しさが身に沁みる。
究極的にショッキングな響きとこの異常なまでに美しい癒されるメロディ。先がなかったマーラーの無念と諦観。
本当に大切なものは何か?捨ててはいけないものは何か?その時に問題となるものは何か?冷静にもう一度じっくり考え直して、歩みを進めてみたら?
決して嘆かず喚かず、地道に歩んで行けさえすれば。彼の命がまだそこで終わるものでなければ。生きてさえいれば。。。陥った境遇が例え同じであっても、続く第2楽章からは全く違う展開の曲になっていたのでしょうか?
さて、この曲のお薦めは全曲版ですが、サイモン・ラトルさんが指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。
第1楽章に関しての感想ですが、第9番とは録音の違いもあるのか、非常に感情のこもった重量感のある熱演です。
下記Youtubedeは、同じラトルさんの演奏ではありませんが、インバルさんがアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮した素晴らしい演奏です。ご参考まで。
(もしリンクが切れていたら、「Mahler,Sym,10」でご検索ください。)