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広島市平和の推進に関する条例素案に対する修正意見

2021.02.03 04:33

庄原市でも平和推進条例の制定に向けた動きがあるようであり、世論の喚起を図るため、今回、広島市平和の推進に関する条例(仮称)素案に対する市民意見募集に関して、2021年2月2日に提出させていただいた修正意見を公開することにいたしました。


以下の修正意見を提出させていただきます。

1.前文「今日,核兵器の廃絶に向けては,世界的にその機運は高まっているものの,実現までにはいまだ多くの課題がある。」の後ろ側に次の文を追加。

「世界恒久平和の実現に向けても,過去の廣島と現在のヒロシマとを歴史の流れの中で繋げて捉え,加害か被害かを超えて過去の不正義と向き合う努力が不足していた点は否めない。歴史を遡れば,明治維新を平和裏には実現できなかったがために禍根が残り,その一端は繰り返される対外膨張となって現れ,その中で,廣島は原子爆弾の研究開発拠点でこそなかったが,一時期大本営が設置されたほどの軍都であった。」

2.続く「私たち広島市民は,こうした」の後ろ側に次の語句を挿入。

「過去と」

3.続く「現実を踏まえ,昭和20年8月6日の惨状と復興への道のり」の後ろ側に次の語句を挿入。

「,ならびに過去の不正義」

4.続く「を伝え残し,世界に対して,行政を始め各界各層の多くの人々と共に「絶対悪」である核兵器」の後ろ側を次のように修正。

「の廃絶と平和の構築のために」(後続の部分は修正無し:積極的に声を上げ,行動し,核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に努めることを決意し,この条例を制定する。)

5.第2条「この条例において「平和」とは,世界中の核兵器が廃絶され,かつ,戦争その他の武力紛争がな」の後ろ側を次のように修正。

「く,かつ,構造的暴力がない状態をいう。」

6.第3条の中の「、」を「,」に置換するか、またはその逆の置換により、全文統一。

7.第7条「⑵ 市民等が,原子爆弾による被爆の実相への理解を深めるとともに,」の後ろ側に次の語句を挿入。

「過去の不正義と向き合い,」

8.第7条「⑶ 原子爆弾被爆者の体験」の後ろ側に次の語句を挿入。

「,過去の不正義の体験」

9.続く「及び平和への思い(以下この号において「被爆体験」の後ろ側に次の語句を挿入。

「等」

10.続く「」という。)を世界に広め,かつ,これらを次世代に確実に伝え続けるよう,被爆体験」の後ろ側を次のように修正。

「等を継承及び伝承するのみならず,体系化及びソフトパワー化し,世界人類の間での普遍的な共有を図るための施策」

以上の提案については、「移行期の正義」という概念を多少参考にしたつもりです。ちなみに、第二次世界大戦後の権威主義体制期に権力によって行われた不正義の清算を進める台湾において、「移行期の正義」行政を司る「移行期正義促進委員会」(促進転型正義委員会)の公式ホームページ(https://www.tjc.gov.tw/)の「国内外移行期の正義関連リンク集」の中に、日本国内からは唯一「広島平和記念資料館」が納められていることも、参考になろうかと思います。

以上。よろしくお願いいたします。


修正後の全文:

広島市平和の推進に関する条例

 昭和20年8月6日,人類史上最初の原子爆弾が広島に投下され,広島の街は一瞬にして焦土と化し,壊滅,焼失した。当時,広島には約35万人の人々がいたと考えられているが,同年末までに約14万人が死亡したと推計され,生き残った人々も,急性障害だけでなく,様々な形の後障害に苦しめられている。

 さらに,被爆者に対する結婚・就職等での差別により,後に,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の適用を受けることが困難になるなどの被害もある。また,放射性物質を含んだ黒い雨による被害の議論は,いまだに続いている。

 廃墟の街となった広島は,「75年間は草木も生えぬ」と言われたが,堪え難い悲しみと苦しみを乗り越えて復興に立ち上がり,広島平和記念都市建設法の制定を実現させ,市民の英知とたゆまぬ努力,国内外からの温かい援助などにより,めざましい復興・発展を遂げていった。

 本市は,被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」との思いから,核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を願うヒロシマの心の共有を訴えてきた。さらに,国内外の多くの人々に,原子爆弾による被爆の実相に触れてもらうため,広島平和記念資料館や原爆ドームへの来訪を推進するとともに,放射線被ばく医療に対しても国際貢献をしてきた。

 また,被爆者の壮絶な体験と平和への思いを後世に伝えるため,被爆体験の継承及び伝承を行ってきた。

 しかしながら,被爆75年を迎え,被爆者の高齢化が一段と進み,被爆体験を直接聞き知る機会が失われつつある。また,市民による平和の推進に関する活動の担い手が高齢化し,核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を訴えることが難しくなってきている。今では,昭和20年8月6日に何が起こったか,知らない子どもたちもいる。

 今日,核兵器の廃絶に向けては,世界的にその機運は高まっているものの,実現までにはいまだ多くの課題がある。世界恒久平和の実現に向けても,過去の廣島と現在のヒロシマとを歴史の流れの中で繋げて捉え,加害か被害かを超えて過去の不正義と向き合う努力が不足していた点は否めない。歴史を遡れば,明治維新を平和裏には実現できなかったがために禍根が残り,その一端は繰り返される対外膨張となって現れ,その中で,廣島は原子爆弾の研究開発拠点でこそなかったが,一時期大本営が設置されたほどの軍都であった。

 私たち広島市民は,こうした過去と現実を踏まえ,昭和20年8月6日の惨状と復興への道のり,ならびに過去の不正義を伝え残し,世界に対して,行政を始め各界各層の多くの人々と共に「絶対悪」である核兵器の廃絶と平和の構築のために積極的に声を上げ,行動し,核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に努めることを決意し,この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は,平和の推進に関し,本市の責務並びに市議会及び市民の役割を明らかにするとともに,本市の施策の基本となる事項を定めることにより,平和の推進に関する施策を総合的かつ継続的に推進し,もってヒロシマの心である核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「平和」とは,世界中の核兵器が廃絶され,かつ,戦争その他の武力紛争がなく,かつ,構造的暴力がない状態をいう。

(本市の責務)

第3条 本市は,平和の推進に関する施策を策定し,及び実施する責務を有する。

(市議会の役割)

第4条 市議会は,本市の平和の推進に関する施策に関し,その機能を最大限に発揮するとともに,長崎市議会等と連携し,平和の推進に関する活動を行うものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は,本市の平和の推進に関する施策に協力するとともに,平和の推進に関する活動を主体的に行うよう努めるものとする。

(平和記念日)

第6条 本市は,人類史上最初の原子爆弾が投下された昭和20年8月6日を世界平和樹立への礎として永久に忘れてはならない日とし,原子爆弾による死没者を追悼するとともに世界恒久平和の実現を祈念するため,毎年8月6日を平和記念日とする。

2 本市は,平和記念日に,広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を,市民の理解と協力の下に,厳粛の中で行うものとする。

(平和の推進に関する施策)

第7条 本市は,平和の推進に関し,次に掲げる施策を策定し,及び実施するものとする。

⑴ 核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現を目指し,国内外の都市等との連携を図るための施策

⑵ 市民等が,原子爆弾による被爆の実相への理解を深めるとともに,過去の不正義と向き合い,平和について考え,平和の推進に関する活動を主体的に行うよう,平和意識の醸成を図るための施策

⑶ 原子爆弾被爆者の体験,過去の不正義の体験及び平和への思い(以下この号において「被爆体験等」という。)を世界に広め,かつ,これらを次世代に確実に伝え続けるよう,被爆体験等を継承及び伝承するのみならず,体系化及びソフトパワー化し,世界人類の間での普遍的な共有を図るための施策

⑷ 前3号に掲げるもののほか,平和の推進を図るために必要な施策

(年次報告)

第8条 市長は,毎年,平和の推進に関する施策の実施状況を市議会に報告するとともに,これを公表するものとする。

(財政上の措置)

第9条 本市は,平和の推進に関する施策を総合的かつ継続的に推進するため,必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任規定)

第10条 この条例の施行に関し必要な事項は,市長が定める。

附 則

1 この条例は,令和 年 月 日から施行する。

2 広島市役所事務休停日条例(昭和22年7月31日広島市条例第14号)は,廃止する。