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yoyo

朝倉かすみ『ほかに誰がいる』

2021.02.04 06:33

ある女の子に執着した一人の女の子の話。主人公の女子高生えりは、同じ高校のれいこと二人で一つになりたいと手を尽くす。最初は瑞々しい女の子の青春ものかと思いきや、だんだん不穏な雰囲気になりサスペンスの様相を帯びてきて、最後はおとぎ話のように閉じる。一言では表せないけれど、百合であるのは確か。

狭窄的でありながら他人事のように自分を見つめる一人称の語りが少女的でとても好きだった。自分の幸せのためにれいこと一緒になりたいのだとふっきれたえりが“ふつうのしあわせ”から離れていき、最終的に傍から見れば、れいこが「留学し愛する人と結婚した女の子」、えりが「精神を患い好きでもないおじさんの子を身籠った女の子」と対照的になるのが切ない。そんなえりが今わの際にれいこと一緒になる方法を見つけてそれを叶えるのがさらに切ない。

これを百合と言わずして何と言うという感じ。そして映像化されていないのが不思議。北海道の描写も綺麗だしいつ映像化されてもおかしくないと思っている。