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「夜、空をとぶ」ランダル・ジャレル モーリス・センダック

2016.10.07 11:30

長田弘さんによる編、訳の絵本シリーズ「詩人が贈る絵本」が幾つか入って来ましたので、その中から「夜、空をとぶ」を今日はご紹介します。

作者はランダル・ジャレル、そしてモーリス・センダックの二人です。

センダックについては説明は不要でしょう。当店でも度々紹介しておりますし、またセンダックの代表作「かいじゅうたちのいるところ」については当店のサイトのブログにて長い考察を書いて紹介したこともあります。もしご興味があれば読んでみて下さい。

お話を書いたランダル・ジャレルはアメリカの詩人/作家ですね。ジャレルの日本語に翻訳されている作品は少なく、センダックが挿絵を描いている三冊の児童文学作品がその紹介の中心となっているのが現状でしょうか。

その三冊のうちの一冊が本書「夜、空をとぶ」です。

お話は、あるところに住む一人の少年(デイヴィッド)は夜になり、皆が寝静まると空をとぶことができるようになる、というお話です。

真夜中にデイヴィッドは浮かぶように空を浮遊し、父親や母親の夢を覗き、庭へと出ます。

そこで猫と話し、ネズミたちの会話を聞き、またふわふわと飛んでいき羊のたちの見る夢を覗いて、すると一羽のフクロウと出会います。

フクロウはデイヴィッドを自分の巣へと案内し、そこで待っていたヒナたちとデイヴィッドにお話を聞かせるのです・・。

この絵本は全体的に静かで不思議なトーンでお話は進んでいくのですが、読んでいるとどこか懐かしい感じがしてきます。こうした夢を、自分も何度も見たことがあった、そんな気がしてくるのです。

このお話に出てくる幾つもの要素「夢」「浮遊」「母と子」などなど、精神分析学的に取っ掛かりが多い要素が溢れていることも一因でしょうが、センダックの絵による効果も大きいと思われます。

白と黒の細い線だけで描かれたその絵、特にセンダックが自身とその母親を描き込んだという見開きの大きな絵は、幼い頃の夢そのままのように、子供の頃に見た夢の全てが描かれているかのように感じます。

こうしたカテゴライズをするのはあまり好きではないのですが、完全に大人向けの絵本だと思います。

いつか子どもだった、すべての大人のための絵本と言って良いのではないでしょうか。

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