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増田勇一のmassive music life

デイヴ・グロール編集長、というひとつの理想。

2021.02.08 23:50

2021、ロックの現在地を鳴らせ! デイヴ・グロールが表紙を飾っている『rockin'on』誌3月号には、こんなコピーが躍っている。思わず「さすが!」と言いたくなった。いや、もちろんそのコピーは編集部の誰かにより捻り出されたものであるはずなのだが、まるでデイヴ自身の言葉であるかのように感じられたからだ。

当然ながら、巻頭特集はFOO FIGHTERS。2月5日に発売されたばかりのニュー・アルバム『MEDICINE AT MIDNIGHT』について語られたデイヴのロング・インタビューが掲載されている。それに続く形で掲載されている『フー・ファイターズ戦記』という読みものを、今回、書かせていただいた。全8ページ、文字量は日本盤CDのライナーノーツ2本ぶんくらい。FOO FIGHTERSとデイヴについてはこれまで原稿執筆の機会があまりなく、書きたいことが自分の中で長年にわたり蓄積されていたため、逆になかなか纏まりきらず、結果的には結構な難産となった。是非このアルバム、そしてそれを解き明かすインタビューと共にお楽しみいただければ幸いだ。

デイヴについて常々思っていたことのひとつに、「この人、ロック専門誌作ってくれないかなあ」というのがある。冒頭に書いたように「さすが!」と感じたのは、デイヴが編集長だったなら、まさにこんなタイトルの特集を組むんじゃないかと思えたからでもある。FOO FIGHTERSもいまや四半世紀の歴史を持つバンド。上を見ればその倍くらいのキャリアを持つ伝説たちがたくさんいて、下の世代にはロック然としたたたずまいをしたバンドが少なくなり、アルバムという概念すら薄まりつつある。そんな狭間で「ロックは今、ここに居るよ!」というのを示している稀有な存在のひとつが彼らだと思えるのだ。

そうした無言の訴えは自分たちの存在証明ばかりではなく、失われるべきではないものを次世代へと継承させていくことにも繋がっていくのではないだろうか。そして実際、『rockin'on』の誌面には、彼らの記事と連動する形で、新世代アーティスト特集なるものが掲載されている。素晴らしい。もちろんここでいちばん重要なのはFOO FIGHTERSのアルバムの充実ぶりであるわけだが、彼らからバトンを引き継ぐべき世代を引っ張り上げていくことも同じくらい大切だと思う。デイヴが編集長を務める雑誌があったならば、もはや「俺たちのルーツはこれだ」ではなく「俺たちが次にツアーに連れていきたいのはこのバンドだ」という記事を組むのではないかと思う。いや、もちろんこれは勝手な想像というか、だいぶイメージを刷り込まれたうえでの思い込みに過ぎないのだが。

ところで、この『rockin'on』誌3月号が出た直後、英国の『CLASSIC ROCK』誌の2月号をようやく手に入れて、その内容に仰天させられた。FOO FIGHTERSがゲスト・エディターという形で誌面作りに関与しているのだ。いや、もちろん実際に彼らの意見がどれほど反映されているのかはわからない。ただ、まさしくFOO FIGHTERSに乗っ取られたかのような誌面を眺めながら「ああ、何処の国にも同じようなことを考える人はいるものだな」などと思わずにはいられなかった。

というわけで、こちらの記事、是非読んでくださいませ。もちろんインタビュー記事も、新世代アーティスト特集も。

『CLASSIC ROCK』誌2月号の表紙と、デイヴによる「まえがき」のページより。