「プルースト効果」ー香りで記憶を呼び起こす。
ここ数日は暖かい日が続いていますね。
そんな時、外を歩いていると、ふと「自動車の排気ガスと土のにおいが混じったようなにおい」を感じました。
そして瞬時に、小さい頃の、ある「早春」についての記憶を思い出しました。
- 2〜3月、まだちょっと肌寒いとき
- お友達と外で鬼ごっこをしていて、汗を少しかいている
- 晴天ではなく曇りで、すこし湿度が高い
- 暖かくなって外で思いっきり遊べることが、とにかく嬉しくて、必死に遊んでいる
- 遊んでいるすぐそばには道路もあり、車の排気ガスの臭いがする
- 草花や雑草も生えてきて、土のにおいがする
これが、私の「早春」の記憶です。
その記憶が、ふとした香り(というか臭いw)で瞬時に思い出されました。
この香りを嗅ぐと、「よっしゃ春がキタ〜」と、いい歳のオッサンなのですが無性にワクワクしてきてしまうんです(恥)。
実はなんと、五感の中で嗅覚だけが、記憶が保管されている海馬に、直接情報を送ることができるみたいですよ。
(他の嗅覚以外の五感による情報は、他の器官を介して海馬に運ばれます。)
この現象は「プルースト効果」と名付けられています。
フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という小説の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際、その香りで幼少時代を思い出す場面があり、その描写が元になっていると言われています。
他にも私は、あるメーカーの泡タイプのハンドソープを使うと、長女を出産した直後の入院生活が瞬時に蘇ってきます。
産院でそのハンドソープが使われており、その香りがすると、出産直後、四苦八苦〜悪戦苦闘した記憶が思い出されるのです。
一昔前のミュージカルアニメーション映画『アナスタシア』でも、記憶喪失の主人公アーニャが、祖母のペパーミントの香水の香りがきっかけで、自分がロマノフ王朝の皇女アナスタシアだと思い出す場面がありましたね。
また、瑛人さんの楽曲『香水』での有名な一節が、まさにこのプルースト効果なんですね。
人間の脳って面白い!
嗅覚が特別なのは、肌感覚で理解できます。
お茶室の中での香りと言えば、お香ですね。
とても素敵な香がたくさんあります。
私は白檀のお香をかぐと、茶室でお稽古をしている、ピリっとした空気感を思い出します。
また、お茶室の中でダイレクトに香りを嗅がなくても、ほかの五感を通して、香りを記憶の中から呼び起こすこともできますよ。
さらにこのプルースト効果、マーケティングにも活用されています。
ある自動車メーカーでは、リピートして購入してもらえるように、新車に独特の香りをわざとつけています。
香りには記憶と、その時の感情が強く結びついていることから、ターゲットに強く訴求することができるんですね。