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人間魚雷(1953)I SETTE DELL'ORSA MAGGIORE

2021.02.15 15:05

〈プレスより〉


スタッフ

監督…………ドイリオ・コレッティ

構成指導……マルカントニオ・プラガディン

技術指導……ルイジ・デ・ラ・ペンネ

撮影…………アルド・トンティ

音楽…………ニーノ・ロータ

一九五三年ポンティ=デ・ラウレンティイス超大作


キャスト

特別攻撃隊員…………生存者自身六名

マリオン………………エレオノラ・ロッシ

シルヴァーニ大尉……ピエル・グレソワ

ラヴァンティーノ(連合国側諜報員)…………ポール・ミュラー

イタリア海軍部隊特別出演


★解説

 一九四一年末、日本海軍の真珠湾攻撃と期を同じうして、マルタ、ジブラルタル、アレクサンドリア等の地中海沿岸の英海軍基地を海底から猛攻撃して、クイン・エリザベス、ヴァリアントほか数艦を撃沈したイタリア海軍の特殊潜航艇”人間魚雷”隊の輝かしい戦記を、当時の生残り隊員六名の主演を得て伊海軍後援の下に再現した異色作が本映画である。

 監督は「シーラ山の狼」(マンガーノ主演)で好調を示したドイリオ・コレッティで、同監督には、今次大戦の伊海軍史の編集者マルカントニオ・ブラガディンが絶えず協力し、戦記の忠実を期した。

 撮影は「ポー河の水車小屋」「ヨーロッパー九五一年」等の名キャメラマン、アルド・トンティの担当。此の映画の最大の魅力たる海中攻撃シーンや戦闘場面の撮影には、かって本作戦に参加し九死に一生を得たデ・ラ・ペンネ大尉が自ら技術指導を行い、異常な迫力を生むのに成功している。

 昔楽は「平和に生きる」のヴェテラン、ニーノ・ロータが受持った。

 主演者は、今次大戦で金メダルと四つの銀メダルを受けたルイジ・フュルラーロ以下、生残り隊員六名が実際に出演するほか、最近伊映画で売出した仏俳優ビエル・グレソワが、デ・ラ・ペンネ大尉となって(本映画ではシルヴァーニ大尉の仮名で)登場する。

 また、最近その圧倒的肉体魅力によって彗星の如くスクリーンに出現した人気女優エレオノラ・ロッシが、ジブラルタルの酒場の歌姫に身をかくしてイタリア側のスパイを演ずるのも、一点の色どりとして興味ある点であろう。それから「街は自衛する」で貧乏書家に扮したポール・ミュラーが、連合国側のスパイとして顔を出している。

 なお、この映画は本年二月十三日ローマで初公開以来、非常な反響を巻き起している最新の問題作である。


★あらすじ

 戦いの日の或るタ暮れ、伊海軍伝統の水雷艇隊は、その快速を利して防衛堅固なマルタ英軍港を攻撃すべく基地を出撃した。同時に隊員二名は港の防潜網にとりついて、爆雷を装置していた。しかし勇敢なる彼等も、英軍が初めて使用する新兵器、レーダーの出現を予期しなかった。やがて猛烈な英軍の十字砲火がひろがって………

 その後まもなく、地中海沿岸の一孤島に、新作戦計画にもとづく秘密基地がもうけられ、伊海軍えりぬきの将兵が到着した。その中にはシルヴァーニ大尉もまじっていた。こうして、特殊な潜水服に身をかためた隊員たちは、連日連夜、海底攻撃の烈しい訓練を重ねていった。

 訓練を終えた特攻隊員たちは、ジブラルタル英軍港ちかくの秘密基地へ秘かに移動した。此処の附近の酒場には、マリオンという美しいイタリア側のスパイが、歌姫に身をかくして諜報勤務を続けていた。彼女はシルヴァーニ大尉と緊密な連絡をとりつつ、近づく新作戦行動に身を挺して協力したが、彼女の献身はいつしかシルヴァーニに対する愛情へと変わっていった。

 やがてジブラルタル軍港突入の時が来た。夜陰に乗じて各個に港内に潜行した隊員たちは、碇泊中の艦底に這いついて、つぎつぎに時限爆雷を仕掛けていった……一発、二発、相ついで轟音がジブラルタルの町をゆすぶる。サイレンの音が闇夜にこだまし、探照燈が光る。作戦は完全に成功した。敵の哨戒艇の爆雷と機銃弾の作裂する中を一人、ニ人と隊員が、港外の海岸へよろめきながら這い上って来る。轟音を聞いて酒場から海岸に駆けつけたマリオンは、やっと隊員を救助し得た。だが、以前からマリオンの行動に不審の念を抱き、海岸まで彼女を尾けて来た連合国側諜報員のラヴァンティーノは、拳銃を突きつけてマリオンに迫った。と同時にマリオンの拳銃も火を吐き、二人は海岸の砂の上にくずれていった。

 一九四一年十二月十八日の夜半、イタリア潜水艦シレー号は、アレクサンドリアの英軍港に近い海底に沈下した。間もなくシレー号の艦上から、特殊潜航艇三隻が離れて行った。これこそ最近完成したばかりの新兵器、人間魚雷の初陣の姿であった。

 シルヴァーニ大尉をはじめ計六名の隊員は、二名ずつ三隻の人間魚雷に跨がって、英海軍の誇る最強艦隊へと迫っていった。目ざすは戦艦クイン・エリザベス、ヴァリアント、及びサゴナである。一同の胸は高鳴った。が、それも束の間、英哨戒艇隊の必死の爆雷攻撃と、凄じい機銃掃射の嵐がやって来た。一同は海底の苦しい前進を続ける。もはやモーターはかけられないのだ。

 さっきの爆発で傷ついた相手のナルディー等潜水兵を、海面に残して来たシルヴァーニ大尉は、独りで艇をひきずって行った。ともすれば息が切れそうになる……頭がガンガンする……もう一息だ。やがて頭上には黒々と戦艦の巨大な腹が見えて来た……

 やっとのことで、彼は五〇〇キロ爆雷を敵戦艦の底にとりつけ、最後の力をふりしぼって、信管を引抜いた。しかし、任務を果した彼の身体は、意識を失ったまま海面へ浮んでいった…………