特集:土壌汚染に悩む中小事業者へ③~指定調査機関に聞く:㈱エイチテック
指定調査機関㈱エイチテック(指定番号2016-3-0005)
代表取締役 岡田宏さんに聞く
対象地域:全国
中小事業場等が土壌汚染に向き合う時のポイント等を土壌汚染対策法に基づく指定調査機関に聞くシリーズ。今回は、土壌汚染調査用の掘削機13台を保有し、汚染土壌のサンプリング調査で業界でも屈指の実績を持つ㈱エイチテック(広島県福山市川口町1-16-35)代表取締役の岡田宏さんに中小事業場や工場、土地所有者が土壌汚染に向き合う時の課題やポイント、向き合い方について話を聞きました。同社では最近、汚染範囲を絞り込む特殊な調査装置も導入し、土壌汚染の浄化対策費用の削減に繋げる取り組みも進めており、注目されます。(聞き手:エコビジネスライター・名古屋悟<ECO SEED代表>)
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◆法対象外で調査義務ない調査で汚染判明し、資金難から依頼主が姿くらましたケースも◆
聞き手:御社は自走式のボーリングマシン13台を軸に土壌汚染調査を手掛けています。数多くの経験の中で、中小事業者の土壌汚染調査・対策で印象的だった事例はどのようなケースがありますか?
岡田氏:小規模事業者からの依頼を受けて調査した事案で、実際に汚染を確認したところ依頼主が姿を消してしまったことがありました。このケースは土地の売買に絡むもので、買い主側の希望で売り主が調査を依頼してきたものです。土壌汚染対策法等の対象にならないケースでしたが、汚染がなければ購入するというもので、買い主側も基準超過の土壌汚染が実際に出るとは思っていなかったようです。しかし、調査の結果、基準超過が判明したことで売るにはさらに詳細な調査を実施し、対策が必要な状況になりましたが、売り主はその前に姿を消してしまいました。当然、当社では調査費を回収することもできませんでした」
聞き手:そうした事案の課題は何だと考えていますか。
岡田氏:このケースもそうですが、中小事業者の場合、やはり資金面での負担が大きな課題になっていると思います。近年は法対象ではないケースについては、不動産取引において地歴調査の結果、人為由来の汚染がないと判断できる土地についてはサンプリング調査をせずにOKとする流れになっているように思いますが、土壌汚染対策法が施行された2003年からリーマンショックが起きた2008年頃までは時折起きていました。当時は、土地の売買において、土壌汚染対策法の対象ではないのに何が何でも土壌汚染調査、その結果に基づく対策が求められる流れがあったことによって、土地売買を断念したり、調査、対策を実施したものの事業継続に大きな影響を残してしまったりするケースがありました。
資金的課題に対し、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染対策基金という仕組みがありますが、これはあくまで法対象であり汚染原因者が不明で資金的に困っている土地所有者を救済する仕組みであり、一般的に使えるものではありません。ですが、実際には土壌汚染調査、対策費用の捻出に苦慮し、汚染の可能性が高くても対応できず、放置してしまうケースもありますので、何か互助会制度のような仕組みがあっても良いように思います。
また、依然として汚染土を掘削して清浄土で埋めなおす掘削除去・搬出処理が対策工事では主流ですが、費用負担が少なくありません。例えば、重金属類等の場合、土壌中の重金属類を溶出しないようにする不溶化工法などもありますが、有害物質が地中に残ることを嫌う傾向はいまだにあります。その辺りも今後、理解が進めばと思っています。
◆本格的調査をしなくて済むなら“しない”事を前提に依頼に向き合う◆
聞き手:御社の技術力等を踏まえ、資金的な課題等を抱える中小事業者の土壌汚染問題に寄与できると思うものにはどのようなことがありますか。
岡田氏:当社は土壌汚染調査を生業としていますが、当初より法対象ではない場合、本格的な調査をしなくて済むなら、しない事を前提に依頼に向き合ってきました。この考えは業界の中では一般的ではないかもしれませんが、実際に調査をしないで済むケースが実は多いというのが実感です。
不動産取引等の場合、現在も買い手側の要望で土壌汚染調査の結果が求められ、売り主側から調査の依頼を受けることがあります。まず地歴調査を実施する訳ですが、地歴から見て過去に有害物質を取り扱った履歴もないし、法対象でもないのに、どうしても買い主側の希望で土壌の分析結果が欲しいというケースがあります。その結果、自然由来の重金属類等が検出されてしまい、売り主、買い主双方が“どうしよう…”という事態に陥ってしまったケースもありました。こうなると、売り主側のデメリットが大きくなるのはもちろんですが、買い主側にとっても購入後の土地開発スケジュールが大幅に変わるなどメリットはあまりありません。
ですので、法対象ではないし、地歴で汚染の可能性が低いのに土壌試料の分析結果が求められるようケースでは、分析結果を希望する買い手側に地歴の結果を納得してもらえるようにお手伝いさせていただくこともあります。知識を持つ指定調査機関がコンサル的立場として関係各方面にとってより良い解決策を提案していく必要があると考えています。
聞き手:事業を行っている場所で土壌汚染の可能性があって悩んでいる中小事業者等へのアドバイスを。
岡田氏:先ほども話した通り、当社では可能なら本格的調査をしないで済むことをベースに、依頼主にとって良い方向を考え、提案させていただきます。資金的な問題も含め、早い段階でいろいろな方法を検討し、対策が必要になった場合でもどのような対策工法が依頼者の負担を軽減できるのかを考えています。
冒頭に紹介があったように当社では土壌サンプリング用の掘削機が13台あり、スタッフは本格的な土壌汚染調査の経験も豊富です。また、これは石油類の汚染のみの対応ですが、OIPという地中の汚染範囲を特定する装置も導入しています。これにより、地中のどこに石油類が広がっているのかを特定し、対策する範囲を絞ることで対策費用を削減できます。
当社は広島県福山市に本社を、東京に東京本部を置き、日本全国に対応できる体制をとっています。まずはご相談をいただければと思っています。(終わり)
※㈱エイチテックのホームページは以下アドレスを参照ください。