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Perspective's Blog

eCTD : #1 eCTDの概要

2021.03.29 01:00

はじめまして。パースペクティブの多田です。本ブログの主テーマである「規制」について、主に医薬品の承認申請フェーズの切り口から見た記事を担当します。

承認申請フェーズに関わる規制には、様々なものがありますが、その中で、「eCTD」を取り巻くテーマをピックアップして解説していきます。


eCTDとは

eCTD(Electronic Common Technical Document、電子化コモン・テクニカル・ドキュメント)は、ICH(*1)で合意された、規制情報を当局に提出するための電子フォーマットです。また、その仕様に従って作成する電子ファイルそのものを指す場合もあります。

CTDは、医薬品の承認申請のための国際化共通資料です。承認申請書に添付すべき資料の編集作業の重複を軽減し、日米EUにおける新医薬品に係る情報交換を促進し、もって有効かつ安全な新医薬品の迅速な提供に資することを目的として、同じくICHにおいて合意されたものです。

そのCTDを、電子的に当局に提出するために定められた仕様が、eCTDです。

eCTDについて、eCTD通知(*2)では、「eCTD は規制情報を企業から当局に送付するためのインタフェースと定義され、同時に電子化申請資料の作成、審査、ライフサイクル管理および保管を容易にすることを視野に入れている。」として定義されています。


日本におけるeCTDの運用

日本では、2005年4月にeCTDによる新医薬品の承認申請受付が開始されました。当初はeCTD により承認申請を行った場合でも、併せて副本として紙媒体による資料を1部提出することが定められていましたが、2009年に副本としての紙資料の提出が廃止されると、eCTD申請が加速しました(*3)。2019年度には200件のeCTD正本提出が行われており、受付開始から15年経った2020年4月には、新医薬品の承認申請におけるeCTD形式での提出が義務化されています。

現在、国内で運用されているeCTDのバージョンはv3.2.2ですが、2022年4月からeCTD v4.0の運用開始が予定されています。eCTD v3.2.2とv4.0については、今後解説していきます。


eCTDとCSV

申請者は、医薬品の開発根拠や各試験の結果を説明する資料をeCTDとしてまとめ、当局に承認申請書に添付する資料として提出します。つまり、医薬品の承認申請にあたって提出する資料として、電磁的記録を利用する場合に該当し、ER/ES指針(*4)の適用範囲となります。ER/ES指針では、電磁的記録を利用するシステムは、CSVによりシステムの信頼性が確保されていることを前提としているため、eCTD編纂プロセス(eCTDを作成するプロセス)は、CSVを考慮すべきプロセスとなります。


次の記事では、「CTD」について、説明していきます。


*1:ICH

International Council for Harmonization of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use、医薬品規制調和国際会議


*2:eCTD通知

平成15年6月4日付医薬審発第0604001号厚生労働省医薬局審査管理課長通知「コモン・テクニカル・ドキュメントの電子化仕様について」 ⇒eCTD v3.0

 平成16年5月27日改正(改正通知)⇒eCTD v3.2

 平成21年7月7日改正  (改正通知)⇒eCTD v3.2.2

補足1)eCTD通知の別添として、ICHにて作成されたガイドラインの日本語訳「コモン・テクニカル・ドキュメントの電子化仕様」が添付されています。初回の通知では、eCTD v3.0の仕様とともに、将来的にeCTDでの資料提出が可能となることが示されました。その後、平成16年(2004年)5月にeCTD v3.2にバージョンアップし、平成17年(2005年)4月から国内の受付が開始されました。平成21年(2009年)7月には、現在運用中である eCTD v3.2.2にバージョンアップしています。

補足2)eCTD関連通知は、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)のHP「ICH-M8 eCTD(電子化コモン・テクニカル・ドキュメント)」にまとめて掲載されています。


*3:PMDA「eCTD国内情報提供ページ」内の「eCTD国内運用に関する参考資料」>「eCTD提出状況」より、2008年までの正本申請数は年間数件程度でしたが、2009年には年間26件となり、その後急激に提出数が増えていることがわかります。

また、JPMA(日本製薬工業協会)の「eCTD作成の手引き」にも、副本として紙媒体による資料を1部提出することを定めていた事務連絡が2009年に廃止されると、eCTD正本申請化に大きな影響を与えたことが記されています。


*4:ER/ES指針

平成17年4月1日付け薬食発第0401022号厚生労働省医薬食品局長通知「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」