「顧客視点」と「実績」という、前進のための原動力。 vol.2
【ペットと人のニューノーマルを創造し、拡張するこれからのビジネスの作り方 #3 】
ゲスト:『水曜どうでしょう』チーフディレクター 藤村忠寿 氏
■楽をしたいから頭を使う
生田目:いま藤村さんがおっしゃったような、既存の組織や業界に対する疑問は、いつ頃から芽生えたのでしょうか。
藤村:僕は入社した最初の頃、北海道テレビの東京支社にいて、広告代理店の人たちを相手にCMの枠を売る仕事をしていたんです。いま言ったような考えは、その当時から持っていました。
生田目:そんなに早くから。
藤村:僕は基本的に楽をしたいんです、仕事においては特に(笑)。無駄なことをしたくない。そこからすべてが始まっています。ああしろこうしろと言われるたびに、「それは本当に必要なのか?」と思考するタイプなんです。
だから、「営業で広告をとってこい」と言われても、「それを一生懸命にやっても、果たして稼げるのか?」と思ってしまう。視聴率の追求はローカル局では限界がありますしね。
それで「ほかの方法でどうやって儲けるか」をあれこれ考えるわけです。
生田目:私はテレビ業界には詳しくないのですが、そういう既存のビジネスと違うやり方を発想できる人と、そうじゃない人の違いはどこにあると感じていらっしゃいますか?
藤村:どんな会社でも、「この部署はこういう仕事をするべし」という流れが基本的にありますよね。みんな、その流れに落とし込んで考えようとするんですよ。テレビ局だったら、「ディレクターはこうすべきだろう」と考える。僕はそういうふうには発想しない。だって、楽をしたいから(笑)。
自分だけのメソッドを作ったほうが稼げるし、競争しなくていい。そこだと思うんですよね。みんな一生懸命に仕事はしているんですけど。
生田目:分かります。一生懸命にやることと成果を出すことは異なりますよね。
藤村:一生懸命やれば報われるっていう発想は、実は頭を使っていないんです。楽をしたいっていう人は、まず「楽をするための方法」を考えないといけない。その違いが大きいんじゃないでしょうか。
もちろん、自分が作るものには誰よりも時間をかけますよ。僕にもそういうところはあります。むしろ、そこを全力でやるために、何をやるべきで、何をやらなくていいかということを考えている。
生田目:番組でいえば、「水曜どうでしょう」を続けるために、「どうやって視聴率を気にせずに儲けられるか」を考えたわけですね。
藤村:そうです。広告に頼らず、継続的にお金を儲けられる仕組みをいかに作るかということです。
生田目:完全に経営者ですよ、その考え方は(笑)。テレビ局という組織の一員としてではなく、ご自身が主体になって、事業をいかに運営するかという視点をもってらっしゃるということですから。人気番組のディレクターさんとの対談、しかも業界も違うのでどんな話になるかと少し緊張していたのですが、中小企業の経営者仲間と話しているような気になってきました(笑)。