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映画レビュー!映画『ナタ転生』 新たな「中国神話」、アニメーションで日本上陸!

2021.02.19 04:00

中国で興行収入70億円超えを突破した中国アニメ『白蛇:縁起』(2019年)の制作スタジオ・追光動画が制作、アヌシー国際アニメーション映画祭(2020)でWIP部門にノミネートなど、全世界から注目を集める3DCGアニメーション映画『ナタ転生』(※読み:なたてんせい)(原題『新神榜:哪吒重生』)。中国での公開は2月12日(金)に公開されており、日本ではいよいよ2/26(金)に公開されます。

特に本作は近年、CG技術の高さでは大きく注目を浴びている中国作品であることに加え、かつこの国ならではの「スケールの大きさ」が存分に織り込まれた、見ごたえたっぷりのアクション活劇。さらに物語には中国の神話エピソードを取り入れ、エキゾチックながらも現代感覚に溢れた魅力たっぷりの作品に仕上がっており、公開が大いに期待されます。今回はこの『ナタ転生』のアピールポイントに迫ってみます!


※「ナタ」とは

中国の古代小説「封神演義」に登場し、3000年以上前の世界で絶大な権力を持つ一族・東海龍王の息子・三太子に歯向かい死闘を繰り広げ、勝利したほどの強い魔力を持つ7歳の少年神。

しかし、息子を殺され激怒した東海龍王が「町の百姓たちの命が惜しければ、自らの死で罪を償え」と卑怯な脅しを行い、ナタは百姓たちを守るために自ら命を絶ったといわれています。

【『ナタ転生』あらすじ】

現代。運送屋で働くバイク好きな好青年、李雲祥(リ・ウンショウ)は、時に自慢の改造バイクで縦横無尽に駆け回り、仲間と共に充実した日々を送っていました。しかし一方で、街では徳家という大きな財閥勢力が幅を利かせ、貧富の差も大きく貧しさで苦しい生活を強いられる人もたくさんいました。

そんな生活を嘆いていた雲祥はある日、街中で徳家の息子に目を付けられ追い掛け回されます。雲祥が何とか逃げ切ったと思ったのもつかの間、彼は不思議な力を受け大きなけがを負ってしまいます。

徳家の主の正体は東海龍王、そして雲祥に突っかかっていったのはその息子・三太子の生まれ代わりである三公子で、その不思議な力も三公子の仕業だったのです。絶体絶命のピンチに陥った雲祥。ところがもはやこれまでと思われた瞬間、雲祥もまた自ら不思議な力を発揮し三公子に反撃。

その姿を見て三公子は、雲祥がナタの生まれ変わりであることに気づきます。しかし雲祥はそんなことを知る由もなく、その後大切な仲間や、市民たちを守るための壮絶な戦いに飲み込まれていくのでした……。


【ここに注目!】

街を牛耳る巨大な悪の組織に立ち向かう反逆者。いわゆるヒーローモノとしてはテッパンともいえる物語構成です。

例えば中国、香港あたりのアクションは、例えば近年の『イップ・マン』シリーズから、昔はジャッキーチェンの初期カンフーバトルシリーズなどのように、その時代毎に征服、植民地的存在として現地の人が虐げられる中、絶対的ヒーローが登場するといった構図が見られましたが、本作はある意味このフォーマットを踏襲しています。

しかしそこに「ナタ」という存在にまつわる古来の神話をエピソードとして用い、「転生」というワザでこれをうまく物語に盛り込んでいるところに、まさしく中国ならではというアピールポイントを見せています。

「ナタ」というヒーローは中国以外の国の人からはそれほど知名度がありませんが、2019年の3DCGアニメ『ナタ~魔童降臨~』の大ヒットを見ても、中国神話のヒーローの一人として国内で大きな人気を誇るものであることは想像に難くありません。

また一方で、この「ナタ」というキャラクターは、神話の中ではとある領土の中で絶大権力を持つ一族の息子を殺してしまい、その領土内で物議を醸してしまったというエピソードもあり、本作の主人公である雲祥の持つ「若さゆえの暴走」的な性格に同期するところもあります。

この点においては通例的に言われる正義性、正義感というものに疑問すら生じさせる、「絶対正義に異論を唱える」ような近年のヒーロー像を見せており、現代中国の若者たちが持つ感覚も見えてくるようで、非常に興味深いところでもあります。

鮮やかな3DCGの物語には先進性を感じますが、一方で「中国風スチームパンク」的なデザイン、そしてこのように物語に埋め込まれた思いのような部分が見えてくる作風は、国外の人間の目線としては非常に関心をそそられるものであります。


【あわせてここが見どころ!】

場面写真や予告映像からは、とにかくその画のテイストに目を奪われることでしょう。いわゆる3DCGという種類の映像ですが、人物のリアリティーを追求するというよりは、アニメ、漫画らしいキャラクターの姿を追求した上で質感や動きといったディテールにこだわっています。

この作品におけるバランス感覚は、ある意味近年のディズニー関連の3DCG作品に似た感覚もあるでしょう。質感、リアリティーを追求しながらもどこかに優しい雰囲気、肌触りのよい空気感を描いた雰囲気がディズニー作品にはあります。ところが、本作ではディズニー作品ではありえないだろうと思われるポイントもうかがえます。

それはたとえば激しいバイオレンスシーン。『ナタ転生』は、悪者が善良な市民を虐げるシーンがありますが、ある意味1979年の映画『マッドマックス』を髣髴するような残虐性すら見えます。しかしその中で本作はそれを作品の持つ「優しく肌触りのよい空気感」を保つことに、様々な配慮をした様子もうかがえます。

バイオレンスな雰囲気をそのまま痛々しく見せることは簡単かもしれません。しかし本作は敢えて新たなアプローチに変えるようチャレンジしている気風も見せており、画に対する揺るがないポリシーを作り上げている様子が垣間見られ、実写とアニメ、どちらともカテゴライズされない新たな映像世界を作ろうとする気構えすら見えてくるようです。

昨年日本ではアニメ映画『鬼滅の刃』が社会現象になるほどの大きな話題を呼び大ヒットを記録するなど、近年顕著に見られるアニメ文化の拡大に拍車がかかった状況で、2021年も年明けから映画『銀魂 THE FINAL』の動員数100万人越えやテレビ放送で話題を呼んでいる『呪術廻戦』などの「ポスト『鬼滅』」を狙う作品も多く登場しています。

一方である意味本作はこうした日本の作品として並んで登場しても遜色ない印象もあり、是非公開後の反響には注目したいところであります。


Tex:ナン!でもニュース!!編集部


【制作スタジオ】

追光動画(Light Chaser Animation Studios)

2013年3月、中国北京で設立。3DCGアニメーション制作会社。

代表作『小門神(The Guardian Brothers)』(2016)、『阿唐奇遇(Tea Pets)』(2017)、

『猫と桃源郷(Cats and Peachtopia)』(2018)、『白蛇:縁起(White Snake)』(2019)。

『白蛇:縁起』は70億円超の興行収入を記録して大ヒット。

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【公開表記】

タイトル:『ナタ転生』

原  題:新神榜:哪吒重生(New Gods:Nezha Reborn)

公開表記:2021年2月26日(金) 緊急公開決定

コピーライト:(C)Light Chaser Animation Studios

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監督 ZHAO Ji(趙霽)

脚本 MU Chuan(沐川)

プロデューサー LU Xi(路晞)

出演 YANG Tianxiang(楊天翔)/ZHANG He(張赫)/XUAN Xiaoming(宣暁鳴)/LI Shimeng(李詩萌)

制作 追光人動画設計(北京)有限公司

配給 チームジョイ株式会社

2021年|中国|中国語|日本語字幕|DCP|カラー|117分

公式サイト:www.nezha.jp

2021年2月26日(仮)公開決定!! TOHOシネマズ池袋/上野 順次公開