キミカ特集③ 海藻がカギを握るカーボンニュートラル と キミカからのメッセージ
TIPSが『SDGs・ダイバーシティ』をテーマに自ら取材し、発信するWEBメディア RECT。第二弾は、2020年末に行われた 第4回ジャパンSDGsアワードで、特別賞(SDGsパートナーシップ賞)を受賞した株式会社キミカを取り上げます。国内で唯一「アルギン酸」という物質を製造する同社ですが、一体どのようにSDGsに取り組んでいるのか、そして「アルギン酸」とはなにか… 同社代表取締役社長 笠原文善氏にお話をうかがいました。すると、キミカの努力と節約の歴史、他社とは全く異なるSDGsへの関わり方、そして、アルギン酸がとても身近で、可能性にあふれた物質であることがわかりました!最終回となる第3回では、カーボンニュートラルのカギを握る海藻のハナシと、笠原社長からのメッセージをまとめます。
■ 2050年 日本のカーボンニュートラルのカギは「海藻」
昨年10月、菅首相が2050年に日本のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。カーボンニュートラルは、日本語で炭素中立とも表現され、排出される温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガス)を削減するとともに、吸収・除去される温室効果ガスの量を増やすことによって、排出量と吸収・除去量を同じにすることを意味しています。
技術の進化や行動の変化によって、二酸化炭素の排出量を減らすことはできますが、二酸化炭素の排出をなくすことはできません。そこで期待されるのが、樹木や海藻などが二酸化炭素を吸収し固定する力。陸上の生物が炭素を吸収し、固定・貯蔵することを『グリーンカーボン』、海洋の生物による炭素の吸収・固定を『ブルーカーボン』といいます。なかでも、日本のカーボンニュートラルのカギになるのが “ 海藻の二酸化炭素固定力 ”。海藻は、地上に生えている植物の5倍、二酸化炭素を固定する力を持つと言われています。これからは国家戦略として、海洋植物に二酸化炭素を吸収してもらうことでカーボンニュートラル社会の実現を目指し、日本中で大きく育つ海藻を養殖していくことが計画されているそうです。
■最後に ―ジャパンSDGアワード受賞を振り返って
私たちキミカは製造業なので、ボイラーも炊きますし、水も電気も使います。法令やコンプライアンスの範囲内だとしても、化石燃料を燃やして、排水を出すなど、環境に負担をかけていることをずっと気にしてきました。しかし、製品を必要としている人がいるので、工場を止めるわけにはいきません。これは、環境と経済を両立するうえで、多くの企業が直面する課題だと思います。そんな中で、社内の若い人たちから、「他に使い道のない漂着海藻から付加価値を生み出し、チリでも日本でも地域に貢献するキミカの取り組みはSDGsの精神そのものではないか」という声があがり、それをきっかけにジャパンSDGsアワードに応募し、特別賞をいただくことができました。改めて、若い方の可能性を強く感じましたし、私たちのビジネスや取り組みに対する自信につながりました。
これは、SDGsにも大きく関わりますが、大切なのは「ひと様から必要とされること」だと思っています。キミカは、日本で唯一のアルギン酸メーカーです。安定的に地球の裏側で海藻を確保し、工場を稼働させなければなりません。。しかし、工場を動かせば騒音や匂いが生じることもあれば、納品出荷のための大型車両が地域を往来しご迷惑をお掛けすることもあります。海藻を安定的に確保ができるようになるまでも大変な苦労がありました。キミカが事業を続けていくためには、お客様だけでなく、サプライチェーンを支えてくださっている方々や地域の方々から信頼されて必要とされる存在にならなくてはなりません。この思いが、チリ漁民の生活水準向上のための活動や、肥料の無償提供を通じた地域農業への貢献にもつながっています。若い人には、自分が関わる仕事、そしてなによりもあなた自身を、社会から必要とされる存在にしていってほしいと思います。
全3回にわたって、ジャパンSDGsアワード2020受賞 株式会社キミカを取り上げました。過去2回の記事はこちらからご覧ください。
(Writer:三浦央稀)
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