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利他

2021.02.19 20:55

太宰治の代表的作品を挙げよ、との設問も、但し、その作品を除くとあらば。中二の試験問題だそうで。中に「走れセリヌンティウス」なる回答があったとか。それこそはメロスの友人、確信犯とは申せ、ちゃんと熟読しとる証左。目下、手元の一冊に伊勢新九郎物語こと「北条早雲」が含まれており。政治家に徳目求めるは八百屋に魚を求めるようなものと名言残された御仁がいらしたが、道徳観を磨くに理屈よりも物語、伝記こそ好教材ではあるまいか、と。

堀越公方との死闘を制して瀕死に近い軍勢に襲いかかるは土地の豪族。もはやこれまでと覚悟を固めた早雲に加勢するは百姓。何も合戦だけが戦にあらず。韮山さまを守らんと城の回りを囲む百姓に怯む豪族。六公四民とは年貢の割合。適正な検知と四公六民の年貢率が掴んだ百姓の心。率を下げれば収穫高が減りかねぬとの懸念もその評判が人を呼び、進む新たな開墾に従来以上の収穫高。

何よりも私欲を捨てて領民を救う為に生きた早雲、領内を見回り百姓の話を聞くが習慣だったとか。定例会も開幕、初日に配布された施政方針、結びの章に「利他」なる概念が説かれており。んな用語は役人辞典になく、当人の加筆なのだろうけど、よもや、早雲が如く仏門に帰依する気でも。

庁内に東京事務所を構える位だから近接性は抜群。いや、その座を狙うに自ら率先して汗かかねば他市の賛同を得られぬ。未曾有の事態に異例の要望、「全議」傘下の指定都市協議会を代表して各省庁を訪ね歩いており。国の中枢にて緊張感に包まれるは同じなれど不思議と違う職場の雰囲気。一方や使命感に燃えて士気高くも片や必死には違いないのだけどどこか殺伐としてそこに居るだけで疲労度が増しそうな。

相手は多忙な御身分にて予定過ぎても待つは厭わぬ、お願いする立場にて万事粗相なきよう低姿勢に徹するも。大臣秘書官だか何だか知らぬが人を虫けらのように扱うは納得出来ぬ。「おい、あんたらはそんなに偉いのか、エリートかもしれんが、相手の心境も分からぬようではろくな役人ではない、そもそもに人によって態度が豹変するはクズだ」

と、叱り飛ばさんと欲せど、くだらんことで本市のワクチン供給が遅れるは不本意。いや、それ以上に「逮捕」はマズい。もうそうなるともはや大臣にどれほど厚遇されても好印象は抱かぬもので。いや、肚の中はそれでも結構なれど、嫌な顔せずに「よくぞ参った」と慰労を見せる器量あらばもそっと得をしそうなもんだけど。

久々に「正義」の授業で有名なあの教授のインタビューを目にした。挑戦を鼓舞するに生まれし勝者と敗者の分断も成功は運であることを認識すれば必然的に他者への思いやりが生まれるはず、人に対する態度を変えるのは資産格差の解決並みに重要と説いておられて。

いい人生を送るには運に恵まれねばならぬ、運に恵まれるにはいい人に恵まれねばならぬ、いい人に恵まれるには他人様に親切であらねばならぬ、と三段論法で諭すはおらがセンセイ。

やはり「利他」に限る。

(令和3年2月20日/2625回)