1.千葉喜商店の仕事(千葉 裕樹)
―これから、千葉喜商店の千葉 裕樹さんに、色々なお話を伺おうと思います。
では、早速ですが、千葉喜商店では、どのような事業をされているのですか?
千葉(裕):当社は大きく2つの事業があって、1つは、カツオの生出荷、もう1つが、お刺身用のエビの加工です。
震災前は、カツオの生出荷がメインで、エビの加工はサブの仕事だったのですが、
震災後はエビの加工がメインになってきています。
恐らく、気仙沼の仲買人や魚屋さんは、気仙沼で水揚げの多いカツオか、サンマ、サメ、の3つのどれかをメインに仕事をしている人が多いと思うんですが、今から30年前のバブルの時代は、聞いた話だと、気仙沼市場は足場がない程、魚の水揚げが多かったらしいんです。
その頃は、その水揚げ量のおかげで、皆生計を立てることができていたらしいんですが、
段々、水揚げ量が減って、家庭での魚離れも始まり、今は、多分、皆、細々と縮小しつつ魚の商売をやっている感じです。
その中でも、何社かは気仙沼でも大きいところは残っていて、小さい会社は徐々に縮小しつつある状況ではないか思います。
当社でいえば、減った分をお刺身の加工で補っています。
―水揚げ量が減ったから魚離れが進んだのでしょうか。
千葉(裕):両方あると思います。
水揚げが多ければ、その分魚の価格も安くなるので、その頃は、肉より魚が売れて、その分利益が得られていたと思います。
でも今は、水揚げ量が減った分、魚の値段が上がってしまって、一方、売りの方では、魚を高く買ってくれるところも少なくなってきています。
消費者の皆さんの魚を食べる習慣が減っているというのもあって、魚での利益が得にくい環境になっているんじゃないかと思います。
―エビの養殖などはされていないのですか?
千葉(裕):エビに関しては、ほぼ、海外産の輸入品です。
国産のエビは、全体のマーケットで言えば、ごくごく一部。
北海道、日本海で甘エビが獲れたりするんですが、例えば、回転寿しなどで使っているエビはほとんど海外産です。
―回転寿しに出すエビの加工もされているのですか?
千葉(裕):少しだけ。回転寿司はどうしても価格重視なので、海外産の加工品が多いです。
国内産エビの加工の仕事は、お客さんの要望で、「特殊な加工、エビの頭をボイルしてください。」などの特別な規格のものが多いです。当社も一部、取り扱っています。
昔は、カツオの生出荷がメインで、カツオの水揚げ時期が、年間で言うと、6~10月末くらいなのですが、約半年で、年間の利益が十分取れて、従業員さんの確保するために、甘エビの加工をオマケ程度にやっていたような感じだったんです。
それぐらい、昔の気仙沼は、魚でいい時代があった、とうことです。
―昔は、年間の従業員を確保するために、エビの加工をしていた感じなのですね。
千葉(裕):そうです。水揚げの無い半年、従業員さんに仕事をしていただくためですね。
だから、甘エビの加工については、そんなに利益を気にせず商売していた感じです。
それくらい、カツオだけで、商売が十分成り立っていたってことです。
―カツオの漁のために、海に出られたりはしますか?
私、船酔いで海はダメなんです。船で出た瞬間、横たわっているような感じで。
当社は仲卸業なので、気仙沼で水揚げされたカツオを、豊洲市場のような大卸(おおおろし)に送って売るという仕事です。
―海に出るのではなく、いい魚を目利きするお仕事なんですね。
カツオの一番おいしいオススメの食べ方にはどのようなものでしょうか?
千葉(裕):カツオは刺身で、タレはポン酢がおいしいと思います。
大事なのは、薬味で、玉ねぎと、シソ、ミョウガ、しょうがとニンニク。
カツオの場合は、薬味が有るのと無いのでは全く味が変わってきますから。
もちろん、加工してもいいのですが、加工法にもよると思います。
非常に淡泊な味で、脂の旨味をそんなに感じられる魚ではないので、工夫しないで加熱しちゃうとパサパサしてしまうんです。
加熱にあまり向いている魚ではないかもしれません。
―これまで、気仙沼がカツオの水揚げ日本一だということを知らなくて、
カツオ=土佐というイメージだったんですけれど、ブランド的には、
カツオと言ったら、土佐か気仙沼という位置づけなのでしょうか?
千葉(裕):ブランドで言ったら、土佐のカツオだと思います。たたきとか。
でも、フレッシュなカツオで言ったら、気仙沼は水揚げ量は日本一です。
カツオの脂が乗ってくる9月以降の漁場が、気仙沼から北上したところにあり、
漁港として近く、気仙沼市場では高く買付されるんです。
脂の乗った戻りカツオを売れるので、他の地域より時期によっては強いというのはあります。