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抗菌アロマテラピー研究会

ワクチン接種の光と影

2021.02.21 05:57

  新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が、2021年2月より医療従事者を対象にスタ-トしました。今回の接種は、予防接種法の「臨時接種」で、妊婦を除く16歳以上には接種する努力義務が課せられています。しかし各種調査によると、接種を希望する人はおおむね7割程度で、希望しないや様子を見たい人が約3割程度いるようです。

  さて、今回日本で承認されたファイザー社のワクチンは、m(メッセンジャー)RNAワクチンという新しい技術を用いた人類初で未経験のワクチンです。今回のmRNAは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白、つまりウイルス外殻表面のトゲのようなタンパク質を体内で生成させる情報を持っています。ワクチンが接種されると、mRNAは注射部位近くのマクロファージに取り込まれ、ウイルス外殻のスパイク蛋白を作るように指示します。産生されたウイルス外殻蛋白(スパイク蛋白)がマクロファージの表面に現れ、抗原提示を行い、最終的に抗体が産生され、新型コロナウイルスに対する免疫を獲得することができます(図参照、文献図を改変)。

  有効率はかなり高いと報告されており、およそ9割程度の発症予防効果があるようです。しかし誤解してはいけないのは、発症予防効果9割とは「90%の人には有効で、10%の人には効かない」とか、「接種した人の90%は新型コロナに発症しないが、10%の人には発症する」ということではありません。9割の発症予防効果とは、「ワクチンを接種しなかった集団の発症率(発症人数)よりも、接種した集団の発症率(発症人数)のほうが9割少なかった」という意味であり、言い換えると「発症リスクが、10分の1になった」ということです。

  ワクチンの素晴らしい効果は、人類に多大な恩恵をもたらしてきました。長きに渡り人類を苦しめてきた天然痘が、1980年にこの地上から消滅したのも、日本で50年以上前に猛威をふるっていた小児マヒ(ポリオ)や日本脳炎が駆逐されたのもワクチンのお陰です。一方、ワクチンは時として大きな問題を引き起こしてきました。

  戦後間もない1948年に予防接種法が施行され、ジフテリア予防接種が全幼児に義務付けられました。接種を拒んだ者には罰金を科すという世界にも前例を見ない強力な強制接種法でした。その結果、京都府と島根県で、ジフテリアワクチンの予防接種による重大な副反応が起き、千人を超える被害者と乳幼児を中心に84名もの死者が出ました。当時、世界最大の予防接種事故であり、忘れてはならないワクチンによる日本の重大な医療事故です。

  最近でもワクチンによる重大事故があります。デング熱が流行していたフィリピンでは、2016年に保健省が公立学校に通う約80万人の子どもに対し、フランスのサノフィ社製のデング熱ワクチンの接種を開始しました。ところがワクチンを接種した小児がデング熱に感染すると、重症化し、死に至るケースが相次ぎました。約600人の小児が、ワクチンが原因で死亡した可能性があるとされています。2019年2月になり、フィリピン政府は「サノフィ社製のデング熱ワクチンを永久に禁止する」と発表するに至りました。

  今回の新型コロナウイルスに対するワクチンの副反応は、従来の安全なワクチンと大差ないとされています。ファイザー社によると、いずれもワクチンとの因果関係はないとのことですが、特発性血小板減少性紫斑病での死亡やノルウェーの複数の高齢者に死亡事例が報告されています。何しろ今までになかったタイプの人類初のワクチンです。長期的に起きる重大な副反応が気になります。(by Mashi)

・とく暮れよことしのやうな悪どしは(小林一茶)

今年のような悪い年は、早く終わって欲しいものだ。当時信州ではコロナ禍ならぬ打ち壊し騒動が続いていた。

参考文献:1) Fernando P. Polack, et al., Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med (2020) 383:2603-2615 DOI: 10.1056/NEJMoa2034577   2) 谷口 恭、 コロナワクチン、「フィリピンの悲劇」再来はないのか? 日経メディカル Online 2021年2月10日