消化の仕組み ~肉食動物(犬猫)と草食動物(ウサギ)の違い~
私たちは野菜や肉、魚などさまざまな食べ物を口にして栄養としています。それは私たちが雑食動物だからです。
では、ペットはどうでしょうか?猫はネズミなどの小動物を捕らえて食べる肉食動物です。犬は果物や野菜なども少しは食べる雑食動物ですが、元々はオオカミを起源とする肉食動物です。そして、ウサギは肉類をまったく食べない草食動物です。このような食べる物の違いによって分類される肉食動物と草食動物の体の仕組みの違いについて、今回は学んでいきましょう。
口や歯の違い
まず、肉食動物と草食動物の口の中の違いを見てみましょう。
犬や猫は、獲物に鋭い牙を突き立ててとどめを刺し、その肉を食べるときに引きちぎれるように、全ての歯が尖っていて奥歯まで大きく開くようにできています。特に4本の犬歯はよく発達していて、上下にきっちりと噛み合うようにできています。食べ物を口の中でよく噛んで細かくすることはあまりできませんが、固い肉もナイフのように切り取ることができるのです。
それに対してウサギは、前歯で植物を適当な大きさに噛み切ると、奥歯ですりつぶすようにして物を食べるため、顔の大きさに対してとても小さなおちょぼ口をしています。一番大きくて目立つ上下の前歯は生涯伸び続ける代わりに、固い植物を食べる度に少しずつ磨り減るため、ややとがってはいますが、ものを噛みしめるようにはできていません。犬歯は存在せず、前歯より奥にある歯は臼歯(きゅうし)といって、すべて臼のように食べ物が接する部分が平らになっています。これで食べ物をすりつぶすようにして食べ物を細かくして食べていきます。
消化管の違い
草食動物も肉食動物も、口から食道、胃、十二指腸、小腸、盲腸、大腸といった順番に食べ物が送られるのは同じですが、それぞれの臓器の占める割合が大きく異なります。肉食動物は食いだめができるように胃が比較的大きいのですが、腸管は短く、腸管の長さが人での場合は体の長さの約5倍であるのに対して、猫で約4倍、犬で約4.5倍しかありません。
ところがこれがウサギになると、腸管の長さは体の約10倍にもなります。この腸管の長さの違いは栄養の吸収時間と関係があり、栄養価の高い肉を食べる動物は吸収時間が速いため腸管が短くてもよく、植物の固い線維を消化しなければいけない草食動物は栄養を吸収するのに時間がかかるため、腸管を長くして消化に時間をかけているのです。
草食動物の中には牛のように胃を大きく発達させて消化を行う種類もいますが、ウサギは腸の中でも特に盲腸を大きく発達させて、そこで消化を行います。その大きさは胃の10倍もあり、右下腹部の大部分を示すほどです。これは犬や猫の盲腸が痕跡程度にしか存在しないことに比べると非常に対照的です。
消化能力の違い
動物が必要とする栄養素のうち、もっとも重要なものは体を作る元となるたんぱく質であり、肉はまさにたんぱく質の塊です。そのため、犬や猫は胃でたんぱく質を消化酵素で分解する能力に長けています。逆に植物に多く含まれる炭水化物を分解する能力は低く、特に猫は炭水化物をほとんど消化できないとも言われています。私たちがごはんをよく噛んでいると甘味が出てくるのは、唾液に含まれるアミラーゼという酵素がごはんのデンプンをブドウ糖に変化させるからですが、猫はこの唾液中のアミラーゼをまったく持たず、犬もごく少量しか持っていないと言われています。
それに対してウサギは、たんぱく質をほとんど有さない植物から体に必要な栄養を得ていますが、それは大きな盲腸の中に秘密があります。ウサギの盲腸の中では常にバクテリアによる発酵が行われています。この発酵によって植物のセルロースなどが分解され、その分解されたものを吸収することによって栄養を得ているのです。
食べる量と間隔の違い
肉と植物では含まれる栄養価が異なるため、肉食動物と草食動物では食べる量と間隔が異なります。肉は、いわばたんぱく質の塊であるためエネルギー量も高く、肉食動物は一度、満腹になるまで食べてしまえば数日間絶食しても大丈夫です。
しかし、ウサギを代表とする草食動物は、体の中に持つ発酵タンク内に常に新しい材料が入り、古くなったものを排泄するように腸の内容物が動き続けていないとバクテリアが減少してしまい、正常な発酵ができなくなってしまいます。これは、お漬物のぬか床を毎日管理しないと悪くなってしまうのと同じことです。そのためウサギは、体に対して非常に大量の草をずっと食べ続けていないといけないのです。
糞の違い
犬や猫は食べる量にもよりますが、一日に約1~2回、まとめて糞をします。それに対して常に腸管が動きつづけているウサギは、一日に何回も糞をします。そして夜中には盲腸便と呼ばれるやややわらかい便を排泄し、それを食べる習性があります。これは正常な行為で、ウサギは盲腸内のバクテリアで作られたたんぱく質やビタミンを豊富に含んだこの便を再摂取することで、栄養を吸収しているのです。
まとめ
犬や猫は私たち人と消化の仕組みはほぼ同じですが、ウサギをはじめとする草食動物の消化の仕組みは大きく異なります。ウサギの場合、腸内バクテリアの健康がそのまま本人の健康につながっている、ということがご理解いただけたかと思いますので、より食事は健康と密な関係があるということにもつながるでしょう。