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マヤ

三代目❤夢小説(臣隆編sixth)『冬恋 64』

2021.02.23 23:05

気持ちが落ち着いてからiPhoneを見ると充電が切れていた。




ご老人に聞いてみると、「充電器か…どれ、確か古いのがあったかの」と言って、またダンボールから探り出してくれた。




充電する間だけと思い、暖炉の側で休ませてもらった。




そのまま深く眠ってしまった様だ。




俺は多分夢と現実の狭間にいて、今回のフィンランド旅行のダイジェスト版ともいうべき回想シーンをスクリーン越しに見ている。




嫉妬から始まり、迷い、憂鬱になり、それでも構って欲しくて、

後を追ってきて抱きしめて欲しくて…




そうしたら本当にアイツが空港まで迎えに来てくれて、

そのまま一緒に、一旦はドタキャンした異国へと旅立った。




疲れていても眠ってなくても、臣は時に驚くほど大胆な行動をする。




どんなワガママも聞いてくれて、それでいて俺様で、エロくて、

限界を知らなくて…




人目もはばからずにスキンシップもしてくる。




女性にはめちゃくちゃモテるし、恋の噂も星の数ほどだ。




消えても消えても、後から後から湧いて出てくる。




映画公開の時期だって、少なくとも二人の女性との密会を噂されていた。




それだけ魅力があって、みんなが放っておかないんだ。




今日、GPSを頼って臣を探し出した女優さんだって、

臣のことが好きで…そう、雪で表情はよく見えなくても、声のトーンを聞けばわかる。




きっと愛の告白をして、その最中に予期せぬ白い嵐になって、




か弱い女性を一人で置いてけぼりなんかにはしない。




アイツはそういう男だ。




今も必死で守ってるかな?




彼女を一人雪原の嵐の中に置いて…そんなことは絶対にできない奴だ。




嵐がおさまって安全な場所に彼女を送り届けてから、

それから俺を探し回るに違いない。




そうしてくれている方が安心できる。




それとも何か向こうの状況が変化して、




この荒れ狂う白い嵐の中を脇目も振らずに、自分の身も顧みずに、




凍えそうになりながら、足を取られながら、

それでも前へ前へ、




たった一人で俺を探して彷徨っているとしたら?




そのまま遭難でもして…二度と会えなくなってしまったら…




考えれば考えるほど、早く臣を探しに行きたくて、

胸が苦しくなるのに、




カラダがちっとも言うことをきかなくて、もどかしくて…




…もう一つの選択肢で、俺がすでに避難してると信じて、

臣もどこかで嵐をやり過ごしているかも?




今はそう信じていたい。




そういえばツアーバスの中で、あれは白いトナカイと遭遇する前に、

なんか耳元で言ってたな、臣。




古いバスの大きなエンジン音でよく聞こえなかったけど…




こんな事になるなら、離れ離れになるのが予測できたなら、




サカるな、なんて邪険にしなくて、臣のやりたい事全部、

好きにやらせてあげれば良かった。




臣の願望は、そのまま俺の願望だから。




充電できたら電話してみよう。




スクリーンで繰り広げられていた回想シーンも終わった。




暗闇に鳴り響く着信音で飛び起きた。




やっぱ夢見てたんだ。




髭のご老人は立ち上がって携帯で話している。




「おお、そうか!嵐も過ぎたようじゃ、今から様子を見てくるでの」




誰と話してたんだろう。




オーロラ観測の仲間かな?




「起きたか?よく眠っておった」




「ありがとうございました、俺、行かないと…」




「悪いがもうひととき待ってくれんか?」




「はぁ…」




「風速計を調べに行ってくる間、留守番を引き受けてくれんかの」




「あの…」




「いや、はやる気持ちはわかるが、ほれ、そこに温かい食事を用意してあるから、

それをすっかり平らげる頃には戻ってくる」




「多分小一時間で戻ってこれるから、頼んでいいか?」




遭難しそうだったところを親切に助けて下さったんだ。




断ったりなんてできない。




「わかりました、じゃあ遠慮なく、いただきます」




「うむ、頼んだぞ」




「誰か訪ねてきたら中に招いていいからの」




ご老人はそう言うと真っ白な防寒を着込んで、携帯だけ手にして足早に小屋を出て行った。




つづく