骨格のしっかりした診療を…③
ファティリティクリニック東京 小田原靖院長のお話
『i-wish ママになりたい 妊娠しやすいからだづくり』より
妊娠、出産、育児は 大いなる経験
妊娠、出産、そして育児は女性にとって、またご夫婦にとっても、人生観をも変えてしまう程の経験です。その経験が希望するすべての方に叶い、幸せになってほしいと思っています。ですから、来院されるカップルには、なんとか元気な赤ちゃんを授かって頂きたいと、日々熱い想いで診療に臨んでいます。
また、当院ではART以外でも有効とされる治療は積極的に取り入れており、卵管閉塞に対する治療として、卵管鏡下卵管形成術(FT)を新たに導入しました。
患者さんが苦しく、辛く思うことを糧に
不妊治療で成功し、妊娠~出産した患者さんたちには、おめでとうと言ってあげられますが、そうではなく妊娠判定が陰性だったとき、患者さんのその姿に、わたしもとても辛く、苦しくなります。
そして、すぐに、今回の治療方法はどうであったか。次回はどのようにしたらよいのか、とにかく一生懸命に考えます。
わたしは、患者さんの辛さや苦しさの中、私に課せられた使命、修行であると思って全力で治療に当たります。その結果、やっと妊娠し、出産する方もいます。それは喜ばしいことですが、やはり、残念ながら妊娠できずに治療を終えた方を「どうしているかな?」とふと思い出すこともあります。
診療経験を通して『総合力の高い、骨太の治療をするためには、患者さんの名前と卵がイメージできるくらいの意識で治療を続けていくこと。そうでないと、患者さんの辛さや、苦しさがわからない医療となってしまうのではないか』と思っています。
先生のお話からは、こうした治療の『極意』がひしひしと伝わってきました。
さらに、妊娠しやすいからだづくりとして何か勧めていることはあるのでしょうか?
妊娠しやすいからだづくりと卵子の質
治療を進めていくと、患者さんたちは、いろいろな情報を耳にし、いろいろなことが気になってくるようです。
治療を受けることだけでなく、何か自分でもできないか? と、鍼や漢方、ホリスティック的なことなどに熱心になる方もいます。
食事や運動なども対象になっているようです。
これら分野のことと、妊娠することとの因果関係は、生殖医療の先生方の見解でも意見がわかれるところです。
私は、医学的に今ある卵子の質を良くすることはできないと考えています。できるのは、今周期に育ってくる卵を成熟させること。そしてその卵子で、治療を進めることです。
食事については、たとえば糖尿病などでは食事療法の有効性が認められています。が、一般的に、どのような食事をしても、卵子の質は改善しないだろうと考えます。
わたしは『卵子の質が、ダーツの的の真ん真ん中の1点だとしたら、妊娠しやすいからだづくりは、その的の一番外側の縁の部分でしかない』と話しています。
がんばっていくことの1つであって、あんまりのめり込み過ぎないように注意していますが、妊娠後の胎児の成長・発達に欠かせない葉酸、内膜の薄い方のために血流改善が期待できるビタミン、そしてFSHの高い方にDHEAなどはお勧めすることがあります。ただ、これらはどれも一定の見解があるものです。
エビデンスからかけ離れているものについて、使うかどうかは、患者さんの治療に不利益をもたらさないと考えられるものであれば、治療と並行していけばいいと思っています。