「宇田川源流」 ウイグル問題でジェノサイドに認定された中国共産党の次の一手とオリンピック
「宇田川源流」 ウイグル問題でジェノサイドに認定された中国共産党の次の一手とオリンピック
ウイグル問題は、かなり前から大きな問題になっている。私が2015年に上梓した「ほんとうは共産党が嫌いな中国人 「日本羨望」「反体制」の本音を語った」(PHP新書)の中で、中国共産党と中国にある「ウイグル」「内モンゴル」「チベット」の各自治区の問題を扱って、その歴史から今までの歴史、そして現在(といっても今となっては10年ほど前ですが)の各自治区の人々の生の声をそのまま書いた。もちろん、全員に話を聞いたわけではないので、それが全てであるというわけではないが、しかし、ある意味で代表的な内容になっているのではないか。
中国人は、一人一人になると、中国共産党という組織が世界各国から「どのように思われているか」もっと端的に言えば「どれくらい嫌われているのか」ということをよくわかっている。そのために、中国人の多くは、漢民族の人であっても、官僚や市の役員などではない限り「私は共産党員ではないですから」という枕詞から自己紹介を始めるのが常だ。
そんなに嫌われているのであれば、その共産党を改めるか、あるいは共産党を滅ぼせばよい。少なくとも政権から引きずり下ろせばよい。民主主義ならばそのように思うのが普通だ。日本で言えば、自民党がダメだから「一度民主党にやらせてみよう」という言葉で、そのまま民主党政権ができ、それでやはりだめだったからまた自民党に戻ったというような感じだ。しかし、共産主義国家ではそのようなことができない。基本的に「権威」と「権力」が一極集中してしまう構造の政治の場合、結局権力の喪失はそのまま権威の失墜につながる。そして何が権力の喪失につながるかわからないん状態であるから、結局はすべて自分が正しく何か不都合があれば他人が悪いということにしなければならない。何か自分が間違えたといえば、その責任を負わなければならない状況に追い込まれることになり、そのまま失脚することになる。
当然に「自治区」といわれるところの制作であってもその内容は同じだ。ある意味で、絶対権力者が謝らないということに近い。日本ではないが謝った瞬間に全面無条件降伏と同じ状況になるのである。当然に、その内容は「武力抗争」にならざるを得ない。つまり「相手を滅ぼすまで続く」ということになる。
政治に関しては「粛清」となるが、それが民族や宗教が絡んだ瞬間に「ジェノサイド」というように認定されるのである。
欧州初の「ジェノサイド」認定=オランダ議会が動議、中国反発
【北京時事】ロイター通信によると、オランダ議会は25日、中国新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族の状況について「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する動議を可決した。
同様の動議はカナダでも可決されたが、欧州では初めて。
中国外務省の汪文斌副報道局長は26日の記者会見で「中国の内政に粗暴に干渉した。強く非難し断固反対する」と反発した。
連立政権の一角、ルッテ首相率いる自由民主党は反対票を投じた。ブロック外相は、国連などが認定していないとして「政府はジェノサイドという言葉は使いたくない」と述べたが、ウイグルの人権状況に「懸念」を表明した。
2021年2月26日 20時5分 時事通信社
https://news.livedoor.com/article/detail/19761792/
ウイグル人ジェノサイドは「世紀のウソ!」と中国紙、北京冬季五輪ボイコットは「絶対に失敗する」とも
24日、環球時報は、カナダ下院で新疆ウイグル自治区でのジェノサイドを非難する決議が可決されたことについて、中国政府が猛反発したことを報じた。写真はカシュガル市。
2021年2月24日、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は「ウイグル人ジェノサイドは世紀のウソ!」と題する記事を掲載。カナダ下院で新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(大量虐殺)を非難する決議が可決されたことについて、「中国政府が猛反発した」と報じた。
記事は、カナダ下院で22日、中国政府による新疆でのウイグル族に対するジェノサイドを非難する決議が266対0の賛成多数で可決され、2022年の冬季五輪開催地を北京から変更すべきだとの主張も起きたと紹介。一方で、この決議にはトルドー首相を初めてほとんどの閣僚が参加しておらず、かつ決議には法的な拘束力がないことを伝えた。
そして、中国外交部の汪文斌(ワン・ウエンビン)報道官が23日の記者会見で「カナダ下院による動議は事実や常識をないがしろにし、中国を意図的に汚辱するものだ」と強く非難し、カナダ側に抗議を行ったことを明らかにしたほか、叢培武(ツォン・ペイウー)駐カナダ中国大使も23日に現地メディアの取材に対して「世紀のウソだ」と表現し、「ウソをばら撒き、人権保護に背く行為について、カナダ側には誤りを正すことを求める」と述べたことを紹介している。
その上で「近ごろ、米国とその盟友であるオーストラリア、英国、カナダが代わる代わる新疆問題で際限なく中国をおとしめており、いわゆる新疆の人権問題と北京冬季五輪を結びつけている。これは2008年に西側の一部勢力がチベットの人権問題を理由に同年の北京五輪ボイコットを呼び掛けた手法と同じだが、彼らのもくろみは今回も絶対に失敗する」と主張した。
記事は、米紙ニューヨーク・タイムズの報道を引用し、五輪ボイコットの呼び掛けは国際五輪委員会(IOC)も反対しているほか、五輪の大型スポンサーなどの国際企業、組織に対する中国の影響力がかつてないほど大きくなっていると指摘。それ故に中国にしてみればボイコットの呼び掛けに何の憂慮も抱くことのない状況であるとした。
そして、08年の北京夏季五輪のボイコットを主張していたカナダのハーパー首相(当時)が、結局は同大会の閉会式に出席したことを「典型的な例」として取り上げた。(翻訳・編集/川尻)
2021年02月24日 12時20分 Record China
https://news.nifty.com/article/world/china/12181-872494/
近年のジェノサイドのほとんどは、すべて「絶対的権力者」でありなおかつ「権力と権威が一体化した存在」によって行われる。ある意味で「武力と政治力」だけではなく、多くの人がそのジェノサイドに協力するような「差別的意識」を生み出す構図が必要になる。単純に言えば「宗教的な権威によって作り出される心因的な差別」が必要になるということになるのである。そのうえで「間違いは認められない」ということは変わらない状況になる。
ところで、近現代史におけるジェノサイドはどのように行われたのであろうか。最も代表的なのは、ナチスドイツのユダヤ人虐殺であるが、そのほかにも多く行われている。ISによるヤジディ教徒の虐殺や、最近ではミャンマーのアウンサンスーチーによるロヒンギャ虐殺など、様々なところで行われていることが少なくない。いずれにせよナチスドイツも「国家社会主義」であるし、ISはある意味で宗教的な独裁であり、またミャンマーはミャンマー社会主義がやっと民主化したとしても、結局はほぼ同様の政治システムになっている。要するに、「一極集中」というのは、何も一人の権力者ではなく、ある意味で「共産党独裁」などの独裁主義、独裁的な政治システムそのものにジェノサイドが生まれる状況がある。逆に言えば、ジェノサイドを解除するのは、その国の政治が独裁(共産党独裁のような集団的独裁を含む)体制を崩壊させる以外にはないのである。
逆な言い方をすれば、「共産党一党独裁の政治に協力的な立場をとるということは、そのまま、その人や企業にも独裁的、つまりジェノサイド的な思考が存在する」ということになる。
さて、中国共産党政府によるウイグル族やチベット族へのジェノサイドが、アメリカ・カナダ・オランダで認められている。つまり、それらの国々は「中国共産党政府のもとで平和の祭典というオリンピックを開く場合はそこにやいしてボイコットを行う(協力体制を取らない)ということを意味する」のである。さて、ところで、アメリカのNBCがオリンピックの放映権を持っているのであり、また、スポンサー契約などはアメリカ企業や日本企業、EUの企業が少なくない。特に冬季オリンピックは、北方の国が多いので、そのように考えた場合には、それらの国の支援がなければオリンピックは成功しない。では、IOCは、これらのスポンサーなしにオリンピックの開催ができるであろうか。
この観点から物事を言えば、オリンピックをうまく生かし、そのスポンサーなどに働きかけることによって、少なくとも一時期は、ジェノサイドを止めることができ、またジェノサイドの確認のために国連の体師団などを派遣できることができる。日本のように森会長の発言だけで「女性蔑視」などということを言う人々は、なぜこの状況に声を上げないのであろうか。日本企業に対して、運動するように言わないのは何故であろうか。
彼らが政治的なポジショントークしかしていないのは明らかであるが、そのような「二重基準的な政治主張」を行っていて、それが世界的に許されると思っていること、つまり、日本のこれらの運動は「正義」にもとづいておこなわれていないということが、わかられてしまった場合に、どのようになるのであろうか。
日本の野党や日本の運動家たちの、底の浅さがわかってしまう。