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左背中の凝り

2021.03.01 14:50

昨日のような眩暈の例にあったように背中の緊張は、様々な問題が考えられるのですが、まず背中と関係する臓腑の反応は何かという設定で調べてみる必要があります。


ある例では、心臓血管経の反応がありました。 左後上方向の心臓の血管経の反応です。腕に行く鎖骨下動脈と首に行く総頚動脈の分岐点あたりから反応があります。

このあたりの異常は背中の緊張の場合よく起こる反応です。 


漢方薬的には、桂枝茯苓丸のような、芍薬の入っている駆お血剤が適応になりやすくなるようです。 一般的に言われるような婦人科系の問題だけでなく幅広く使える漢方薬なのではないかとも思います。

枝茯苓丸を手に持たせると実際に背中が緩みます。 もちろん、それだけで改善する訳ではありませんが、キッカケとしては血の症状であることは間違いないことがわかります。 

左の腋窩を押さえると圧痛があり、右はありません。鎖骨下動脈から腋窩の方にも影響があり腕全体にも影響がでています。 症状としても左腕がだるい感じとおっしゃってました。


前腕を把持して、肩を下方向に軽く引っぱると身体が抜けるような感覚になり、肩関節も不安定になっているのがわかります。同じことをやっても、右は不安定にはなっていません。 つまり、この心臓血管系の異常が背中の緊張の機能的な要因となっているということがわかります。



スコープで言えば、背中のみに焦点を合わせた異常です。つまり、全体とは無関係にある反応でプライベートなものということです。 そこで全体を意識すると反応が大きく変化してきます。全体的にみると傷寒論の少陰病の反応が左足の内側から下腹部、前頚部のリンパ管系にでていました。

その周囲の圧痛も確認しました。圧痛の確認は、どのあたりに影響があるかということを確認できます。


呉茱萸湯という漢方薬を手にもってもらいました。 この方剤の主薬は呉茱萸という生薬で、強い温性、燥性、降性をもっていて、方剤全体として、寒証、虚証、湿証、升証向きです。

左背部の血の異常とは違っているのもわかります。

この方剤は、頭痛や後頚部の凝り、嘔吐を伴うものに適するとされています。体力はありそうな方でしたが、なぜか適応になります。また、吐き気もなく、頭痛もありませんが、温め、気を下降させる作用があることから、頭部に内熱したものを調整することができるのだろうと思います。 


全体的なスコープにおける少陰病という枠組みの中では、呉茱萸湯は適応ですが、背中の痛みには直接関係していないはずなので適応とは言い難いとも言えます。

このような見方が、スコープの適応をしっかり見極めることで可能になります。


それでも呉茱萸湯を手にもってもらうと、一気に大腿から下腿内側の緊張は緩みます。 呉茱萸湯の目標は、大腿内側から下腿内側の少陰病であるのにもかかわらず、背中に直接関係あった桂枝茯苓丸より全体的に効果があったようです。

背中の緊張より全体からみた少陰病の方が優位だったので、呉茱萸湯を手にもってもらうと左肩の緊張まで緩んだということです。つまり、少陰病の異常は、背中の緊張や首の緊張にまで影響がある方剤だったと言えます。 


身体は部分的ではなく、それぞれが相互に関係しています。症状のある部分だけを観察していてもわからないことが多々あるということです。 漢方薬は飲ませるだけでなく、手において身体の緊張を探るのにも効果的です。


また、これを行うことによって、その人の病体が何に関係しているのかを探ることにもなります。 漢方薬全体の作用だけでなく、構成生薬の作用も合わせて考えると意外な漢方薬が適応になるということがあります。 症状に対して漢方薬の作用だけみて選ぶ従来の方法ではないので、身体の状態に合わせることが可能です。あくまでも鍼灸師の立場として漢方鍼灸という発想なので、漢方をやっている人から考えると奇異に見えるかもわかりませんが、それぐらい、漢方薬の作用は多岐にわたる可能性があるということです。 


それを認めるか認めないかは、その人の器量次第です。