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腰痛

2021.03.02 22:14

数ヶ月前から、ピリッと走るような痛みがあり、立てないような痛みではないようですが、左だけ大腿部まで響くような違和感と痛みがあるそうです。 

大腿部に響くような違和感があるような腰の痛みはよくみられます。この方の場合、腰ではなく肩と腕に問題があるのは、診察室に入ってきた時からわかりました。


これを漢方薬的に診断すると、どうなるのか観察してみました。 関節や筋肉に対しての診断と、それに対する漢方薬の診断を対比するとどうなるかという訳です。

肩を触って見ると左が緊張し、右の首も緊張しています。また左の側胸部が右より、くすぐったい感じです。脇腹をくすぐっている訳ではなく、普通に押さえただけでくすぐったさを感じるのです。


このような反応があるということは、肋骨の動きが悪くなって、呼吸も浅くなっていることがわかります。また、左右差があるというのがポイントです。単なるくすぐったがりではないということです。 腰の異常ではないということは、これらの事実が示しています。



五苓散、桂枝茯苓丸、大柴胡湯という3つの組み合わせで肩や首の緊張や側胸部のくすぐったさは全て消えました。 

五苓散は、苓という言葉のつく生薬を中心になっています。これらは利尿薬の代表で、主に燥性に働くので体質的には、湿証の人に効果的です。湿証でも頭痛、眩暈を伴う湿証の人という大まかな目標があります。 ただ、この方は眩暈も頭痛もありませんし、尿量が減少しているとは言えません。

それでも「水」の反応は胸や咽、顔面部にはあります。つまり、このあたりにやや浮腫みがでているということです。もちろん、本人は気づいていません。 


次ぎの桂枝茯苓丸は、以前も説明したとおり、駆お血剤です。これは首の付け根から胸の一部の血管系に作用するようです。最後の大柴胡湯は、胸脇部の痞えを下げるような作用があり、芍薬が入っているので、痛みを緩和する作用があると言われています。

主には便秘などにも使う薬剤ですが、便秘もありません。 個々の方剤は主目的が腰痛を治すものではないことは明白ですが、この方のように腰にスコープを当てても問題が肩や首にしかなく、上部に気があがった状態を下げるような目的の方剤が適応になります。


そのあたりの水や血の流れを改善させるというのが主目的の方剤を組み合わただけです。しかし、その組み合わせの方が腰痛が楽になるという結果になりました。あくまでも手に漢方薬を置いただけです。それでも、見た目の状態と、適応漢方薬の方剤が一致するのは面白い現象だと思います。


例えば、この方剤の順番を逆にして実験してみると逆に緊張してきます。例えば大柴胡湯、桂枝茯苓丸、五苓散という順番だと肩がパンパンになるのを確認できます。つまり、五苓散、桂枝茯苓丸、大柴胡湯という順番でないと身体に作用しないということです。 


また、この漢方薬と関係する経絡を調整すると、漢方薬を手にもった時より肩首が柔らかくなります。鍼灸の治療の方が漢方薬を飲むより効果的だと言う証拠にもなります。 

殆どの場合そうなります。漢方薬の良いところは、家で手軽に飲めるということだろうと思います。そして、この鍼灸における調整を行った後、同じ漢方薬を手にもってもらうと肩がパンパンになります。つまりこれらの漢方薬は必要ないということを意味しています。 


当然ですが、腰の痛みはなくなっています。鍼治療は、数カ所のみです。この現象がどんな意味を示しているかが重要です。