【春の雨に~稲葉真弓さんの詩集から】
窓に向こうに、柔らかい春の雨が降っています。
今日、3月8日は、2014年に逝去された詩人、作家の稲葉真弓さんの誕生日です。
そして、3日の後には、東日本大震災から10年という節目の時を迎えます。
稲葉さんは、詩集『心のてのひらに』(2015/港の人)の中に、
東日本大震災へのオマージュを主軸とした、いくつもの作品を書き残しています。
三月が また 方舟の上を通りすぎる
幻の雪は降りつづいているが
水仙のにおいだけはあって
そのとき だれもがいっせいに思うのだ
新しい時間と理性がすぐそこにあること
この世とあの世が
いますぐ春の糸に結ばれることを
気づかなかったものが見えてきた
わたしたちの目のもどかしい速度についても
「方舟・2011」より
改めてページをひもとくと
今なお響く凛とした、詩の佇まいと聲の記憶が蘇ってきます。
2019年出版の詩人の聲叢書第6巻、稲葉真弓選詩集『さようなら は、やめときましょう』(響文社)では、生涯にわたって一筋の光を放った稲葉さんの詩の歴史に触れることが出来ます。
震災から10年、もう一度、稲葉さんの詩に触れてみてはいかがでしょうか。
選詩集後記に、「稲葉真弓の詩の世界─都市から半島へ」と題して、
稲葉さんの詩をめぐる文章をよせていますが、20年以上前の読書記録に『夜明けの桃』と『エンドレスワルツ』のタイトルが刻まれていました。
詩を志し、試行錯誤しながら詩を書き続けていたあの頃。
稲葉さんのしなやかな詩のことばは、
地下水のごとく瑞々しく、心の内奥に蓄えられ
書くという日々の道のりを、照らし続けています。
稲葉真弓選詩集『さようなら は、やめときましょう』
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