#096.理屈っぽいのは必要だから
僕はとても理屈っぽく見えるかもしれません。
講師をしているプレスト音楽教室では入会前にどんなレッスンなのかを知っていただく体験レッスンがあるのですが、その時必ずと言っていいほど自分のレッスンが理屈っぽいということを伝えます。
以前体験レッスンで
「僕のレッスンって理屈っぽいでしょ」
と言ったら即答、真顔で
「はい」
と言って帰られた方がいらっしゃってですね、ああ、僕のレッスンは向き不向きがあるんだなと強く実感したことがきっかけです。
「まどろっこしいのはナシにして直接的なやり方だけ簡潔に言ってくれればそれでいい」
意識的か無意識か、それは人によって違いますがこのタイプの方って結構多いです。もちろんそれぞれの考えを尊重しますから、否定はしません。ただ僕のレッスンは合わないと思っているだけです。
なぜ理屈っぽいのか
結論から言うと「物事は様々なところで関連し合っているから」です。
何か特定の奏法、これを仮にAとして、その直接的方法を伝えたとしましょう。
実はこの奏法Aは、別の奏法B、C、Dとの関連が非常に高く、根っこのところまで辿ったら同じものでした、ということが結構あります。だったら、「根っこの部分」を先に伝え、できるようになってしまえば、A、B、C、Dを関連付けて一度に全て手に入れることができ、結果的に効率的です。
理屈である根っこを理解するためには、ひとつの奏法Aについてを分析していかなければなりません。それはとても地味で手間もかかるので面倒に感じるかもしれませんが、練習とはそういうものだと思っているので「そんなのいいから早く方法だけ教えて」という人とはどうしても相容れないということなのです。
職人の継承
昔は職人の仕事は「師匠の背中を見て学べ」とか「真似をしながら身につけていく」とか、その結果「身になるまで10年かかる」みたいに言われることが多かったです。
僕自身も学生の頃はトランペットのレッスンは教わる、というよりも師匠が演奏されているのを見て、その音を目指そう、その表現が自分でもできるようになりたい!と強くインプットしたり、体の使い方などを、もう本当に「盗もう」と観察し、真似てみるなどの試行錯誤で身につけていったことが多い印象があります。
しかしこの方法は手探りでものを掴もうとするとても方法のため、その試行錯誤の中で得られるたくさんのことも確かにあるのですが、根本的なところを勘違いして(捉え方を勘違いしているのは自分のせいだし、確認をしなかったのも自分のせい)、数十年後に間違っていたことが判明する、ということも実際経験しているため、僕の場合は逆に理屈をきちんと説明する方向でレッスンをしているという感じです。
基礎とは
音楽において「基礎練習」は欠かせないものですが、その基礎とは具体的に何でしょうか。
ステージでは演奏することのない教則本の楽譜を演奏することだけが基礎練習だと思っていませんか?もちろん、そうしたテクニックを身につけることも基礎練習のひとつですが、僕が提案したいのは先ほど言ったように「根っこの部分を見つける」ことです。
例えばタンギングがうまくいかないから、タンギングのことが書いてある教則本を使う、というのはもちろん間違っていないのですが、それを吹きまくっても上達するかは未知数です。そうではなくて、「そもそもタンギングってなんだ?」から始まって、その原理を学び、自分の目指すプレイヤーの演奏などを参考に、同じようなタンギングを生み出すには具体的に体(の部分)をどのように使うかを研究する。そうした時間こそが「基礎練習」であると思うのです。
しかしこれらは一人でやるのはとても大変なことです。僕自身がすでに20年以上そうやって研究し続けているのでよく理解しています。だからこそレッスンを受けることが有効で、そしてそのレッスンは理屈っぽい部分が絶対に必要である、と自覚しているわけです。
ということで今回はここまで。
それではまた来週!
荻原明(おぎわらあきら)
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